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「アベノミクスのエンジンを最大にふかす」。安倍首相がこう語ってきた経済…
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「アベノミクスのエンジンを最大にふかす」。安倍首相がこう語ってきた経済対策を、政府が閣議決定した。
総事業規模は28兆円余り。政府系金融機関の融資枠などを除くと、予算と財政投融資で手当てするのが13・5兆円。その柱として、政府が秋の臨時国会に提出する補正予算は4兆円程度。そんな内容である。
保育や介護施設の整備促進、学校の耐震化、熊本地震の復旧復興を含む防災対策……。補正予算に計上する予定の事業としてそんな項目が並ぶ。
一方で、疑問符がつくものも少なくない。代表例が「21世紀型のインフラ整備」としてあげられている事業だ。大型クルーズ船を受け入れるための港湾整備、農林水産物の輸出を増やすことをねらった加工施設の建設などが、予算を投じて進める事業として並ぶ。
訪日外国人を多く受け入れ、第1次産業が海外に打って出るのを支援するのは、検討に値するテーマだろう。しかしなぜ当初予算ではなく、緊急時の対応が役割である補正予算なのか。
補正予算の編成期間は当初予算と比べて短く、政府内のチェックがおろそかになりがちだ。これまでもたびたび「抜け道」に使われ、財政を悪化させる要因となってきた。
今回の経済対策にも同じ構図が見える。政府は当初予算に計上した公共事業を景気対策として前倒しで執行しており、年度末に向けて事業量を確保する必要に迫られていることが背景にある。
「抜け道」はほかにもある。財政投融資の大盤振る舞いだ。やはり「21世紀型のインフラ整備」の柱として、JR東海のリニア中央新幹線への支援とともに、北海道などで国と自治体が進める整備新幹線の建設前倒しがあげられている。
整備新幹線は、毎年度の予算に費用を計上しつつ、国や自治体の財政状況に目配りしながら事業を進めてきた。補正を通じた財投資金で事業を加速させることに危うさを禁じ得ない。
一連の事業の費用をまかなうために、政府は建設国債や国債の一種である財投債を発行する。金額は合わせて数兆円になりそうだ。借金をつけ回しするだけの赤字国債の発行は避ける方針とはいえ、インフラはいったん造ると維持更新費が必要になることを忘れてはなるまい。
経済対策のテーマは「未来への投資」だという。
しかし、「未来への負債」を残すことにならないか。政府にその危機感はあるのだろうか。
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