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三話 ステータス
逃げてきた俺は部屋の入り口から顔だけを出し、時間を忘れてスライムが居た方の通路を食い入る様に見つめ続けていた。
一時間ぐらいたったか?
流石にもう大丈夫だと思おう。
ふぅ、喉が渇いたな。
痛む足の裏を踵を立ててかばって歩き、水の入った壺へと近づくと柄杓を使って水を飲み干した。
「んっはぁ、うめぇ~」
水をすくい傷口にかけ汚れを落として行く。
改めて体を確認すると逃げた時に転んで出来た傷と足の裏の傷以外は見当たらなく無く、スライムに取り込まれた時に出来ていたであろう傷はどこにも見られなかった。
いつの間にか無くなってたけど、やはりあの指輪のお陰だよな。
手の平を掲げ指輪があったはずの指を見るがそこには何も無かった。
体の汚れも落としていく。
装備の溶けた残骸も流れて行き、改めて今は全裸なんだと気付かされた。
誰も居ないとはいえフルチンは落ち着かねえな……。
どうすっかなー。
せめて股間位隠せる物は無いかと部屋を見回す。
そこにあったのは地面に放りっぱなしになっていた物達。
それを眺めていると一つの案を思いついた。
「あっ、あれを着るか」
地面に置きっ放しになっていた装備の入っていた袋を拾う。
道具箱から錐きりを取り出して、首と腕を通す穴を開けると、袋を頭から被り腕と首を通した。
「まあまあ、良いんじゃないか……?」
自分を納得させるように呟いてみるが、どう考えても惨めな姿に感情が爆発する。
「やっぱりダメだゴワゴワしすぎ! くそっ! 何がまあまあだ! なんで俺は袋着てんだよ。あほかっ!」
数分その場でごろごろ転がりながらストレスの発散をしているように暴れた。
…………はぁ~、落ち着け。
これしか着れそうなものは無いんだ。
少し冷静に戻った俺は体に付いた土を払いながら、今着ている袋の感覚を確かめる。
「股間が落ち着かないな」
頭から被った袋は太ももの半分位まであり、スカートの様になっている。
その所為か、どうにも股間がすぅーっとして収まりが悪い。
部屋にはまだ服の素材になりそうな掛け布団は有るのだが、夜の気温が分からない以上、まだ手を出す気にはならなかった。
まあ、なれるしかないか。
何事もあきらめが肝心だ。
一息付いた俺は作業台の椅子に座り、机に伏せて考える。
さて、どうするか……。
道の先はどこも進めないのは分かった。
しかし、装備をいきなり失うとか考えもしなかったわ……。
スライムだと思って舐めすぎた。
次の手段として崖を登るのを試すとしても、この足じゃ今はちょと無理だしな。
食物と水はまだあるし良いとして……って、ここ安全なのか?
もし魔物が徘徊してたらヤバイんじゃ……。
はぁ……、どの道何が来ても逃げ場は無いんだ、その時はその時はだな。
神様信じてここは安全地帯だと思うしかないか。
そうだ、箱に入ってた物をチェックするか。
巻物とかまだ読んでないし、素材が有るって事は何か作れるってことだよな。
鉄も炉もあるんだ簡単な剣ぐらい作れるだろ。
……作った所で意味無さそうだけど。
あ~、悩んでもしょうがない!
地面に放ったままだし整理しながら考えていくか。
ネガティブに成りつつも自分の楽天的な所に助けられる。
気持ちを入れ替え地面に置かれたままの道具や素材を拾い選別して行く。
インゴットは炉の近くにまとめ、それ以外の物は作業台に置いて行く。
木の板は元に入っていた袋に戻し作業台の近くに置く。
散らばっていたとは言え、それ程の量もなかったので、地面を綺麗にするのはそれほど時間は掛からなかった。
席に着いた俺は机に並べられた物を眺め、先ずはほとんど手を付けていない巻物の塊を手に取る。
これよく見たら紙じゃなくて羊皮紙か?
初めて触ったな。
思ってたより薄いんだな。
まとめて巻かれていた巻物の上の数枚は、先ほど見た通り物を作るレシピで、袋に入っていた素材を使って作れる物の説明が絵付きで書かれている。
なんか初心者向けに売ってる、物作りのセットみたいで楽しそうだな。
巻物をめくって行くとレシピとは様子が違う書式の物が最後に出てきた。
これは文字だけか。
う~んと、はぁ?
スキル?
ステータス?
え~……、まんまゲームじゃねえか。
ん~っと、ステータスはステータスオープンを行えば表示される?
言えばいいのか?
「ステータスオープン」
【名前】ゼン 【年齢】10 【種族】人族
【レベル】 1 【状態】--
【H P】 131/162 【M P】 22/22
【スキル】
・投擲術Lv1(0・0/100)・格闘術Lv1(0・0/100)
・鑑定 Lv1(3・6/100)・料理 Lv1(0・0/100)
【加護】・技能神の加護 ・*******
「おぉ……」
頭の中にいきなり情報が流れ込んできたように感じる。
目には見えていないのに文字をなぞれる初めての感覚に、若干の戸惑いを覚えた。
鑑定の感覚に似てるけど、あれは名前が浮かぶだけだから少し違うな。
何にせよ、この世界は半分位はゲームの世界と同じと思って良さそうだな。
てか、この手のやつは一番上に置いといてくれよな……。
外に出る前に見ていたとしても、結果は変わらなそうなのは分かってるが、どうしても愚痴が出てしまう。
気を取り直して頭の中に浮かんでいるステータスの個別項目に集中すると、簡単な説明が分かるようだ。
え~っと、名前年齢は良いとして種族が有るって事は人以外が存在してるって事だよな?
レベルか……、敵を倒すと上がるあれだよな。
肉体と精神の強さの段階を表す数値か。
後はHPがヘルスポイントでMPがマナポイントね。
この程度の説明なら無くても分かるんだよね、主にゲームの知識だけど。
それよりスキルだな。
鑑定は神様から頂いたと考えて良いよな。
このスキルを最初から持っている理由が分からんし。
投擲術は……、高校で少しやってた槍投げのお陰か?
高校時代に二年で辞めた陸上部では槍投げをしていた。
入学始めに同じ中学からの友達に、一人は嫌だから一緒に入ってくれと誘われ入部をしたが、余り真面目にやる気は起きなく、金が欲しくなりバイトをしたいが為に三年に上がる前に辞めたのだ。
見ていて楽そうだったので槍投げを選んだのだが、結構面白かったのは覚えている。
少し昔の事を思い出した。
気を取り戻してスキルの説明にも目を通すが、これもまた簡単な説明しか書かれていなかった。
う~んと、スキルを所持してると、動きや知識の補助を受けれるのか。
知識の補助ってのは鑑定で知るはずの無い物が頭に浮かんだアレかな?
動きはどうなんだろうな、格闘術があるけど要するに殴り合いだろ?
その場でシャドーボクシングをしてみる。
良く判らないな……。
そもそも、子供の体がどれ位動けるか覚えてないんだよな。
まあ、格闘術のレベルも1だしそこまで補助なんてないって事だろ。
料理があるのは一人暮らしで散々してたからだな。
簡単な物しか作ってなかったけど、たまにこだわってたのが良かったのか?
レシピがあれば大体の物は作れたけど普通の腕前だったしなあ。
レベル1ってのはその程度って事と思ってよさそうだな。
表示されてるスキルを見る限り、前の体の時にやっていた事が関係してそうだけど、それならサッカーは出ないのかな?
あぁ、この世界に無いからスキルとしても出ないのか?
もしかして、蹴りって事で格闘に……。
いや、無えか。
普通に喧嘩したとか、格闘技やってた友達に教わったあれだな。
以下、ダイジェスト
スキルの検証は続く。最後に神の加護の確認だ。俺が貰ったのは、技能神の加護、それとステータスには表示されない謎の加護も一つあった。
検証も終わり、続いて鍛冶を行った。作ったものは一本のナイフ。炉の使い方も分かり、スキルも獲得できた。
明日からは、レシピにあるものを片っ端から作る方針で、今日は寝ることにした。
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