カタログ通販への逆風がやまない。ニッセンホールディングス(HD)は2日、2016年12月期の連結最終損益が105億円の赤字(前期は133億円の赤字)になりそうだと発表した。最終赤字は4期連続となり、11月に親会社セブン&アイ・ホールディングスの完全子会社になることが決まった。千趣会などライバルも苦戦が続き、「脱・カタログ」や顧客の絞り込みといった生き残り策が欠かせなくなっている。
ニッセンが今期の通期見通しを出すのは初めて。売上高は19%減の1279億円、営業損益は102億円の赤字(前期は81億円の赤字)を見込む。最終損益段階では赤字幅は縮小するが、事業の実体面では厳しさが増す。2日発表した16年1~6月期連結決算は最終損益が46億円の赤字(前年同期は39億円の赤字)だった。
千趣会も7月末に16年12月期の純利益見通しを従来予想から半分に減らした。婦人服の販売不振で値引きが増え、既存会員の減少も響く。
■ECとの格差広がる
もちろん、両社は高コスト体質にメスを入れてきた。ニッセンは15年に約150人の希望退職を募り、不採算の家具事業から撤退。カタログ発行回数を8回から5回に減らした。千趣会も前期までに不良在庫を処分した。
それでも回復に力強さを欠くのは、業界が抱える構造的な問題が解消されていないからだ。
問題のひとつが電子商取引(EC)の急成長だ。カタログ通販よりも手軽に商品を探したり、他社商品と比較したりできる。富士経済(東京・中央)によると、消費者向け通販は、05年にECがカタログ通販の販売金額を上回って以降、差は広がるばかり。15年のカタログ通販の販売額は1兆2985億円と05年比で15%減少したが、ECは同4.2倍の6兆5080億円まで増えたと見られる。
アパレルのECで存在感を示しているのは「ゾゾタウン」だ。運営するスタートトゥデイは16年4~6月期の連結売上高が前年同期比で4割の増収、営業利益は34%増を果たした。あるアパレル関係者は「ゾゾタウンを通じて売れる量が多すぎて、出店をやめることは考えられない」と話す。
総合型EC各社の業績も堅調だ。ヤフーの16年4~6月期は、ECを含むショッピング関連事業の流通総額が前年同期に比べて58%伸びた。
ECに押されっぱなしだが、カタログ通販でもこれから打つ手がないわけではない。
■照準を絞る
フジ・メディア・ホールディングス傘下のディノス・セシールは15年3月期に連結最終損益が53億円の赤字に陥ったが、16年3月期には売上高も2%増え、最終損益は10億円の黒字に回復した。年4回の定期発行とは別の追加カタログでは、婦人服や下着など分野別に作り分け、顧客の志向に合わせて最適なカタログを送付するようにした。これで顧客の購買意欲を引き出した。
ベルーナも4~6月期に売上高が前年同期比9%増え、営業利益は31%増の24億円だった。デリバティブ評価損を計上したため、最終赤字だったが、本業は同業他社に比べると堅調。カタログを見て注文する割合が高い中高年女性を主力ターゲットにしている戦略がうまくいっているという。
アパレル専業通販のドゥクラッセ(東京・世田谷)もターゲットを40代以上に絞る戦略が奏功し、16年4~6月の通販事業の売り上げは前年同期に比べて21%伸びた。中高年の体形の崩れをカバーできるデザインなどが消費者の支持を受けている。ネット通販も強化するが、「カタログ通販の需要もまだまだある」という。
ニッセンはセブン&アイの完全子会社となったあとに、新たなリストラ策を検討すると見られている。だが、身を縮めるだけでは長期的な成長は見込めない。セブン&アイのグループの一員として、ほかのカタログ通販では打ち出せない独自策を講じる必要があることには変わりがない。
(相模真記、中尚子)