2008-09-25
■漫画版『日本沈没』が天皇を出してきた
ビッグコミックスピリッツでもう何年も連載されている一色登希彦『日本沈没』。もともとは映画の公開にともなったメディアミックス企画かと思われたのだけれども,連載開始から独自の展開を進めている。なんせ小松左京の原作小説,70年代のドラマ版,そして21世紀の映画版の設定をごった煮にした上で新しい話を組み立てているのだ。
そして,あまり注目されることがなかったが故に騒がれなかっただけで多分これは問題作だろう。東京大震災下,狂った市民によるデビルマン化によって案の定登場人物が生首になっちまうし(見開きで描かれます),感動的な映画の筋を強烈に批判・皮肉って,正反対の結論にしてしまう。
で,今回は天皇の登場ときた。いしかわじゅんなら「そんなの,タブーでもなんでもない。これまでだって漫画の中に天皇が出てきたのって,結構あるんだ。」とクサすかも知れない。でもさあ,演出が抜群なのよ。その大部分が水没した都下,旧江戸城(作中の表現)は被災しつつも健在で,そこから顔こそ影がさしていてうかがえぬものの,モーニングを着た銀髪の人物はどう考えても明仁殿下。しかもコソコソと出さない。ジワジワといき,見開きアップ! そして沈降続く日本から脱出した洋上の総理たち対策本部に対して無線交信でメッセージを伝えようとする(今週号はここまで)んだ。今週号の前半で描かれるのは,着の身着のままで外国に脱出しても人権も認められず奴隷のような生活しか待っていないことに疲れ憔悴し絶望しきった避難船の日本人の姿だ。ここに天皇からのメッセージ。もう誰でもわかるとおり,これは第2の玉音放送だ。
原作の『日本沈没』を書いた小松左京に天皇制の問題を見出した論評はすでに存在する。それでもそのあたりの話は作中周到に避けられてきた。『日本沈没』だけでも,小説では皇室はスイスとアメリカとアフリカに避難することが計画の一環として示され,70年代の映画版では震災後の首都を舐め尽くす炎から逃れる民衆のために首相が宮城の門を開けるよう懇願する。21世紀映画版でも東京大震災後「皇室に連絡を」という首相代行の台詞が入る。小説『首都消失』では,一切の物理的接触を阻む謎の雲に覆われた首都圏の外で衆議院選挙を実施するにあたって「解散」をおこなう天皇の不在が「自己戴冠」という言葉で描かれる(←これがよく言及される)。そこに漫画版の作者一色があえて切り込んだわけだ。すごい。
なお掲載誌スピリッツの巻末作者コメントは,先週号はやりすぎたかもというもの。いやいや,断トツに今週号の方がやりすぎです!
なお一色版『日本沈没』をこれから読もうという方にアドバイス。1巻は多分初見ではつまらんかもです(一気に全巻読破した後に読み返すと味がある)。小松左京も微妙と言ってた。キャッチーなのは6巻。東京大震災! 震動でホームから落下後山手線にミンチにされたり,有楽町マリオンから落下するガラスに引き裂かれたり,新宿都庁で高層ビルゆえの長周波で行動がとれず蒸し焼きにされたり,震動でレインボーブリッジから車ごと海に転落したり,川からの浸水や津波で地下鉄から脱出できず腐乱死体になったり,地割れにのみこまれたり,新宿西口公園で火災旋風に巻き込まれる都民の姿をみんなで読もう! あとネタに走ったのは8巻。顔だけじゃなくて喋り方もそっくりな田原総一朗,映画版のパロディー,「噴火キター!」「にげちゃだめだ」とやりすぎです。ちなみに僕が一番好きなのは5巻にあった「 これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関」の場面。ええとこの漫画についてはまだいろいろと語りたいことはある(最新科学の知見とSFとか,第4巻でいかに上手くドラマ版を取り入れたかとか)けどまあ今回は「ヤロウ,タブー中のタブーにふれやがった」(by本部以蔵)ということでひとつ。
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