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新学習指導要領 消化不良起こさぬよう

 ほぼ10年おきに行われる小中高校の学習指導要領改定の作業が進められている。2020年度の小学校から中高と年を追って新要領になる。

     文部科学省が1日示した中間的な審議のまとめによると、小学校5、6年生で英語を正式に教科にし、高校では国語、地理歴史などで総合的な新科目を創設する。

     急速なグローバル化など時代状況に応じて「何を教えるか」だけではなく、「どう教えるか」も強調したのが特徴だ。児童生徒が主体的に多様な意見を交わしながら課題を見いだし、解決するような「アクティブ・ラーニング」である。

     大きな変化といえよう。学校現場には戸惑いが少なくない。上意下達のお仕着せで消化不良にならない共通認識作りや環境整備が必要だ。

     08、09年に改定された今の指導要領の主眼は「脱ゆとり」であり、減らされていた学習項目や授業時間を復活させた。

     今回はその上に、小学校では週1時間(単位時間45分)である5、6年生の「外国語活動」が英語教科化で2時間になることなどにより、年間総計で140時間増える。

     これをどうひねり出すか。

     審議まとめは、授業を15分に3分割したり、土曜日を活用したりするなど、「効果的な創意工夫を」と提起する。しかし多くの学校は現行指導要領で時間割はいっぱいである。どう折り合いをつけるか。丸投げというわけにはいかない。

     また、各校に中心的教員を置くなどする、英語教育の専門的な人材確保の見通しも不透明だ。

     高校は大学教育との接続や入試改革に対応して科目を大幅に再編、日本史・世界史を合わせ近現代史を学ぶ「歴史総合」や、社会形成の主体性を育てる「公共」などを設ける。

     高校の「歴史総合」も「公共」も世界や社会の事象に深くかかわることだけに、これまでにない準備や情報交換なども必要だろう。

     改革は共通の認識が持てるかが成否のカギになる。かつて教科横断的な「総合的な学習の時間」を導入するに際し、現場に十分な共通理解が得られず、一部で形骸化し、受験勉強に転用された例もあった。

     指導要領が「ゆとり」から転換する時も、なぜ「ゆとり」が十分な成果と支持を得なかったか、本格的な検証はなされていない。

     今回示された改革の方向は、新たな可能性は持っている。しかし多忙な現場の実情などに照らし、一方的な導入にならぬ入念な工夫がいる。

     文科省はこの改定で「学校の中に閉じない、社会につながる教育課程を」と意気込むが、現場に立脚した視点がまず肝要である。

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