先月ブラジルの警察がリオデジャネイロ五輪期間中のテロを企てた疑いで12人を逮捕した際、同国民はブラジルならではの反応を示した。ツイッターで冗談をつぶやいたのだ。
ある学生は「やれやれ、ブラジルではテロリストさえ怠慢だよ!」とつぶやいて、犯人らが一度も直接顔を合わせたことがなく、対話アプリ「ワッツアップ」で連絡を取っていたことをあざ笑った。
容疑者を「アマチュア」だとからかう者もいた。同国のモラエス法相によると、容疑者らはオンラインで過激派組織「イスラム国」(IS)の入会式に参加し、武術訓練を受けることや、パラグアイから自動小銃AK47をインターネットで購入することを話し合っていたという。
あるブラジル人は「どちらかというと(武道家俳優の)チャック・ノリスみたいなやつらだな」とツイートした。また、容疑者らが五輪での企てをぎりぎりまで先延ばしにしていたことをばかにした者や「AK47は今ごろ、僕が注文したひげそり後用のローションと一緒に税関で足止めされているに違いない」と面白おかしく語った者もいた。
■テロ未遂事件にのんきな反応
恐ろしいテロ攻撃になりかねなかった行為に対し、ブラジル人がのんきな反応をするのには驚かない。カーニバルではウサマ・ビンラディンのお面が人気だ。表向きは平和主義のこの国にとって、イスラム過激派のテロという概念がよそ事である証しだ。今月開催される五輪を目前に行われた今回の作戦は、同国の新たな反テロ法の下での初めてのケースだった。
作戦をめぐるブラジル当局への嘲りは憂慮すべきだ。サンパウロの有力シンクタンク、ジェトゥリオ・バルガス財団で治安について研究するラファエル・アルカディパニ氏は「すべてのつじつまがまるで合わない。ライフル銃を手に入れたければ、ブラジルではたった3000レアル(約9万4300円)でレンタルできる」と話す。あの逮捕はブラジル政府がテロの脅威に真剣に向き合っているということを世界に示すために演出した、メディアへの見せ物だったと同氏は話す。
ブラジルにまん延する汚職や規則違反は、同国の人々の心を皮肉で固め、最近の政治危機で体制側への信頼をさらに損なった。一部では、連邦警察が同国の情報機関であるブラジル情報庁(ABIN)に先んじるために逮捕を企てたとも示唆されている。また、すべてが自作自演だったと思い込んでいる人もいる。