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五話 スキルの力
目を覚ました俺は朝のゴタゴタを片付けた。
今日はまず、昨日出来なかったレシピの残りのポーション作製をする。
このポーションは雫草から作られる低級ポーションで作製方法は至ってシンプルだ。
まず、雫草を乳鉢で潰す。そこに水を入れ成分の抽出を促す。成分が溶け出した液体を濾して容器に入れて出来上がり。
実に簡単に出来上がった。
レシピの説明には、飲むか患部に掛ける事で有効とある。たぶんこの雫草自体を食べても効果が在る気がする。
だって、地球じゃこんな事あり得ないだろ……。
また、この低級ポーションを基礎に素材を追加する事で、上の等級のポーションが作製出来るらしい。
試験管に三本分の低級ポーションが出来上がった。
色は薄い緑色で、もろに草の匂いを漂わせていて、飲む前から不味そうな印象を与える。
いや、当然だよな。これで青とかオレンジ色とかになったら幾ら何でもファンタジーが過ぎるって話だ。
足の裏の傷は大分良くなったが、体重をかけるとまだ痛みがある。 作った低級ポーションを使うかどうか悩んだが、複数作れた事もありテストとして半分飲んで半分を患部に使用することにした。
まずは飲んでみる。
一度匂いを嗅いでしまった為に飲むまで少し躊躇したが、一気に半分を口に含み飲み干した。
「うぇ……まずぅ」
思わず唸ってしまう。味はやはり草を潰して抽出しただけの液体なのでかなり不味い。
草の汁なのは分かってたけど、予想通りの味にしなくてもいいじゃねえか。
飲めないわけではないが好んで飲む物では無いのは間違いなく、とてもじゃないけど「まずい!もう一杯!」なんて言える物ではなかった。
低級ポーションを飲んでから少しの間を置いて、体が暖かくなったような感覚が起こる。
特に足の裏にそれを感じ、驚いて足の裏を見てみると先程まであった細かい切り傷が塞がり新しい皮が出来ている。
腫れも引いている様で手で触ってみても痛みは感じなくなっている。スライムから逃げる時に転んできた傷も同じく治っていた。
「うぉぉポーションすげえ」
余りの効果に驚きの声が出る。
こんなの有ったらこの世界医者いらないんじゃないのか?
ここまで治ってたらもう半分は使わないでいいか。普通に歩いても痛くないし、これなら壁も登れそうだな。
足の傷が治ったので早速壁を確認しに表に出る。
壁に近づき顔を近づけて見てみると、壁は土が乾燥した物で出来ているようだ。
この壁改めて見るとボロボロだな。
うぉっ! 少し体重かけたぐらいで崩れるのかよ!
こりゃ登るとか不可能じゃねえか……。
壁に手を伸ばし体重を掛けて見ると驚くほど脆く、手を掛けた部分が崩れ落ちる。
場所を変え慎重に登ってみるが、今度は足を掛けた部分を踏み抜いてしまう。
壁は10階立てのビルほどあり、この高さを登るにはどう考えても不可能だと理解した。
まあ、普通に考えてもこの高さを登るとかありえないか……。
だがしかし、これで脱出の手段が道を進む以外に無くなったぞ。
う~ん、まじでやばいけど諦めるには早いか。
この世界に生まれて三日も経ってないんだ、こんな面白そうな世界堪能せずに死ぬなんてありえねえ!
ダンジョンからの脱出という意識の中で、壁登りは反則っぽい方法だと思っていたので、そこまで気分が下がら無かった事に自分の事ながら助かった気がした。
気合を入れ直し、予定通り次にやろうとしていた木こりの為、一度部屋に戻り斧を両手に持ち再び表に出て生えている木を観察する。
木は六メートルほどの高さがあり、まっすぐに伸びた幹から数本の枝が伸びている。
まだ若木の様だが幹はしっかりとしていて枝の先にある葉は生命に溢れいてる。
名前を確かめて見ようと鑑定スキルを木に使う。
名称‥【マホガニーの木】
あれ? 地球にある木もあるのか。
てっきり知らない名前の植物が出てくると思ったのに。
鑑定で出た名前に驚いた。
実際の木を見た事は無いが、建材としての名前は知っていた。
木の性質など詳しい事などは知らないが、建材として使える木と言う事で安心して切れそうだ。
そう言えば木を切るなんて初めてだな。
片刃の斧を切りやすそうな位置に当てそんな事が頭に浮かんだ。
何度か軽く斧の刃で木を叩いて感触を確かめる。
大きく深呼吸をして斧を引き腰に力を貯め全力で木に叩きつける。
予想以上にこの体に力があり、斧の刃が半分ほど木の幹に埋まった。
「うっ、抜けねえ」
全力で叩きつけた斧が、木の幹にしっかりと食い込んでいる為、足で木の幹を蹴りつけその反動で斧を抜く。
今度は少し力を調整して削る様に伐っていく。
休みを入れながらも何度も斧を振り、三十分程の時間を掛けて幹の半分ほどに達した。
やっぱり結構時間は掛かるな。反対側からも切ってく方が効率いいんだっけか?
動画などで何度か見た事をある木こりの記憶を思い出し、今度は反対から伐り始める。
何せ初めての木こりなので、どう伐ればどう倒れるか何てまるで理解していない。
更に反対から15分ほど伐り続けると、木が斜めに傾き始めバキバキと物が折れる嫌な音を鳴らしながら木は地面へと倒れていった。
「ふぅ~、やっと伐れたか。」
体中が汗でビッショリになってしまった。物凄く風呂に入りたい。
日中は運動をすれば汗をかく程度には暖かく、一時間ほど掛けて木を伐っていたので体中から汗が噴き出ていた。
一度部屋に戻りコップで直接壺から水を汲み一気に飲み干す。
壺の水は冷たく火照った体を優しく冷やしてくれるようだ。更にコップに水を汲み、再度表に出て着ていた袋を脱ぎ頭から水を掛け汗を流す。
だが、とても満足の行く水量では無く、やはり桶の作成は急務だと再認識した。
結局五度も往復をして体の汗を流したのだった。
日差しを浴びて体を乾かしながら次の作業を考える。
まず必要なのは投げ槍の柄と桶だからその分をノコギリで切ればいいか。
柄は長細い棒にするとして桶はどうやって作ろう。
ん~大工スキルでレシピが出ないのは何でなんだろう。
大工スキルのレシピを思い浮かべても、木の製材方法や昨日作った木のヘラと食器しか浮かんでこず、鍛冶スキルを使った時の様々なレシピの閲覧が行えなかった。
やり方が違うのかな?
一度鍛冶スキルを使って……。
あれ? 何か減ってるっぽいんだけど。
鍛冶スキルを使い感覚を確かめようと思ったが、何故か頭に浮かぶ鍛冶のレシピが大幅に減っていた。
バグってんのか?
あっ……そういう事か。
俺は炉の説明を思い出し、部屋に戻って炉の近くでスキルを使ってみる。
すると思った通り、今度は以前のようにレシピが見れた。
確認の為ステータスを開いてみると、鍛冶スキルがレベル2になっていた。
なるほど、これが補助って奴か。
要するに炉の近くだとスキル値が上昇するって事だな。
炉から離れてもう一度ステータスを確認すると、レベルは0に戻っていた。
あ~スキル低い状態で鍛冶のレシピ見るのはもうやめよう。
この感覚はやばい。
炉から離れて鍛冶のレシピを見ると、名前は知っているはずなのに思い出せない、そんな感覚で頭がモヤモヤしてくる。
だが、昨日作ったナイフは作り方が分かる事から、一度作った物はスキルが戻っても頭に浮かぶ事が出来るようだ。
まあ、スキルの検証は後でいいか。日が落ちるまでにやれることはやっちまおう。
以下、ダイジェスト
その後、桶作りを開始した。その日は基本的な形に切り出し、少しの加工をして終わる。
次の日の朝は、無限にあるパンを使い小動物を呼び寄せられないかと考え、洞窟の外にパンを撒いた。
昨日の作業を再開し、桶を作り上げた俺は、次なる作業の槍の柄を作る作業に入った。作業の途中で大工スキルが上がり、とても効率よく工程は進んだ。柄が出来上がり、穂先を取り付けた槍を、試しに投げてみる。スキルのお陰か、とても良く飛び手応えを感じた。
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