仕掛け人はエンジニア「下北沢サウンドクルージング」--"街×音楽"取り組みの意義とは

2016.08.01 16:00

DE DE MOUSE、DOTAMA、ゆるめるモ!など幅広いジャンルのアーティストが下北沢の街に集結する一夜、下北沢サウンドクルージング。 下北沢の複数のライブハウスを行き来でき、朝まで遊べるイベントとして注目を集めている。 今年で5回目となったそんな下北沢サウンドクルージングの仕掛け人・kawanishi氏の職業は意外にもエンジニア、いままで自分が音楽を通して得た出会いや経験をもとに、新たな文化を作ろうと動き出した。

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kawanishi氏

■カラオケやテーマパークに行く感覚で、クラブやライブハウスに遊びに行く文化を

--下北沢サウンドクルージングを始めたきっかけは何ですか?

k:
自分が下北沢のクラブやライブハウスによく行っていた当時と比べて、風営法が厳しくなったことも影響して最近音楽シーンが盛り上がっていないなと感じるようになって、何か自分でアクションを起こしたいと思うようになりました。 今ってイケてるシーンはあるけどカルチャーがなかなかないなって感じることが多いんです。 だから、カラオケやテーマパークに行く感覚でクラブやライブハウスに遊びに行く文化を作りたかった。長い時間をかけてビジネスとしてのスタートではなく、面白いことに人が群がるのを待とうという思いで2010年に第一歩を踏み出しました。

下北沢サウンドクルージング2016フライヤー

--下北沢での開催を決めた理由は何ですか?

k:
一つ目は自分が馴染みのある街だったからです。そして二つ目は街全体が音楽に身近で、一つ一つのライブハウスの距離が近いこと。実際に下北沢によく足を運ぶ人は音楽好きな人が多いので、音楽イベントを受け入れてくれる環境がありました。

--ライブハウスに与えている影響は?

k:
まず一つ目は、下北沢サウンドクルージングに参加することで行ったことのないライブハウスに足を運ぶきっかけになります。実際にお店側からも、イベント後に定着化したお客さんもいるという声が届いて嬉しい限りです。 二つ目は無名のバンドが下北沢サウンドクルージングを通してたくさんの人に知られるようになって売れてきたときに、そのライブハウスから出たという価値が確実にあると思います。だから、今後"来る"であろうアーティストを発掘するのも僕らの大切な仕事です。

kawanishi氏

--今後流行りそうだなという出演アーティストは?

k:
もちろん出演者全員、アーティストとしての魅力を感じてブッキングしているのですが、中でも個人的に注目しているのは、TENDOUJIやJABBA DA HUTT FOOT BALL CLUB、今年フジロックの「ROOKIE A GO-GO」に出演したyayelですね。 今後きっとなんらかの形で広まっていくであろうと期待しています!

JABBA DA HUTT FOOTBALL CLUB

kawanishi氏の言葉の中に登場した、TOKYO HEALTH CLUBなどが所属するOMAKE CLUBからリリースしたフリーEPが注目を集めている4MC+DJ RyuZombie のラップクルーJABBA DA HUTT FOOTBALL CLUB。国民的ラップクルーを目指す彼ら。これまで下北沢サウンドクルージングのステージに二度上がっている。 「下北沢サウンドクルージングが開催されたことで、下北沢という街全体がより面白くなっているのを肌で感じることができた。音楽を楽しんでいる人で溢れる街を歩くだけでも楽しかったし、普段自分たちには興味を示していなかった人たちがパフォーマンスに食いついてくれている姿がとても印象的で最高でした。バカ明るくて、エンターテインメントを提供できて、なにより初めて見る人を楽しませることのできる自分たちの強みが、下北沢サウンドクルージングには合っていたと思います」と語ってくれた。

「 Revenge For Summer Part.2 / JABBA DA HUTT FOOTBALL CLUB official MV」

--2016年の下北沢サウンドクルージングを終えて、成果と反響は?

k:
実際にお客さんや音楽好きの方々に「下北沢サウンドクルージング」というイベント名が通じるようになって、やっと知名度が上がってきたなという感覚が芽生えたのは5回目である今回が初めてです。 今年は2500人の方々に来場していただきました。どこも満員状態でお客さんからも出演者からも熱気を感じられました。 今年の下北沢サウンドクルージングの締めくくりとして、8月11日(木)に代官山UNITにてアフターパーティーを行います。サウンドクルージングにはかかせないゆかりのアーティスト4組が出演する予定ですので、よろしければ遊びにきてください。

下北沢サウンドクルージングアフターパーティー

■パーティーを通して、日常の延長線上で音楽や人に出会って欲しい

--最終的に目指しているイベント像はありますか?

k:
「フェスのようになりたい」とかはないです。 これまでも約10年間パーティーをやってきた身として、一つのパーティーを作り上げるのに何人もの人やコミュニティーが関わっていて、そこには奇跡のような出会いがたくさん生まれるということを実感してきました。だから、パーティーを通して日常の延長線上で音楽や人に出会って欲しいと思うようになったんです。今はインプットしたものをアウトプットしていく作業中です。 僕は下北沢サウンドクルージングを大きいフェスの縮小版だとは思っていません。特別じゃなくていいから、普段やっているパーティーがいくつも集まって新しい出会いが生まれて、少しでも音楽というカルチャーが盛り上がればいいなという思いでやっています。

--今後の目標は?

k:
個人の目標としては、常に現状維持ではなくさらにおもしろいことを取り上げていきたいです。だからこそインプットをするために新しいバンドも聞いていきたいです。最近は本当にたくさんのいいアーティストが生まれていて、目が離せないので! 下北沢サウンドクルージングとしての目標は、いつかもっと演者とお客さん、人と人が近いパーティーを作ってより一層音楽と日常が近いものにすること。さらにそれがスペシャルなものではなく日々のなかに根付いて欲しいと思っています。 きっと今もどこかに、がむしゃらに誰かに自分の音楽を伝える場を手にいれたいと思っている人は沢山いるはずです。だから僕は下北沢サウンドクルージングを通してそんな場を提供し続けたいなと思っています。

取材・文:見﨑梨子(みさきりこ)

1993年生まれのフリーライター。青山学院大学総合文化政策学部に在籍。『SENSORS』をはじめ複数の媒体で記事の執筆・編集に携わる。DJとしての一面もあり、東京都内の様々なクラブで活動中。
Facebook:https://www.facebook.com/riko.misaki

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