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【政治】

16年防衛白書 中国に「強い懸念」 安保法反対の意見触れず

 中谷元・防衛相は二日の閣議で、二〇一六年版防衛白書を報告した。白書では、東シナ海や南シナ海で軍事活動を活発化させている中国に関し、「力を背景とした現状変更の試みなど、高圧的ともいえる対応を継続させ、一方的な主張を妥協なく実現しようとする姿勢を示している」と批判し、「今後の方向性について強い懸念を抱かせる」とし、「懸念」とした昨年版より危機感を強調した。

 日本周辺では、今年六月に中国軍艦が初めて沖縄県・尖閣諸島の接続水域に侵入したことなどを挙げ、「極めて遺憾」と抗議。「中国は法の支配の原則に基づき行動することが求められる」と国際法順守を求め、けん制した。

 北朝鮮の核・ミサイル開発には、一月に行った四回目の核実験を踏まえ「核兵器の小型化・弾頭化の実現に至っている可能性も考えられる」と分析。弾道ミサイル発射など軍事活動全体が、わが国だけでなく地域・国際社会の安全に「重大かつ差し迫った脅威だ」とし、表現を強めた。

 三月に施行された安全保障関連法に関しては、新たに章を設け、法制定の経緯や必要性を解説した。

◆「幅広い合意で成立」

 安全保障関連法成立後初となった二〇一六年版の防衛白書では、二十ページを安保法の全体像や経緯の解説に充てた。「幅広い合意を形成した上で成立した」と正当性を強調する一方、集団的自衛権の行使容認に大多数の憲法学者が違憲と指摘し大規模な反対デモが行われたことや、国民に安保法反対の声が根強いことなどには触れなかった。

 安倍晋三首相ら政府・与党が繰り返し述べてきた見解の踏襲が目立った。経緯では、衆参両院で計約二百十六時間行われた審議を「戦後の安保関係の法案審議で最長」と指摘。「与党のみならず野党三党の賛成も得た」と紹介した。

 本文以外に十本の「解説コラム」も掲載した。「日米同盟の抑止力を向上させることにより、わが国に脅威が及ぶことを未然に防ぐ」と米軍への支援強化を意義づけ。「戦争に巻き込まれるリスク」については「意に反して他国の戦争に巻き込まれることは決してない」とし、「自衛隊員のリスク」は「極小化する努力を行う。これはこれまでと変わらない」と主張した。「徴兵制」は「今後とも合憲になる余地はない」と否定した。

 審議時間については、安保法が十一本の法案を二法案にまとめ一括審議したため、野党側が「一本当たりの審議時間はわずか」と批判していた。防衛省の西田安範審議官は白書の記述について「客観的な事実を書いた」と説明した。 (横山大輔)

 

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