二階自民幹事長 「安倍一色」から脱却を
党の要の変更である。安倍晋三首相は内閣改造、自民党役員人事の焦点だった党幹事長人事で、二階俊博総務会長をあてることを決めた。
安倍内閣の下で官邸主導が強まり、党の発言力は低下している。党内も「安倍一色」となり、多様さを失いつつあるのではないか。新幹事長として少数意見にも配慮したバランスある党運営と、活発な議論をこころがけるべきだろう。
3日に予定される人事で首相は麻生太郎副総理兼財務相、菅義偉官房長官を留任させるなど、政権の骨格を維持する考えだとみられる。
幹事長人事も首相は谷垣禎一氏を続投させたかったようだが、自転車運転中の事故で頸髄(けいずい)を損傷する不慮の事態で困難になった。参院でも改憲派が3分の2以上を占め、首相は憲法改正に向けた議論を加速させる意向だ。与党内ににらみがきき、野党にも人脈を持つ二階氏に調整役の手腕を期待しての起用だろう。
二階氏は衆院当選11回、経済産業相などを歴任したベテランだ。いったん小沢一郎氏と行動をともにして離党したが2003年に復党し、二階派を率いている。世襲の国会議員や官僚OBとは異なり、和歌山県議からスタートした今や数少ないたたき上げの「党人派」だ。
新幹事長として、党外交の分野で独自色の発揮が期待できる。二階氏は中国、韓国など近隣諸国との関係が深いことで知られる。
昨年5月には訪中団を率い、習近平国家主席と面会するなど、日中関係改善の地ならし役を務めた。政府と中韓両国に目立ったパイプが無い中で、二階氏が果たせる役割は小さくあるまい。
党運営も注目される。集団的自衛権行使を容認する憲法解釈の変更をめぐり、自民党内では議論がほとんど起きなかった。タカ派のイデオロギー色が強い安倍政権の下で、かつての自民党のように異論を認め合う党風が失われつつある表れだろう。穏健な保守主義の立場から党内の幅広い議論をリードすべきだ。
一方で、懸念もある。二階氏は開発行政を重視し、国土強靱(きょうじん)化政策を強く推進してきた。これが「アベノミクス」で首相が進める積極財政と重なり、公共事業に予算は重点配分されている。幹事長就任でこうした傾向に拍車がかかるのではないか、との見方が早くも出ている。
自民党は甘利明前経済再生担当相、小渕優子元経済産業相らが閣僚辞任に追い込まれた「政治とカネ」の問題も抱えている。国会で政治資金の規制強化や透明化の議論が進むかは自民党の対応次第だ。きちんと改革に取り組むことで「古い自民」に逆戻りしない姿勢を示すべきだ。