若者やエリートの脱北が相次ぐ北朝鮮

 中国遼寧省東港市の水産物加工工場で働いていた北朝鮮の女性従業員8人が今年6月末、集団で逃げ出していたことがわかった。読売新聞が複数の中朝関係筋の話として29日に報じた。

 今月16日に香港の韓国領事館に逃げ込んだ北朝鮮の18歳の男子学生は、香港で開催されていた国際数学オリンピックの銀メダリストで、金メダルを取れなかったことへの精神的プレッシャーが脱北動機の1つだったことがこの日までに伝えられた。また今年4月に中国国内の北朝鮮レストランから集団で逃げ出した12人の女性従業員と同じく、今回中国の工場から逃げ出した女性8人も、その多くが20代から30代の比較的若い年代だ。上記の関係筋は「北朝鮮の若い世代は、上の世代のように体制の圧力に対して無条件で我慢するようなことはせず、脱北などの方法で個人的に抵抗を試みるケースが多い」との見方を示した。北朝鮮の若い世代は配給ではなく市場などを通じて自分の力で生きてきたこともあり、平壌の北朝鮮政府に対する忠誠心が上の世代ほど強くはないようだ。

 読売新聞は「土地カンのない従業員らが自力で逃走するのは難しく、脱北ブローカーなどが手引きした可能性がある」とも伝えた。また同紙によると、北朝鮮当局は調査のため関係者を工場に派遣し、従業員や監視役の要員など100人以上を北朝鮮に召還したという。韓国政府の関係者は「今回逃げ出した8人の女性たちはまだ韓国に来ていない。中国で行方がわからないとなれば、すでに北朝鮮に捕らえられたか、あるいは第三国に行ったことも考えられる」とコメントした。また韓国の脱北者団体の関係者も「8人を韓国に連れてくるため、今月初めに現地に担当者を派遣したが、行方を突き止めることはできなかった」と明らかにした。

 中国国内の関係筋によると、今年4月に中国浙江省寧波の北朝鮮レストランから12人の女性従業員が集団で脱出し、韓国に向かったというニュースは、中国国内の北朝鮮労働者の間でもすでに知られているが、この知らせは特に若者たちを刺激した可能性が高いという。読売新聞は「北朝鮮当局は海外に派遣した労働者の監視要員を増やし、国に対する忠誠心を高めるための思想教育にも力を入れているが、それでも脱出はとどまる所を知らない」とも伝えている。つまり北朝鮮が監視要員を増員した背景には、海外労働者の統制を強化するねらいがあったようだ。

 香港の韓国領事館に逃げ込んだ北朝鮮の男子学生は、今月6-16日に香港科学技術大学で開催された第57回国際数学オリンピックで銀メダルを獲得していた。この大会で北朝鮮は6人の男子学生を出場させ、金メダル2個、銀メダル4個の成績で総合6位に入った。北朝鮮の内部事情に詳しい消息筋は「逃げ出した学生は4人の銀メダリストの中の1人だ。にわかに理解し難いが、彼は金メダルが確実視されていたにもかかわらず銀メダルに終わったため、非常に強いプレッシャーを感じていたようだ」と明らかにした。この学生の両親は北朝鮮で数学の教師をしているという。

 この消息筋はさらに「北朝鮮で海外労働者として派遣されるには、まず何よりも北朝鮮で身分が確実で、なおかつ若くなければならない」「中国国内で北朝鮮レストラン従業員と工場で働いていた労働者が逃げ出したのに続き、今回数学が得意な学生まで脱北するなど、比較的若い層の脱北が相次ぐのはこれまでになかったパターンだ」などとも述べた。ちなみに金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の時代になってから脱北者の数は一時減少していたが、今年に入って再び増加に転じている。韓国統一部(省に相当)によると、今年5月末までに韓国にやって来た脱北者は590人以上で、昨年の同じ時期に比べると16%も多い。上記の韓国政府筋は「脱北者が再び増加に転じる中、北朝鮮政府の高官が脱北者したという話も最近になって伝えられている。この情報はまだ確認されてはいないが、北朝鮮のエリートや若い世代による脱北が続いていることは間違いないようだ」とコメントした。

アン・ヨンヒョン記者 , 東京=チェ・インジュン特派員
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