先日5ヶ月の女の子が,便秘を主訴に受診されました。
至って普通の乳児ですが、他の5ヶ月児とは全く違っている所がありました。
それは、おむつではなくパンツを履いている、という事です!
どうしているのかをお母さんに聞いてみた所、おまるに座らせるとちゃんとするのだそうです。大小ともです。
そういう本を偶然みつけ、我が子でやってみたら出来たとの事。
赤ちゃんは排泄を自分でコントロールできない、という常識や思い込みに縛られていた事に気付かされました。
その日は腹部のマッサージなどの指導で経過観察としたのですが、数日後に排便困難が続く、という事で再診となりました。
いつも聴診などをする時は子どもたちの表情を観察しているのですが、その時に小さい子ども達は僕に何か訴えかける表情をする事があります。
この子も僕の目をじーっと見つめて何かを言いたそうだったので、心の中で質問をしてみる事にしました。
「おなかは苦しくないの?」
それに対して、その子は少し困った表情に変わりました。
やっぱり困ってるんだろうなと感じたため、次に「浣腸してもいい?」と又テレパシー使用。
その瞬間、今までの表情が一変し、その子の口がへの字に曲がり泣き出しそうになりました。
「ごめんね。でもその方が楽になるからがんばってみよう」と少し励ましてみました。
浣腸後しばらくして、ちゃんとクリニックのトイレで大量のうんちを出す事に成功。
その後もう一度診察室に入ってもらい、聴診をしながらテレパシー通信再開。
「楽になった?」と聞いてみたら、少し照れた様な表情。
その日はそれで、経過観察とすることとしました。
小児科医は普段から、子どもたちが体で何を訴えてのかをみています。
平気そうな顔をしていても、何となく顔色が悪そうだから本当は辛いのかなとか、息を吸うたびに首の付け根がわずかにへこむから、呼吸が苦しいのかなとか。
逆に、辛そうに見えてもしっかりと受け答えができれば、実はそれほど辛い訳でもないんだろうなとか、お腹をすごく痛がっているけど、お腹を触っても平気そうだから大した事はないだろうなとか、様々です。
子どもは言葉で訴えられない分、体で表現してくれます。内科であれば検査に頼る所があるかもしれませんが、小児科の基本は検査ではなく、経験に裏付けられた「勘」です。
子ども達が出すわずかなサインを感知するセンサーを磨く事で、その「勘」の精度が上がっていきます。それをいかに磨くかで、小児科医の腕が決まります。
全ては「子ども達が教えてくれる」のです。
物心がついていないから何も分かっていないと考えるのは間違いです。
新生児でさえ、お父さんとお母さんがけんかをするだけで、心拍数が増える(=緊張状態になる)事が分かっています。又、ベビーサインというコミュニケーションの方法がある事も分かっています。
子ども達は大人が考えるほど未熟ではありません。
大人の価値観を押し付けるのではなく、子ども達の意志も尊重しながら子育てをしていくと、大人も楽だし子ども達ものびのびと成長するのではないかと思います。