ヘイト「人権侵害」 川崎の男性に中止勧告 法務省

 法務省は2日、川崎市在住の男性が在日コリアン集住地域・同市川崎区桜本を標的に行ったデモでなされたヘイトスピーチ(差別的憎悪表現)が人権侵害に当たると認定し、同様の行為を行わないよう勧告したと発表した。勧告は1日付。ヘイトスピーチに対する勧告は2例目だが、街中でのヘイトデモを対象にした初のケース。男性に対しては他の場所でも同様の差別的言動を行わないよう求めている。

 男性は津崎尚道氏。2013年5月から同市内で12回のヘイトデモを主催・計画してきた。うち今年1月31日は昨年11月8日に続いて桜本を目がけて行われ、同区在住の在日コリアン女性と日本人男性の3人が救済と予防を求め、被害を申告していた。

 同省によると、津崎氏は1月のヘイトデモで、抗議に集まった申し立て人らに向かい、「帰ればいいんだよ、おまえらよ、1匹残らずたたき出してやっからよ」「じわじわ真綿で首を絞めてやっからよ、一人残らず日本から出ていくまでな」などと発言した。

 参加者を含めたこれらの言動が「在日韓国人に対する憎悪や敵意をあおるなどして、本邦から排除し、日本人と他の外国人と平等な立場で基本的人権を享受することを妨げるもので、人格権を侵害する不法行為」と認定。「その内容は人間としての尊厳を傷つける不当な差別的言動であって、人権擁護上看過できない」として、反省とともに今後は同様の行為をしないよう文書で勧告した。

 同省人権擁護局は「ヘイトスピーチ解消法施行を機に不当な差別的言動のない社会の実現に向けた機運が高まっていることも踏まえた」としている。申し立て人の一人、崔(チェ)江以子(カンイヂャ)さん(43)は「私たちの被害が国によって人権侵犯として認められてうれしく、心強い。この結果は、今までヘイトスピーチによって人権と尊厳を傷つけられたすべての人に向けられたもの。未然防止のため、行政には条例づくりに取り組んでほしい」とコメントした。

 津崎氏を巡っては、同市が5月30日、ヘイトデモのための公園使用を認めない判断を下し、6月2日には横浜地裁川崎支部が桜本でのデモを禁止する仮処分を出していた。

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