Antony Currie
[ニューヨーク 1日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 1日に正式発表されたテスラ・モーターズ(TSLA.O)によるソーラーシティ(SCTY.O)買収計画には腑に落ちない印象が付きまとう。
少なくとも電気自動車業界の先駆者であるイーロン・マスク氏は買収の条件や手続きの面でベストを尽くしている。価格は26億ドルと予想より低く、両社の取締役会も役目を果たしている。しかしそれでもなお今回の買収は、重大な時節に差し掛かっているテスラに混乱を生むリスクがある。
事業構造面ではある程度筋が通っている。米国最大級のソーラーパネル設置業者が、テスラの抱える自動車、住宅、企業、公益産業向けの電池事業としっかりと結びつく。両社にはセールスやマーケティング、機器の設置やサービスなどの分野で重複があり、年間1億5000万ドルのコスト削減が見込まれる。
買収価格にも無理はない。この業界は成長が急なため評価は難しいが、両社がいずれも赤字で実質的に税金を払っていないことを勘案すると、合併による相乗効果が10倍ならばソーラーシティの企業価値は理論上15億ドルとなる。これはテスラの提示額の3分の2に相当する。
しかしテスラは2018年に年間販売台数を50万台に引き上げるという目標を掲げている。これは昨年実績のほぼ10倍。とりわけ目標未達の常習者であるテスラにとっては実に遠大な数字だ。ソーラーシティを取り込めば家庭用充電機器設置が増えるかもしれないが、ソーラーシティも自らの課題を抱えており、経営陣はこうした問題に時間を割かれ、テスラの狙いがぼやけてしまう可能性がある。
両社間の血縁や友人関係面でのつながりが買収の動機をめぐる懸念を引き起こしているのはこのためだ。マスク氏は両社の会長を務め、両社株の約20%を保有しており、利益相反の可能性がある。またマスク氏のいとこのリンドン・ライブ氏はソーラーシティのCEOだ。
両社の社外取締役は計画を承認しており、今後は各々の非利害関係株主の承認を取り付ける必要がある。ソーラーシティは45日間にわたりテスラを上回る条件を提示する身売り先を探すことが可能で、関係筋によるとマスク氏はその場合にはソーラーシティの自らの持ち分について、より条件のよい身売りに賛成すると言明している。賞賛に値する態度だ。
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