7月31日、元横綱・千代の富士として1970年から引退する91年まで圧倒的な強さを誇った土俵の英雄、九重(ここのえ)親方が膵臓(すいぞう)がんのため逝去した。61歳の若さだった。
九重親方が全盛を振るった横綱在位時代とほぼ重なる時期に「週刊少年ジャンプ」で『キン肉マン』を連載し続けた漫画家・ゆでたまごの原作担当・嶋田隆司先生は、この訃報を受け「僕らの漫画に出てくる“ウルフマン”という超人が生まれたのは九重親方の存在あればこそ。まだまだ若いのに信じられない」とショックを隠しきれない様子で、生前に深めた親交に想いを馳せながらこう語った。
「ウルフマンの名前の由来はもちろん、当時最強の横綱として活躍されていた千代の富士関のニックネーム“ウルフ”にあやかったものです。
『超人オリンピック ザ・ビッグファイト』というシリーズで、キン肉マンと同じ日本代表超人のライバルとして登場させ一躍、大人気キャラクターになりましたが、それは当時の千代の富士関がすでに全国の子供たちにとって最強のヒーローだったから、という下地が世の中にあってのことでした。
やがて1983年に『キン肉マン』がアニメ化された際に、関係各社の自主規制でアニメ内では“リキシマン”という名に変更されたんですが、のちに九重親方に直接お会いした際、『なぜ名前を変えてしまったのか。ウルフマンのままでよかったのに』と私どもに自らおっしゃっていただいたことがあり、非常に感動したのを覚えています」