北朝鮮ではこれまで4回核実験が行われたが、それに伴う放射能の流出は検出されていない。北朝鮮で地下核実験が行われた直後、韓国と米国の情報機関は周辺で不活性ガス(キセノンやクリプトンなど)は検出されなかったとしている。しかし放射性物質が核実験場周辺の地下水や土壌などを汚染し、吉州郡住民に健康被害を及ぼしている可能性は十分に考えられる。統一研究院の金泰宇(キム・テウ)前院長は「北朝鮮は地下核実験を行った坑道から放射性物質が流出しないよう、9重の遮断ドアと3重の爆風遮断壁を設置した。しかし強い放射能は短期間ではなくならないため、周辺の土壌や地下水などを汚染し続けていることは十分に考えられる」との見方を示した。
また豊渓里は中朝国境からわずか100キロしか離れていないことから、中国も北朝鮮の核実験に伴う環境汚染を懸念している。中国国際問題研究所のヤン・シウィ研究員は2013年の3回目の核実験直後から「豊渓里では核実験が3回も行われているので、放射能による地下水の汚染は深刻な問題だ」と指摘してきた。とりわけ吉州郡は核実験が行われた豊渓里の万塔山から流れ出す水が集まる地形になっているという。
上記の吉州郡出身の脱北者たちによると、現地住民の多くは核実験場から12キロほど離れた貯水池の水を飲んでいる。また被爆の恐れがあることから、核実験場の工事には政治犯収容所の収監者らが動員されているとも伝えられている。北朝鮮の内部事情に詳しい消息筋は「吉州郡近くの化城郡にある16号政治犯収容所の収監者が坑道の工事に動員されているという情報もある」と明らかにした。
脱北者らは1-3回目の核実験当時の現地の様子についても証言している。2006年の最初の核実験では数秒にわたり弱い地震を感じただけだったが、2回目では家が揺れて窓ガラスが割れたケースもあり、3回目の時は棚の器が落ちるほど強い揺れを感じたという。これは核実験の規模が回を重ねるたびに強くなっていることを示している。
脱北者で統一ビジョン研究会の会長を務めるチェ・ギョンヒ博士は「4回の核実験は全て同じ場所(豊渓里)で行われたが、周辺の環境問題や住民の健康被害についてはこれまで全く関心が持たれなかった」「寧辺の核施設と豊渓里の核実験場周辺における住民被ばく問題は、統一後にわれわれが解決すべき大きな課題になるだろう」とコメントした。