病中、病後の子供を預かってくれるところがあるんです!
とんでもない美談があったのでどうしても書きたいことがあります。
共稼ぎの夫婦の子供が溶連菌にかかり保育園が預かってくれない、しかし二人共大事な業務があり仕事を休めない、という状況。
溶連菌感染症で保育園に息子を預けられず、夫も夕方から外せない仕事があって。その商談は私が絶対お客様のもとに行かないといけなかったので、どうしようと困っていました……。
絶対に行かなければならない商談、息子の熱が下がらない時にママが取った行動とは!?
そこで才田さんは、同じ販売パートナー企業を担当する後輩の酒本さんに自宅に来てもらい、在宅勤務で仕事をしながらお子さんの面倒を見てもらうことを提案したのでした。酒本さんはすぐに快諾。なんと、ものの2~3分で問題が解決しました。
恐ろしい、なんと恐ろしい。
サイボウズの同じチームのメンバーなら息子とも面識もあったし、「大丈夫」という信頼感があったからです。
病児保育やベビーシッターは利用したことがなかったので、なんとなく不安もあって。それと新しい形にチャレンジしてみたかったというのもあります(笑)。
これのどこに笑える要素があるのでしょう。僕には不思議でなりません。
知っていたのに使われなかった「病後児保育」
面識があったから大丈夫、病児保育やベビーシッターは使ったことが無かったから不安、その判断は完全に間違っています。
熱性けいれんを起こした時、嘔吐したもので窒息する可能性とか考えなかったのか、そういう突発的な体調の変化があったときに「息子と面識があった」だけで預かった社員は解決できたのか。ものの2~3分でそういう「こういう体調の時はこういう対応」というマニュアルでも作れたのか。そんなもの絶対に作れたはずはなく、単なる安請け合いと先輩から後輩への「上下関係による強圧な指揮命令」があったのではと思うのです。
うちには高校生と中学生の息子がいますが、この年齢に育つまで沢山の病気とかケガと向き合ってきました。急な体調の変化なんていくらでも起きること。嘔吐したものが喉につまらないように寝かせるときは横を向かせる、とか高熱の時はどこを冷やすのがいいか、というのは様々な経験から分かってくることなのに。
もし仮にウチの会社の従業員さんが「病後の子でたぶん大丈夫だと思うけど家で面倒見て欲しい」と言われたら僕なら申し訳ないけど断ります。もし万が一何かあった時に自分の家ならどこになにがあるかわかっていますが、人の家のどこに救急箱があって、どこにタオル、どこに・・・なんて絶対動ける自信がない。
子供の命がかかってるんですから。こんな事を美談にしていてはいけないんです。今回はたまたま何も起きなかったからよかっただけ。これを読んで「じゃあウチもなにかあったときに後輩に任せよう」などとなるのは本当に怖い。これは単なる上司部下の指揮命令に組み込める話ではないのです。
なんとなく話を美談でまとめて「素晴らしい会社」だとPRしたい意図が見えますが、僕にはとんでもない押し付け安請け合いのまかり通る危険な会社にしか見えません。日本には「病児保育」「病後児保育」というものが確立しています。このことを当事者は知っていたのに使わなかった、というのは本当に怖いことです。
知らなかった人のために「病児保育」と「病後児保育」について書いておきます。病児保育と病後児保育をとりまとめる「全国病児保育協議会」というものがあり、そのHPが病児、病後児保育のことを上手にまとめてありますのでご紹介しておきます。
全国病児保育協議会とは
この全国組織の協議会は単に「働く母親に代わって病児、病後児の面倒をみる」ための組織ではなく、子供の病中、病後についてのトータルケアを国が事業として支えようという「乳幼児健康支援一時預かり事業」の組織として成り立っています。
病児保育というのは、 病気にかかっている子どもにこれらすべてのニーズを満たしてあげるために、 専門家集団 〔保育士、 看護婦 (士)、 栄養士、 医師等〕 によって保育と看護を行い、 子どもの健康と幸福を守るためにあらゆる世話をすることをいいます。
(中略)
「病児保育」 という場合には、 先に示した通りに広義に解釈して欲しいと思います。 すなわち、 基本的には母親の就労の有無に関わらず、 子どもの自宅療養はもとより、 病児保育室におけるケア、 そして入院治療を受けている子ども達の生活援助の総てを対象として考えるべきものと思います。 その意味では、 小児病棟における保育士たちによる病児への援助も、 広義の病児保育といえます。 しかし、 一般的に病児保育というと、 母親が就労等のために、 保育所に通っている子どもが病気をした際に、 親の就労の継続性を確保するために、 一時的に病児の世話をする狭義の保育を意味しているのが現状です。
子供の健康と幸福のために行われるものが「病児保育」だと考えれば、「利用したことがないから不安」として施設に預けず、子供を危険な目に合わせた事は大問題だったと気がつくと思います。
そして施設は日本全国にあるんです。大病院の小児科や小児科医が独自で行っているもの、ケアルームとして専門的に行っている施設もあるようです。実際に子供が小さいご家庭ならここから最寄りの施設をチェックしたり電話番号を控えておいたりすることはすごく大事だと思います。緊急の相談なども出来ると思いますので。
昼間は何事も無く元気だったのに、夜中突然高熱が出て苦しみだしたりすると、親としては「どうしよう、どうしよう」と慌ててしまうものです。こういう場合は何も遠慮することなく119番に電話したらいいんです。もし動かせる車があるのなら「救急で診て欲しい」と救急病院に連れていくこともできます(実際やったことがあります)
親だって判断に迷う時があります。国がこうして「乳幼児健康支援一時預かり事業」というものを起こしているのですから安心して任せればいいんです。それは親の勝手とかではなく「子供の健康と幸せ」のため。
是非覚えておいて欲しいなと思いました。そしてこんなことが二度と美談として取り上げられないように。