2016年 08月 02日
抗凝固薬服用経験のない人ではNOACとワルファリンはどちらが有効で安全か:BMJ誌
|
Comparative effectiveness and safety of non-vitamin K antagonist oral anticoagulants and warfarin in patients with atrial fibrillation: propensity weighted nationwide cohort study
BMJ 2016;353:i3189
疑問:ワルファリン未使用の非弁膜症性心房細動においては,NOACとワルファリンはどちらが有効で安全か?
方法:
・デンマークの国内コホート研究。2011年〜2015年
・登録前1年間抗凝固なしのNVAF61,678例
・有効性アウトカム:虚血性脳卒中または全身性塞栓症,複合アウトカムとして虚血性脳卒中+全身性塞栓症+死亡
・安全性アウトカム:あらゆる出血,頭蓋内出血,大出血
・プロペンシティースコアマッチ
・2.5年追跡
結果:
1)投与薬剤:ワルファリン57%,ダビガトラン(150)21%,リバーロキサバン(20)12%,アピキサバン(5)10%
2)虚血性脳卒中(年間発症率):ワルファリン2.33%,ダビガトラン2.32%,リバーロキサバン2.21%,アピキサバン3.32%
3)リバーロキサバンだけがワルファリンに比べ有意に虚血性脳卒中が少ない:ハザード比0.83(0.69〜0.99)
4)複合アウトカムは3つのNOACともワルファリンより良い:ダビガトラン0.78,リバーロキサバン0.87,アピキサバン0.79
5)大出血:ワルファリン2.98%,ダビガトラン2.02%,リバーロキサバン3.27%,アピキサバン2.15%
6)大出血はダビガトランとアピキサバンがワルファリンより良い:ダビガトラン0.58,アピキサバン0.61

結論:NOACはワルファリンの代替薬として有効かつ安全。虚血性脳卒中は,NOACとワルファリンで差はない。死亡,何らかの出血,大出血はアピキサバンとダビガトランで有意に少ない。
### NOACのRCTはどれもワルファリン投与歴のある人が50〜60%の集団です。抗凝固薬服用経験のある人はどうしても出血に対して慎重になりがちで,ライフスタイルや食事,アドヒアランスその他もいわゆるナイーブのひととは違うはずです。この研究は,全く抗凝固使用のない人によーいどんでNOACとワルファリンを選んで処方したときアウトカムがどうなのかという,きわめて実臨床に即した研究と思います。
これまでのメタ解析とは違い,NOACはワルファリンに比べ,死亡率は同等で脳卒中を加えると有益であるとの結果です。大出血はリバーロでやや多めでしたが,ほか2者はワルファリンに勝っていました。
あくまでデンマークの各NOAC高用量のみの結果です。日本だとNOACの低用量も使えるので,NOAC群の出血はより減りますが,ワルファリン群も目標INRが低いので出血率も少ないと思われます。なのでなかなか日本にこのデータを外挿するのは難しいかもしれません。
日本では,各メーカー主導でNOACごと別々のコホート研究が走っていますが,ぜひこのような全NOACとワルファリンを比べたリアルワールドのメガデータがほしいように思います。
この論文の”Funding"すなわち資金を見ると”The study was entirely free from industry sponsorships.”とあります。日本でもこんなふうに全くメーカーからしがらみがなく,COIがなく,メガデータを扱えるシステムができないものでしょうか?毎週のように押し寄せるメーカー主導の研究会,Web講演会の案内を見るにつけ。この資金をそっちの方に持っていけないものかと思ってしまいます。
$$$ 今朝のうちの庭での収穫!採ったばかりのナスを焼いて生姜醤油に浸し間髪入れず頬張る朝のなんと幸せなことよ(笑)!

BMJ 2016;353:i3189
疑問:ワルファリン未使用の非弁膜症性心房細動においては,NOACとワルファリンはどちらが有効で安全か?
方法:
・デンマークの国内コホート研究。2011年〜2015年
・登録前1年間抗凝固なしのNVAF61,678例
・有効性アウトカム:虚血性脳卒中または全身性塞栓症,複合アウトカムとして虚血性脳卒中+全身性塞栓症+死亡
・安全性アウトカム:あらゆる出血,頭蓋内出血,大出血
・プロペンシティースコアマッチ
・2.5年追跡
結果:
1)投与薬剤:ワルファリン57%,ダビガトラン(150)21%,リバーロキサバン(20)12%,アピキサバン(5)10%
2)虚血性脳卒中(年間発症率):ワルファリン2.33%,ダビガトラン2.32%,リバーロキサバン2.21%,アピキサバン3.32%
3)リバーロキサバンだけがワルファリンに比べ有意に虚血性脳卒中が少ない:ハザード比0.83(0.69〜0.99)
4)複合アウトカムは3つのNOACともワルファリンより良い:ダビガトラン0.78,リバーロキサバン0.87,アピキサバン0.79
5)大出血:ワルファリン2.98%,ダビガトラン2.02%,リバーロキサバン3.27%,アピキサバン2.15%
6)大出血はダビガトランとアピキサバンがワルファリンより良い:ダビガトラン0.58,アピキサバン0.61
結論:NOACはワルファリンの代替薬として有効かつ安全。虚血性脳卒中は,NOACとワルファリンで差はない。死亡,何らかの出血,大出血はアピキサバンとダビガトランで有意に少ない。
### NOACのRCTはどれもワルファリン投与歴のある人が50〜60%の集団です。抗凝固薬服用経験のある人はどうしても出血に対して慎重になりがちで,ライフスタイルや食事,アドヒアランスその他もいわゆるナイーブのひととは違うはずです。この研究は,全く抗凝固使用のない人によーいどんでNOACとワルファリンを選んで処方したときアウトカムがどうなのかという,きわめて実臨床に即した研究と思います。
これまでのメタ解析とは違い,NOACはワルファリンに比べ,死亡率は同等で脳卒中を加えると有益であるとの結果です。大出血はリバーロでやや多めでしたが,ほか2者はワルファリンに勝っていました。
あくまでデンマークの各NOAC高用量のみの結果です。日本だとNOACの低用量も使えるので,NOAC群の出血はより減りますが,ワルファリン群も目標INRが低いので出血率も少ないと思われます。なのでなかなか日本にこのデータを外挿するのは難しいかもしれません。
日本では,各メーカー主導でNOACごと別々のコホート研究が走っていますが,ぜひこのような全NOACとワルファリンを比べたリアルワールドのメガデータがほしいように思います。
この論文の”Funding"すなわち資金を見ると”The study was entirely free from industry sponsorships.”とあります。日本でもこんなふうに全くメーカーからしがらみがなく,COIがなく,メガデータを扱えるシステムができないものでしょうか?毎週のように押し寄せるメーカー主導の研究会,Web講演会の案内を見るにつけ。この資金をそっちの方に持っていけないものかと思ってしまいます。
$$$ 今朝のうちの庭での収穫!採ったばかりのナスを焼いて生姜醤油に浸し間髪入れず頬張る朝のなんと幸せなことよ(笑)!
by dobashinaika
| 2016-08-02 22:18
| 抗凝固療法:比較、使い分け
|
Trackback
|
Comments(0)