英国のテリーザ・メイ首相はフランスのフランソワ・オランド大統領と会談し、イングランド南西部サマセットのヒンクリーポイントに原子力発電所を建設する新プロジェクト(総工費180億ポンド)について決断を先送りする計画を説明した。その際、メイ氏はフランスと中国が出資するこのプロジェクトが英国の利益にかなうかどうか結論を出すまでに、時間が必要だと述べた。同氏はこのことを、自分の「やり方」と呼んだ。
メイ氏の決断は、原発の建設を望むフランス電力公社(EDF)をあぜんとさせた。メイ内閣の一部の同僚も蚊帳の外に置かれた。ダウニング街10番地(英首相官邸)の新たな主がどう仕事を進めるのか、ヒンクリーの決断が物語るものは何だろうか。
■内輪でしっかり固める
メイ氏は最も信頼する側近とともに問題に取り組むことを好む。そして誰より信頼しているのが、内務省でともに働いた共同首席補佐官のニック・ティモシー氏とフィオーナ・ヒル氏だ。
ヒンクリーに関する先週の決定を受け、ある閣僚は「国を運営しているのは、首相とあと2人の人間だけだ」と語った。財務省でインフラ・中国問題を担当するジム・オニール政務次官は、首相の決断を知らされもしなかった。
メイ氏の秘密主義のアプローチは内相を務めた時期に培われたもので、同氏が何をしているのか、首相官邸が何も知らされないことがままあった。この流儀をダウニング街に持ち込めば、同僚を遠ざけることになりかねない。
フィリップ・ハモンド財務相は先週、中国でBBCにこう語った。「EDFが早く結論を出せること、そして我々がこのプロジェクトを進められることを期待している」
メイ氏の支持者らは、ハモンド氏は最初に首相に相談すべきだったと言う。首相は出だしから、誰がボスなのかをはっきりさせている。
■オズボーン時代の終わり
メイ氏は首相に就任する直前に、ジョージ・オズボーン財務相を痛烈に批判した。数日後には、財務相を解任した。
メイ氏は中国に言い寄るオズボーン氏の態度に懐疑的だった。イングランド北部の一地域だけに権限を移譲する同氏の政策を批判し、「抜本的な経済改革」を実行できなかったこと嘆き、2020年に財政を黒字転換させるというオズボーン氏の目標を放棄した。
オズボーン氏は内閣でメイ氏とうまく付き合ったためしがない。メイ首相はオズボーン前財務相の仲間の多くを政府から追放しただけでなく、同氏の政策のレガシー(遺産)をも取り除いている。
■安全保障上、中国の原発に用心
オズボーン氏は昨年、中国各地を回り、英中間の緊密な関係を示す「黄金の10年」の始まりを約束した。その一つが、イングランド沿岸部に中国が独自の原発を建設することを認める約束だった。