ボーヴ族

最近は気に入った本があったらその作家の本を継続的に読むという本の読み方をしていて、
ニューヨーク三部作がおもしろかったのでポール・オースターの本をよく読んでいた。
だけどちとうんざりしてきたんで、いったんやめて源氏物語を読んでいる。
源氏物語おもしろい。やっぱ古典に勝るものはないわ。

といってオースターがつまらないというわけではない。
おもしろいはおもしろい。最後まで読めるし。
だけどなんつーか、表層的なおもしろさとでもいうか、結局は現代文学とでもいうか、
おもしろいけど、読み終わって本閉じたらそれで終わり、みたいな。

ひょっとするとオースターの前に継続的に読んでいたのがジョルジェ・アマードだったから
無意識にそこと比べてたのかもしれない。
そりゃジョルジェ・アマードと比べりゃつまらなくても仕方ない。
あるいはおれはニューヨーク三部作の内に明らかに見てとれる
ベケットの要素が気に入っただけなのかもしれない。
それに特定の時期の作品だけが好きな作家ってのはいるもんだ。
横光利一なんかも、ある時期に書いた機械や時間がやっぱずば抜けておもしろい。
でもまあ作家なんてどんな大作家でもほんとにおもしろいのは2,3冊ってのが普通なんで
こんなもんなのかな。
みんな本を書きすぎるんだよな。


それとオースターのなかに時折出てくるオサレな会話も気にいらない。
なんつーか、ハイセンスでハイソサエティの人たちの
NY風の小洒落た知的遊戯とでもいうか。
たとえば男女の会話で
「きみが帰ってこないからテンプル騎士団に誘拐されたんじゃないかと心配だったよ」
「あら、あなたが嘆きの壁を叩いてる音が私には聞こえてたわよ」
みたいな。いやこれは創作だけどなんかこんな風な会話、
そりゃウディ・アレンがこんなこと言ってたら笑えもするけど
本のなかに普通に出てこられでも、ウヘーってなっちゃう。
もちろんこういう知的風な会話が好きな人もいるんだろうし、
だいたい頭よさそーな女なんかはこういうの好きそうだし
そういう女がまたちょっと可愛かったりもして
そっちはそっちでいい男と楽しくやってりゃいいけど、
やっぱりおれは知的な会話して子宮がキュンッてなっちゃう女よりも
子宮の近所で一週間も滞在してるうんちを追い出そうと
便器にまたがってフンフンふんばってる女のほうが好感が持てるのだ。
要するに、人種が違うんだ。




自分がどの作家の民族に属しているのかを考えてみる。
なんというか、勝手に思ってるだけだけど
自分に調和する作家というか、世界観が自分としっくりきて
この人の系譜に自分はいるんじゃないかと思わせてくれる作家。

無論おれにとってサミュエル・ベケットというのは唯一無二の特別な作家だし、
キルケゴール-カフカ-ベケットという一つの系譜の作品は
自分の精神世界を抽出して現前させてくれてるような錯覚すら起こさせてくれる。
そこにアミエルやペソアを加えてもいいかもしれない。
だけどこれらの作家はちょっと神聖すぎるというか、
勝手に思ってるだけでも同席するには恐れ多い。

もうちょっと俗っぽい作家がいいな。
俗っぽくて魅力的っていうとブコウスキーが浮かぶけど、
ああいう昔の作家の破天荒な生き方というのはちょっと違う。
ユーモアセンスとどこかインチキっぽい感じという点ではアラバールもいいけど
ちょっとアングラ臭が気になる。だいたいあいつマザコンだし。
不在に心を宿すという意味では尾崎翠もいい。
だけど彼女はちょっと恋の話が多すぎる。
失望するための口実として恋を用いてるのならいいんだけど。
ロベルト・ヴァルザーはどうだろう?いい線いってるんじゃないか?
大作家ではなく、一部に愛好家がいるという立ち位置もなんか好きだ。
だけどヴァルザーでもまだいい子すぎる気がするな。
もうちょっと俗で、自分の恥ずかしい面も晒してるような作家…。

そうだ、エマニュエル・ボーヴじゃないか?
ぼくのともだち、っておれは友達欲しくないけど
自分を戯画したユーモアセンス(たとえばすぐに浮かれて、そのあと案の定失望して、被害妄想に陥る、みたいな)、
あるいはどん底の主人公みたいに、もう金がなくて生活できないって状況なのに
努力もせず、働きたくねー、どっかから金降ってこないかなー、とか
そんなことばっか思ってるとことか。
そうか、エマニュエル・ボーヴか。そうかもしれない。
おれはボーヴ人、ボーヴ族なんじゃないか?

ところでボーヴって実際どんな人生送ったんだっけ?と名前で検索してみる。
すると出るわ出るわ。ダメ男の小説、ダメ男小説の大家、ダメ男、ダメ男、ダメ男・・・


これは・・・前世からの因縁!





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