コミックサイズでハイエンドデスクトップPC並みのCPU性能
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先日の「G-Master Hydro Z170」に引き続き、サイコム様(以下敬称略)から最新のNUCユニットIntel Skull Canyon NUC6i7KYKを採用したBTO PC「Radiant SPX2550NUC-Extreme」のレビュー用サンプルを提供いただいたのでレビューします。
Skull Canyon NUC6i7KYK採用「Radiant SPX2550NUC-Extreme」
Intel Skull Canyon NUC6i7KYKは第六世代Skylakeの4コア8スレッドCPU Core i7-6770HQを採用し、Iris Proグラフィックス580という同社最高性能の内臓グラフィックを搭載するNUCベアボーンとなっています。NUCベアボーンとはOS、ストレージ、システムメモリ以外のパーツが揃った未完成状態のPCのことで通常はユーザーが各自でOS等のその他パーツを用意する半自作PC的な製品のことです。
「サイコム Radiant SPX2550NUC-Extreme」は、NUCベアボーンを購入したユーザーが自分で対応パーツを選定し、各種パーツを取り付け、OSのセットアップをしなければならないという手間を省いて、通常のBTO PC感覚でストレージやシステムメモリなどNUCベアボーンに必要なパーツをお好みでカスタマイズして注文すると完成したPCの状態で購入できる商品になっています。
NUCベアボーンはM.2 SSDやS.O.DIMMといった一般的なデスクトップ自作PCではあまり使用されないパーツを各自で購入する必要があるのでパーツ数の少なさに反して地味に初心者にはハードルの高い製品になっています。またNUC6i7KYKは単一パッケージでグローバル展開している製品のため、各国の電圧・周波数に対応した専用ACアダプタが製品に同梱されているものの、各国で形状の異なるコンセントケーブルは同梱されていないという落とし穴があります。
しかし「Radiant SPX2550NUC-Extreme」はNUC6i7KYKで確実に対応するパーツを販売ページのカスタムから選べて日本国内のコンセントに対応したACケーブルも同梱され、BTO PC感覚で完成品を購入できるので、同製品はNUC6i7KYKに興味のある多くのユーザーにとっては非常に助かる製品だと思います。
NUC6i7KYK 公式ホームページ
http://www.intel.co.jp/content/www/jp/ja/nuc/nuc-kit-nuc6i7kyk-features-configurations.html
NUC6i7KYK 製品マニュアル
http://www.intel.com/content/dam/support/us/en/documents/boardsandkits/nuc-kits/NUC6i7KYK_UserGuide01.pdf
http://www.intel.com/content/dam/support/us/en/documents/boardsandkits/nuc-kits/NUC6i7KYK_IntegrationGuide_01.pdf
「Radiant SPX2550NUC-Extreme」サンプル詳細スペック | |
OS | Windows10 Home (64bit) DSP版 |
CPU | Core i7-6770HQ 4コア8スレッド (4コア同時3.2GHz, 6MBキャッシュ, TDP 45W) |
内臓グラフィックス | インテル Iris Proグラフィックス580 1x HDMI*2.0(4K 60Hz) 1x Mini DisplayPort*1.2(4K 60Hz) |
メモリ | 16GB[8GB*2枚] S.O.DIMM DDR4-2133 (内臓グラフィックはメモリ共有) |
システムストレージ | SAMSUNG SM951 MZVPV512HDGL [M.2 NVMe SSD 512GB] |
無線接続 | IEEE 802.11ac/b/g/n 対応 Bluetooth4.2 |
光学ドライブ | なし(外付けドライブをカスタマイズで追加可能) |
ACケーブル | 3PINタイプが付属 (NUC単体販売には付属しないので注意) |
今回、メーカーから提供いただいたNUC6i7KYKベアボーンをサイコムで「Radiant SPX2550NUC-Extreme」の製品同様に組み立て、梱包を行ったものを貸し出していただきました。サンプル機に使用されているNUC6i7KYKベアボーンは使用済みの検証機材となっているため、パッケージにES品(エンジニアリングサンプル)であることが記載されているほか、若干、NUCベアボーンの外装に傷がある場合があります。製品の性能や仕様は一般販売品と全く同じものになっています。
Radiant SPX2550NUC-Extreme レビュー目次
1.Radiant SPX2550NUC-Extremeの外観・付属品
2.Radiant SPX2550NUC-Extremeの内部構造
3.Radiant SPX2550NUC-ExtremeのCPU性能
4.Radiant SPX2550NUC-ExtremeのUEFI設定やOC
5.Radiant SPX2550NUC-Extremeのグラフィック性能
6.Radiant SPX2550NUC-Extremeの高速SSDの発熱
7.Radiant SPX2550NUC-Extremeのレビューまとめ
Radiant SPX2550NUC-Extreme 外観・付属品
Radiant SPX2550NUC-Extremeの梱包開封からチェックしていきます。
まず梱包段ボール箱を開けると、エアクッションに囲まれてNUCベアボーンの純正パッケージとマニュアル、ACケーブルが入っていました。
マニュアルについてはBTO PC向けのサイコムの汎用マニュアルとなっています。ドライバCDについてはサンプル提供日程の都合でレーベルは旧製品のものになっていますが収録内容は7月29日(サンプル提供日)時点で最新のNUC6i7KYK用ドライバが収録されていました。
製品パッケージは黒色の箱に金色の文字で型番と「Change the Game」のキャッチコピーが刻まれています。パッケージを開封すると最上段にNUC本体がありその下にマニュアルやACアダプタなどの付属品が収められていました。
マニュアルは部分的に日本語の説明が入っていますが基本的に英語です。ただ図解がかなり多く入っているので、日本語がわからなくてもパーツの換装等は簡単に行えると思います。
また最初に書いたように、NUC6i7KYKベアボーンはグローバル製品のため国内正規販売品であっても国内コンセント対応のACケーブルは同梱されていませんが、サイコムBTO PC「Radiant SPX2550NUC-Extreme」ではこのACケーブルが同梱されるので別途購入する必要はありません。
なおACケーブルはDELLのノートPC等に採用される所謂、ミ○キー型の3PINケーブルとなっています。
専用のACアダプタは19V、6Aの120Wの高出力のものになっています。高出力ということもあり専用ACアダプタはNUC本体の2/3くらいのサイズがあり、ACアダプタ自体のケーブルやACケーブルを合わせるとほぼNUC本体と同じサイズになってしまいます。そのためNUCベアボーンを外出先(仕事場)と自宅で併用する場合はACアダプタを持ち運ぶのが面倒かもしれません。
ACケーブル、ACアダプタともに互換品がAmazon等で販売されているのでそれを購入して自宅と外出先に置いておけばNUCユニット本体のみを持ち運べばいいだけなので便利だと思います。
製品本体上面の外観は下の画像のようになっています。トップパネルはプラスチック製で、左側は光沢のある六角形の網目模様になっており、右側は艶消しの上に「Skull Canyon」のドクロマークがプリントされています。「Radiant SPX2550NUC-Extreme」の場合は右下に、ベアボーンにはない「Sycom」ロゴが貼られています。
ドクロマークについてはユーザーの好みに配慮してマークなしの天板も同梱されています。
天板は六角ネジで固定されていますが、付属品に六角レンチが入っているので簡単に換装可能です。
ちなみに天板の裏面には特に何もないので天板の交換以外では天板を外す必要(機会)はありません。
入出力ポートについては本体前面(左画像)には左から、電源スイッチ、SDカードスロット、急速充電対応のUSB3.0、ヘッドホン端子があり、本体裏面(右画像)には左からACアダプタ接続端子、光音声出力、有線LAN、USB3.0、mini-DisplayPort、Thunderbolt 3、HDMI端子があります。
NUC6i7KYKの本体はコミック単行本1冊よりも少し大きいくらいのサイズになっています。
またNUC6i7KYKはVESAマウンタに対応しているので、液晶モニタやテレビの裏面に簡単に固定できます。固定方法は付属のネジをNUC裏面に付けて、マウントボードをテレビやモニタに固定してから下画像のように穴にはめてズラすだけです。NUC6i7KYKは従来のNUCよりも幅を広く、薄型にした形状になっているので壁掛けや壁際のテレビやモニタへの固定とも相性がいいと思います。
Radiant SPX2550NUC-Extreme の内部構造
「Radiant SPX2550NUC-Extreme」はSkull Canyon NUC6i7KYKベアボーンを採用したBTO PCなので当然、メモリやストレージには簡単にアクセスできて交換も可能なのでその内部構造をチェックしていきます。NUC6i7KYK内部へは本体裏面の底板を外すことでアクセス可能になっています。底板の固定は四隅のプラスねじだけなので特殊な工具も必要なく簡単に底板を外すことができます。
ネジは底板から外れないようになっているので頻繁に底板を外してもネジの紛失の心配がないのはありがたい構造だと思います。 余談ですがこのレビュー執筆中に探し物していてデジカメ落としてレンズ前のガラス割りました。 orz
NUC6i7KYK内部の全貌は下画像のようになっています。画像下側が電源スイッチのある本体前方、上側は本体後方になっています。NUC裏面画像と見比べてもらうとわかるのですが、NUC内部左側に排気ファンがあり、この写真の左上に排気される構造(左下の画像)ですが、底板の左側には吸気口がありません。代わりに右側と裏板右側に吸気口があります(右下の画像)。
つまりNUC6i7KYKは右(裏)側から吸気して、M.2SSD、メインメモリ、ケースファンを経て排気を行うというエアフローでケース内全体を効率的に冷やす構造になっていました。のちのちSSDの発熱に関する検証を行うのですがこの効率的なエアフローがかなり効いてきます。
NUC6i7KYKにはDDR4 S.O.DIMM規格のメモリスロットが2基搭載されており、今回提供いただいた「Radiant SPX2550NUC-Extreme」のサンプル機ではDDR4-2133 8G*2で計16GB分のメモリが搭載されていました。Intel CPUの内臓グラフィックは一般的なグラフィックボードのような外部ビデオメモリがなく、メインメモリを共有するので8GB以上のメインメモリを積むのが無難だと思います。
メモリについては後日より高速な2400MHz対応のものをレビュー予定です。
またNUC6i7KYKにはストレージ用のM.2スロットも2基搭載されています。M.2 SSDには従来のSATA規格で接続しシーケンシャルリードが600MB/s程度のものと、2000MB/s以上の読み込み速度を誇る次世代SSD接続規格NVMe対応のものの2種類があります。今回のサンプル機には2150MB/sで動作可能な高速SSD Samsung SM951の512GB版が搭載されていました。
またレビューに際して管理人の私物でシーケンシャルリード2500MB/sのSamsung 950 PRO(紹介記事)を空きスロットに搭載しました。設置にはSSDをスロットに刺して備え付けのネジで固定するだけです。
以上、Skull Canyon NUC6i7KYK採用「Radiant SPX2550NUC-Extreme」の内部構造のチェックとなりました。
セットアップもHDMIケーブルを繋いで、マウス・キーボードのUSBを繋ぎ(管理人はLogicoolのUnifyingでまとめているのでワイヤレスアダプタ1つだけ)、最後にACアダプタを接続すれば完了です。
インターネット接続については有線LANを使用する場合は上の接続項目にLANケーブルが追加されますが、NUC6i7KYKは内臓無線LANがIEEE 802.11ac/b/g/nに対応となっており、加えてサイコムBTO PC「Radiant SPX2550NUC-Extreme」であれば無線ドライバもユーザーの手元に届いた時点でプリンストールされているので起動後すぐにワイヤレスでインターネット接続が可能です。
サイコムBTO PC「Radiant SPX2550NUC-Extreme」ならケーブルを繋いで即起動すればセットアップも完了なので、セットアップについてはほとんど説明することもありません。次はCPU性能などの検証についてご紹介していきます。
Radiant SPX2550NUC-Extreme のCPU性能
4コア8スレッドCPUのCore i7-6770HQ(4コア同時3.2GHz, 6MBキャッシュ, TDP 45W)を搭載するSkull Canyon NUC6i7KYKのCPU性能をチェックしていきます。性能の比較対象としてデスクトップ向けCPUのi7 6700K(4コア8スレッド)とi5 6400(4コア4スレッド)を使用します。
Core i7-6770HQは負荷のかかっているコア数で最大動作周波数が変化するシステムを採用しており、1コアの時は3.5GHz、2コアの時は3.4GHz、3コアの時は3.3GHz、4コアで3.2GHzとなります。また今回「Radiant SPX2550NUC-Extreme」に搭載されているメインメモリは2133MHzのものなのでメモリの動作周波数は2133MHzになっていることがCPU-Zのメモリ情報で確認できます。
まずはCPUの性能測定ベンチの定番Cinebenchのスコアです。Core i7-6770HQのスコアは700となっており、i5 6400は517、i7 6700(定格)は881となっています。i7-6770HQの性能はデスクトップ版のi5より35%も速く、メインストリーム最速CPUのi7 6700Kと比較してもi7-6770HQはTDP45Wの省電力性能ながらi7 6700Kの8割近い性能を維持しています。
また先日「サイコム G-Master Hydro Z170」のレビューを行った際に録画を行ったFF14ベンチの動画を使ってエンコード速度の比較を行いました。i7-6770HQを使用した時のエンコード時間は28分56秒となりました。比較対象のi5 6400では39分10秒、i7 6700Kでは23分53秒でした。エンコードにかかった時間から単位時間(秒)あたりのエンコード性能を比較するとCinebenchの性能比較とほぼ比例する結果が出てきました。
NUC6i7KYK採用の「Radiant SPX2550NUC-Extreme」はコミック単行本と同程度の超小型サイズPCながら、一般的なデスクトップPCと遜色ないCPU性能を備えています。
ただ小型筐体におさまる小口径ファンによる冷却のためエンコードなどによるフル負荷時はどうしてもファン回転数がかなり大きくなり、またCPU温度は最大99度まで上がってしまいました。こちらはエンコード中のCPU温度、CPU使用率、ファン回転数の時間推移から後半200秒間を抜粋したグラフとなっています。
CPU使用率はエンコード中の全平均で92%ほどとなっておりCPUにはほぼフルの負荷がかかっています。その状況でCPU温度も90度を軽く超えて、最大99度になると100度を超えないようにサーマルスロットリングが発生して温度上昇を抑制しているようです。コア温度はかなり高いですが筐体自体は触れないほどの熱は持ちませんでした。99度というとかなりの高温で不安になりますが、NUC6i7KYKはCPUとクーラーがセットになっているベアボーン製品なので十分検証されていると思いますし、今回も30分近いエンコードを問題なく完走できたので製品として問題はないのだと思います。流石にエンコードで壊れたらメーカー保証範囲内だと思いますし。
また負荷時にはファンノイズも大きくはなりますが、ファン自体が小口径ということもあり4000RPM越えの高回転でも、シューという高周波の風切り音がするだけでそこまで耳障りということもありませんでした。ノートPCで同様のファンノイズが出ると液晶モニタとファンが近いので必然、耳も近づいてしまい不快かもしれませんが、NUCの場合はモニタとNUC本体が離れているので配置次第でファンがフル回転でも十分に常用可能です。
Radiant SPX2550NUC-Extreme のUEFI設定やOC
CPUにフル負荷がかかった時の温度がかなり高かったので85度以下になるよう温度リミットをかける機能がないかと思ってUEFI(BIOS)の設定画面をチェックしてみました。(注:UEFI設定はPC動作に深刻な影響を与える可能性があるのでよくわからない人は触らないほうがいいです。)
UEFIに入る方法としては、POST中のINTEL NUCのロゴが表示されている時に「F2」キーを押すか、Windowsの設定メニューから入る2種類の方法があります。後者はスタートボタンの設定から「更新とセキュリティ」-「回復」を選び、「PCの起動をカスタマイズする」から再起動します。
オプション選択画面が表示されるので「トラブルシューティング」-「詳細オプション」-「UEFIファームウェアの設定」の順に進んでいくとUEFI画面にアクセスできます。
NUC6i7KYKのBIOS画面はマウスとキーボード操作できるグラフィカルなUIになっています。(最近のBIOSは基本的にそうですが) いろいろと項目を調べてみましたが、国内で販売されているメジャーな自作PC向けマザボのBIOSとは違って日本語UIは用意されておらず、その他の言語もなく、NUC6i7KYKのBIOS画面は英語UIのみとなっていました。
日本語非対応よりもBIOSを触っていて(レビュー目的で)不便だったのが、「F12」キーのスクショショートカットキーがアサインされていなかったことです。一般的な自作PCマザボであれば「F12」キーを押すとBIOSのスクショをUSBメモリへ自動で保存してくれるのですが、NUC6i7KYKでは画面右上のカメラボタンを押さないとスクリーンショットを撮影することができませんでした。
代わりにスクリーンショット機能は撮影範囲をマウスドラッグで範囲指定が可能だったり、保存場所を細かく指定できたりとBIOSらしからぬ多機能ぶりを発揮しているのですが、「F12」キーのスクショショートカットキーはないと不便な人も多いと思うのでBIOSの更新などで実装して欲しいと思いました。
UEFIの設定項目に当初の目的の温度リミット機能はありませんでしたが、CPUの動作クロックや倍率、コア電圧等を設定できる項目はありました。スライダーを使って簡単に調整できます。設定値は定格が上限となっており、基本的にCPUのダウンクロックで発熱を下げるために用意されているようです。どうしてもCPU温度が気になる人はCPUの動作倍率を下げてとコア電圧のオフセット等を調整するといいと思います。
また同画面の「グラフィック」「メモリ」のタブからはCPUと違って性能を上げるオーバークロックが可能になっています。ユーザーの自己責任の下でという注釈は付きますが、Intel公式がグラフィックとメモリを簡単にオーバークロック設定できるマニュアルをPDFファイルで公開しています。
ソース:http://www.intel.com/content/dam/support/us/en/documents/boardsandkits/NUC6i7KYK-Overclocking-Assistant.pdf
メモリの画面ではメモリクロックのOCが可能になっています。
メモリOCについては後日別の記事で紹介する予定ですが、ここでも簡単に触れておきます。
メモリの動作周波数はオート設定かマニュアル設定が選択できて、マニュアルの場合はリファレンスクロックを100MHzか133MHzから選択し、それに 対する倍率で動作周波数が決まるようです。例えば下の画像では133MHz*16=2133MHzとなっています。メモリ電圧も1.2Vと1.35Vの2 択なので設定はかなり簡単化されています。注意点としてメモリを3000MHzなど高い値にOCする場合はCPU設定タブ右下の「SA voltage offset」を0.15~0.20Vほど盛る必要があるようです。
内臓グラフィックの設定についてもメモリ同様にオーバークロックが可能になっています。設定項目はsliceとunsliceの2項目に関してリファレンスクロック(50MHz)に対する倍率と電圧設定が可能になっています。
Intel公式のオーバークロック指南書によると、sliceはグラフィック性能に直結するGPUコア、unsliceはGPUコア以外の補助機能部分のことらしいです。
The processor graphics is divided into two sections: “slice” and “unslice”.
・The “slice” (can be more than one) holds the graphic compute/execution cores (EUs).
・The “unslice” holds various fixed-function and shared HW portions of the graphics.
実はsliceとunsliceの違いが判らなくて「GT unslice」でググったらOC指南書がトップに出てきました。
管理人も気になってBIOSについて調べましたが、基本的にNUC6i7KYKや「Radiant SPX2550NUC-Extreme」ユーザーにとっては、UEFI設定は触る必要のない項目になっています。最初に注意書きをしましたがPC動作に深刻な問題を発生させる可能性もあるのでよくわからない人や自信のない人は触れないほうが無難です。
どうしてもOCに興味のある人はIntel公式のOC指南書を読んで注意深く実行してください。
Radiant SPX2550NUC-Extreme のグラフィック性能
続いてCore i7-6770HQの内臓グラフィックであるインテル Iris Proグラフィックス580の性能をチェックしていきます。Intelが「Change the Game.」とまで豪語するCPU内臓グラフィックの性能がどれほどのものなのか期待が高まります。
Iris Pro Graphics 580はIntelグラフィックスの最新アーキの「GT4e」を採用しキャッシュ用に128MBの専用eDRAMが搭載された内臓グラフィックス(iGPU)になっています。最初にIntelの内臓グラフィックスについて名前由来などを簡単に説明しておこうと思います。
ソース:
http://arstechnica.com/gadgets/2015/08/skylakes-graphics-architecture-intel-is-still-gunning-for-dedicated-gpus/
https://software.intel.com/sites/default/files/managed/c5/9a/The-Compute-Architecture-of-Intel-Processor-Graphics-Gen9-v1d0.pdf
まず「GT○」というアーキの名前についてですが、この”GT”というのは”GPU Tier”の略であり、Tierとは層や段といった意味の単語です。インテル内臓グラフィックスのGTシリーズのGPUは上でも簡単に説明した“slice”と“unslice”の複数の層から構成されています。
Intel内臓グラフィック内では“unslice”は1層だけで、これはGPUの補助的な機能を果たしています。
それに加えてグラフィックの実行ユニットとして“slice”という層が存在します。“slice”は8個の実行ユニット(EU)からなる3つの「サブスライス」とその他のユニットで構成されて1つ層になっています。
グラフィック実行ユニット“slice”が1層であれば“unslice”の1層を足して2層なのでGT2、“slice”が2層であればGT3、……という具合に命名されています。また末尾の"e"は専用キャッシュeDRAMを搭載するモデルであることを示しています。
ここまで来れば話は単純です。AMDやNVIDIAのGPUの性能を語る時にコア(シェーダー)数と動作周波数がよく注目され、基本的にGPU性能はこれらの積に比例する形になっています。インテルの内臓グラフィックスの場合、動作周波数はそのままですが、AMDやNVIDIAで言うところのコア(シェーダー)数が複数のコアやシェーダーをまとめた”Slice”というユニットで表現されているだけです。
GT3(Slice数2)を採用するBroadwell世代CPUからGT4(Slice数3)を採用するSkylake世代CPUでIntelが理論的にグラフィック性能は1.5倍になると言っていた意味もこうすると簡単にわかりますね。
というわけで概要説明が長くなりましたが、理論的には前世代から1.5倍へのパフォーマンス向上を果たしたCore i7-6770HQのインテル Iris Proグラフィックス580の性能をチェックしていきましょう。
まずはドラゴンクエストXのベンチマークスコアです。ドラゴンクエストXはIris Pro 580であればフルHD、最高設定でスコアは8500を超えて快適に遊べるという結果になりました。ドラクエX程度の軽量なPCゲームであればIris Pro 580のグラフィック性能でも十分に事足りるようです。<参考:ログ1、ログ2、ログ3>
続いてFF14ベンチの結果になっています。HD解像度(1280*720)の標準品質で7245になりました。
スコア自体は「非常に快適」という結果になっているのですが、ベンチマーク中のフレームレート履歴を見ると序盤の一部と終盤でFPSが20FPSを下回る場面があり、かなりカクついていました。FPS履歴からベンチ時間中で一定のFPS以下が占める割合を調べたところ、30FPS以下の占める割合は2割程度でした。グラフィック品質と解像度を下げてもFF14をIris Proグラフィックス 580でプレイするのは難しそうです。
Skylakeの前世代となるBroadwell世代CPUのi7 5775Cに搭載されるIris Pro 6200(GT3e)の内臓グラフィック性能を比較しました。比較項目はFire StrikeとFire Strike Extremenグラフィックスコア、FF14ベンチの標準設定で解像度が1280*720と1600*900の計4種類となっています。
下のグラフではスコアからした性能比がグラフ化されており、単純に割った値に100掛けたものが緑色の棒グラフになっています。前世代比で10%程度の性能向上となっています。
5775Cのスコア参考:http://www.4gamer.net/games/235/G023503/20150722008/
またGPUの動作周波数がCore i7-6770HQのIris Pro 580が950MHz、i7 5775CのIris Pro 6200は1150MHzとなっているので、動作周波数による性能差を補正してSlice数による性能差を補正値として概算してみました。この補正値の場合は性能の向上は30%程度まで伸びます。ただし上のFF14ベンチ中のフレームレートとCPU(内臓グラフィック)温度を見ても950MHz動作の時点ですでに温度が80度を超えているので、NUC6i7KYKについては動作周波数のOCによる性能向上は期待できないと思います。
Core i7-6770HQの内臓グラフィックであるインテル Iris Proグラフィックス580は高画質PCゲームをプレイするにはまだまだ力不足な感は否めませんが、ドラクエXのような比較的軽量なPCゲームなら十分に対応でき、前世代から順当な性能向上を見せてくれました。
Radiant SPX2550NUC-Extreme の高速SSDの発熱
Skull Canyon NUC6i7KYKでは内部構造に関する章で紹介したようにストレージ用のスロットとしてM.2スロットを2基搭載しており、各スロットでSATA規格だけでなく最新の高速規格であるNVMeによる接続にも対応しています。
今回サンプル機のメインストレージに搭載されたSM951 512GB(左)と管理人の私物のSamusung 950 PRO 512GB(右)でCrystalDiskMarkを回してみました。どちらもNVMe接続に対応したM.2 SSDなのでSATA3規格の上限値である600MB/sを大幅に超えるシーケンシャルリード性能を発揮しています。
(なおスペック的に勝るSamusung 950 PROがSM951に連続書き込み速度で劣るのはSM951のほうが空き容量が大きいためだと思われます。)
上のようにNVMeのM.2 SSDは動作が高速な反面、発熱が非常に大きいという欠点もあります。実際に管理人も爆速2500MB/sの読み込み速度を誇るSamusung 950 PROをヒートシンクも何もないPCIアダプタで利用したところ75度近くまでSSD温度が上がってサーマルスロットリングで読み書き速度が遅くなりました。
さてSkull Canyon NUC6i7KYKのM.2 SSDにもヒートシンクはありませんが、SSD温度や読み書き速度のサーマルスロットリングによる低下が発生しないかを確認しました。測定方法のために負荷としてCrystalDiskMarkを数回連続で回しています。
下はCrystalDiskMarkを6回連続行ったので、最後の1回のみを抜粋したグラフになっています。SSDが剥き出しの状態でも最大72度でサーマルスロットリングが発生する75度に達することもなく安定動作しました。
M.2 SSDにヒートシンクがないにもかかわらず、75度に達せずサーマルスロットリングが発生しない原因は内部構造の紹介で説明したように、下画像で右側の吸気口からCPUを冷やすブロアーファンを経て左上の排気口から排気されるというエアフローで効率良くM.2 SSDが冷やされているためだと考えられます。
NUCユニットは空間が狭く密閉されているため当初はM.2 SSDの熱が籠りそうな印象がありましたがサーマルスロットリングを回避できる程度の冷却性を備えていました。
とはいえSSD温度は70度を超えているのでストレージの温度としてはやはり不安が残ります。そこでNUC6i7KYKの底板が金属製であることに目をつけて、サーマルパッド経由で底板に熱を逃がしてSSDを冷やせないかと思い試してみることにしました。
定規を使って測定してみたところ、M.2スロットと底板の距離は3mm程であることが分かったので、800円ほどで購入できる親和産業製の厚さ3mmの熱伝導用シリコンシート(SS-SG3M)を購入しました。
放熱シリコンシートは1つのパッケージに2枚入っているので下の画像のようにメモリチップやメモコンのある部位の上に貼って底板を閉じれば完了です。
サーマルパッドによる放熱補助を加えて、先ほどと同様にCrystalDiskMarkを6回連続で行ってSSD温度と読み書き速度のログをとり、CrystalDiskMarkの最後の1回を抜粋してグラフ化しました。800円のサーマルパッドを貼っただけでご覧のようにSSDの最高温度は53度と先ほどよりも20度近く下がっています。
こちらはサーマルパッドなしとサーマルパッドありのベンチ時の温度比較グラフですが、サーマルパッドありではなしに比べてガッツリと冷えているのが一目瞭然ですね。SSD温度も50度程度であればストレージとしてのデータの安全性もそれなりに信頼できると思います。
「Radiant SPX2550NUC-Extreme」(NUC6i7KYK)においては、M.2 SSDは効率的なエアフローによりNVMe対応の高速SSDであってもサーマルスロットリングが発生しない程度には冷やせていますが、800円程度の市販のサーマルパッドによって冷却性を補助することでさらに20度近くSSD温度を下げることが可能でした。サーマルパッド追加はお手軽&リーズナブルなので非常におすすめです。
Radiant SPX2550NUC-Extreme のレビューまとめ
最後にSkull Canyon NUC6i7KYK採用「Radiant SPX2550NUC-Extreme」の実機サンプルを検証してみた結果のまとめを行います。簡単に箇条書きで以下、管理人のレビュー後の所感となります。
良いところ
- NUC6i7KYKはデスクトップ向けハイエンドCPU並みのCPU性能がある。
- コミックサイズで外出先への持ち運びも便利
- 最新内臓グラフィックIris Proグラフィックス580は軽量なPCゲームであれば十分に対応可能
- NUCベアボーンでありながらBTO PCとして完成品を購入できる
- デフォルトでも高速SSDでサーマルスロットリングが発生しない
- サーマルパッド追加で簡単にさらに冷やせる(サイコム側で貼ってもいいと思う)
- おそらく保証内だと思うが最大99度まで上がるCPU温度は少し不安
- 最新の高画質PCゲームをプレイするにはまだ力不足
デスクトップ並みCPU性能のCore i7-6770HQとIntelの最新内臓グラフィックスであるIris Proグラフィックス580を搭載しながら、コミック単行本サイズというコンパクトさも相まって、Skull Canyon NUC6i7KYKに興味を持っているユーザーも多いと思います。NUC6i7KYKはベアボーンとして販売されているため、M.2 SSDやS.O.DIMMメモリを用意してOSを自分でインストールする必要があるなど、初心者にはややハードルの高い商品になっています。
しかしながらサイコムで販売されるBTO PC「Radiant SPX2550NUC-Extreme」はそんなコンパクト&ハイスペックなNUC6i7KYKが完成した状態で手に入るという非自作erやPC初心者に優しい商品になっています。パーツの選定がよくわからない、OSのインストールが面倒くさいというユーザーには非常におすすめです。
Skull Canyon NUC6i7KYK採用「Radiant SPX2550NUC-Extreme」
Skull Canyon NUC6i7KYKのベアボーン単体も国内ではすでに発売中です。
Intel NUC Core i7-6770HQ搭載 小型PCベアボーン M.2 SSD対応 BOXNUC6I7KYKAmazon.co.jpで詳細情報を見る
posted with amastep
インテル(2016-07-06)Skull Canyon NUC6i7KYKのベアボーンは米尼でも販売されており、送料・デポジット返金込みで7万円ほど、国内直送で購入可能になっています。メモリは初期不良なども怖いので国内購入がおすすめですが、M.2 SSDはSamsung 950 PROなど米尼で安く売っているものもあるのでNUCとセットで購入すると非常にお得です。
(注:記事内で参考のため記載された商品価格は記事執筆当時のものとなり変動している場合があります)
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