今夜は海難事故の最前線に立ち向かう海上保安官たちの姿を描き大ヒットを記録した…
第十管区機動救難隊の仙崎大輔らは巨大天然ガスプラントで発生した大規模火災の鎮圧に向かうがそこに超大型台風も接近し絶体絶命の窮地に
様々な思いが交錯する中…
(大輔)よしっここだな。
(吉岡)ええっ?ここ?いいんだよ俺がいいって言ったらいいんだよ。
早くカメラ早く!いいか?はいどうぞ。
行くぞ!よしっ。
お前にチェックイーン!
(大輔)何やってんだ吉岡。
早く撮れよ早く。
(吉岡)つまんない。
もっとガーッと来てくんないと大輔さん。
つまんないってお前。
もっとガーッと!ガッとな!はいっ!行きますよ!お前にチェック…。
イーン!
(シャッター音)ブブ…ブレたブレた。
もう1回もう1回もう1回。
うっせえな。
早く撮れよ。
いやいやいやガッと来るからね。
お前が言ったんだろ。
行くぞ。
お前にチャックイーン!いやいやいや。
今完全に「チャックイン」って言いましたから。
関係ねえだろ。
早く撮れよもう。
ってゆうかやっぱ先に音から録りません?それでは参ります。
お願いします。
いきます。
はい。
3・2・1降下!えーテステステスト。
いやいやいや本番本番。
(松井)こちらMH908。
現場まであと70マイル。
現在北北東の風10メートル。
視程4km。
雲高500フィート。
(エレベーターの到着音)
(下川)現時点の投入勢力は?
(柏原)巡視船6隻航空機4機。
特救隊2個隊。
七管および八管の機動救難隊。
韓国海洋警察庁3部隊も。
(青木)東アジア海洋石油開発の方たちが到着しました。
(保安官)十管機動救難隊10分前に航空基地を出ました。
(下川)台風の最新進路予想図くれ。
(松井)こちらMH908。
強い雨雲のエコーがあるがこのまま突入する。
(通信士)「ちくぜん」了解。
なお現場の気象海象は…。
(加藤)すいません。
ちょっと通ります。
(加藤)ACユニットの資料どこですか?
(松浦)サーバーにアップしてるよ。
(村上)おい近野ソウル支社に確認取ったのか?
(近野)ああ今します。
(遠藤)間もなくデータがリアルタイムでアップロードされます。
(青木)われわれの方でも共有させてもらいます。
(SP)外務省領事局長到着いたしました。
(通信士)こちら「ちくぜん」1550時点で確認できた重傷者16名。
軽傷者38名。
どうぞ。
(松井)重傷者16名。
軽傷者38名。
了解。
(通信士)なお台風の移動速度が上がり40分後に現場海域が暴風域に入る見込み。
以上。
(北尾)現場40分後に暴風域突入。
(隊員たち)了解。
桜木さん。
これに履き替えてもらいます。
失礼します。
(桜木)自分でやります。
やります。
ヘリから降りたらわれわれから離れないでください。
はい。
お願いします。
(柏原)韓国海洋警察庁も現場に到着しました。
十管機動救難隊は5分後に到着予定。
(下川)分かった。
(青木)遠藤さんも。
(遠藤)はい。
首相官邸にお願いします。
2分で着きますから。
(遠藤)はい。
(松井)現場上空まであと3マイル。
(通信士)レガリアの救命いかだ全て離脱したことを確認。
これよりヘリによる巡視船へのピストン輸送に切り替える。
取り残された作業員をヘリデッキへ誘導せよ以上。
(通信士)「やまくに」警救艇了解これより救助に向かう。
(松井)間もなくレガリア上空。
でけえ。
あれがレガリア…。
(松井)ノーマルランディングの経路上に乱気流があるためスティープアプローチに切り替える。
少し揺れます。
(北尾)着陸後塚本と石田は要救助者の誘導。
(塚本・石田)了解。
(北尾)仙崎と吉岡は桜木さんから離れるな。
(大輔・吉岡)了解!
(通信士)こちら巡視船「ちくぜん」本船船尾スクリュー付近救命いかだ接近中。
急ぎ対応せよ。
(北尾)間もなくヘリ離発着の限界暴風域に入る。
25分後1620には必ず戻れ。
(隊員たち)了解!降りますよ。
(北尾)頭下げてください。
どうぞ気を付けてください。
吉岡。
はい。
急いで。
(ざわめき)通してください。
すいません。
(北尾)通してください。
通してください。
通してください。
通してください。
下ります。
頭気を付けて。
気を付けてください。
石田塚本。
このフロアの誘導の応援に当たれ。
(石田・塚本)了解!
(北尾)十管隊長の北尾です。
仙崎です。
吉岡です。
東アジア海洋石油開発の桜木さんをお連れしました。
火災はどうなりました?
(曽賀)ほぼ鎮火しつつあります。
バラスト排水は?
(曽賀)今のところ順調に稼働しています。
台風が来る前にこのレガリアをスリープモードにします。
火は完全に消してください。
お願いします。
(吉岡・大輔)はい。
あの方がこのレガリアの…。
(北尾)設計者です。
(韓国語の会話)
(山路)こちら韓国海洋警察庁のパク隊長です。
(韓国語の会話)
(山路)「このプラントは広くて複雑過ぎる」と。
とにかく避難を急がせましょう。
(技術者)Justgood.
(桜木)OK.Let’sgetsstartit.ここはわれわれに任してお二人は行ってください。
いえそういうわけにはいきません。
Areyouready?
(技術者)Ready.One,two,three.
(開錠音)
(桜木)あなた方はとにかく火を消してください。
われわれの任務は桜木さんを無事に帰す…。
(桜木)こっから先は立ち入り禁止です。
えっ?桜木さん。
あと20分しかありませんから!・
(桜木)火を消して!ええーっ!
(女性)誰か助けてください。
ケガをして動けない人がいます。
(女性)東側のローデッキです。
誰か助けに来て!東側ローデッキ。
(女性)誰かお願いします。
15分で戻るぞ。
はい!
(三島)皆さん落ち着いてくださーい!次のヘリはすぐに来ますからここで待っててくださーい!
(遠藤)このレガリアは天然ガスを海底からくみ上げて不純物を取り除き純粋なガスを生産する海に浮かぶプラント施設です。
ここにはガス貯蔵タンクタンカーへの給油施設のほか作業員300人の居室食堂…。
(吉森)施設の説明はいいから事故の概要。
はい。
(遠藤)今回の事故は井戸の修復作業のためにレガリアの近くに滞在していたドリルシップが高波にあおられて舵が取れないままレガリアの東側に激突したと考えられます。
現在ドリルシップは船首部分が水没しレガリアの南東に接触したままの状態になっています。
(ため息)これまで同様の事故は?
(下川)海上石油プラントの事故は日本では過去に例がありません。
われわれ海上保安庁にとっても初めてのケースです。
(下川)これは1988年にノルウェー沖で起きた天然ガスプラントの火災事故の写真です。
(どよめき)
(下川)現在この事故データを取り寄せそれを参考に対策を立てています。
火災は消火できたんですか?避難経路をふさいでる火は鎮火しました。
(吉森)他は?
(下川)現在消火活動中です。
台風が近づいてます。
大丈夫ですか?ええ。
(下川)まず現場海域が暴風域に入る前に全員退避を完了させなければなりません。
(吉森)そんなことを聞いてるんじゃない。
レガリアを台風の中に置き去りにするんでしょ?破損した状態で。
レガリアを設計された東アジア海洋石油の桜木さんという方が今現場に。
台風に備えて生産システムをロックします。
(吉森)じゃあ大丈夫なんですね?レガリアは。
ですが事故の影響でどういうことになっているのかこちらでは把握できておりませんので…。
(吉森)下川さん。
レガリアが日韓共同で開発した施設だということはご存じですね。
(下川)はい。
(吉森)ロシアからも技術提供を受けてるということも。
(下川)知ってます。
(吉森)レガリアは国家規模の重要なプロジェクトです。
何としてもあの施設は守ってください。
(下川)最大限の努力はします。
(吉森)努力じゃ駄目なんだ。
何よりも最優先させるのは人命救助です。
(吉森)そんなことは分かってる。
しかし国益を守るのも海保の仕事だ。
そうでしょ。
とにかく火災を全て消火し台風に備えて万全の状態にしてください。
ケガをしているのはどなたですか?
(夏)ここにもう1人いるんです。
(久米夫)あの…足の骨折っちゃって動けないんです。
今行きますから落ち着いて待っててください。
要救助者3名うち1名は自力で動けない。
つり上げ救助する。
了解!ロープ結束しました。
了解。
あとの2人は自力で行けそうだから北側階段で逃がす。
ケガ人は自分が運びます。
よーし。
ロックよし。
カラビナ安全管よし。
降下地点よし。
降下準備よし!降下!降下!着!OK!
(夏)黒田さん。
助けが来ましたよ。
(久米夫)クロさん。
もう大丈夫っすよ。
海上保安庁です。
分かりますか?
(黒田)はい。
この処置は?西沢先生が。
お医者さんなんですか。
(夏)ここの常駐医です。
常駐医…。
脛骨がずれてますんで気を付けて運んでください。
分かりました。
(石田)誰かいますか?
(塚本)いたら返事してください。
下にもフロアがある。
(塚本)えっ?
(石田)どうやって下りるんです?
(北尾)もう一度上に戻って発電施設を抜けていくぞ。
(石田・塚本)はい!引けー!引くー!黒田さん。
引けー!頑張れクロさん!よーし!引き込み完了!OK。
吉岡。
はい。
(久米夫)クロさん。
その方をヘリデッキまで運べるか?行けます!了解!危ないですよ下がって。
じゃあな吉岡。
後でな。
はい!大輔さん。
(夏)久米夫君。
早く。
(久米夫)あっはい。
待って。
僕が誘導します。
大丈夫です。
ヘリデッキに上がる道は分かってますから。
急いでください。
(松浦)まだスリープモードに切り替わらないのか?
(村上)操作中みたいです。
(柏原)救難課長。
261名の避難は完了しました。
残りは?
(柏原)67名です。
現場の気象海象は?
(オペレーター)風速42ノット。
波も4mまで上がっています。
ヘリ離発着の限界暴風域まであと10分です。
「ちくぜん」につないでくれ。
(オペレーター)つなぎます。
対策本部より指揮船「ちくぜん」へ。
残り10分以内に全員の避難を完了させろ。
(通信士)暴風域接近のためヘリによる輸送はあと10分が限界。
(通信士)要救助者のヘリデッキへの誘導を急げ。
(山路)北側および西側エリアはコントロールルームを残して避難完了。
東側エリアの最終確認に行くぞ。
(隊員たち)はい!桜木さんも早く。
(桜木)バラスト排水の最終チェックがまだです。
桜木さん暴風域に入る前にヘリで逃げないと。
時間がありません。
レガリアをこのままにしてくわけにいかない。
(久米夫)うわっ。
(夏)久米夫君。
(村上)ああっ。
(近野)レガリアの稼働データが…。
何!
(村上)ラインがシャットダウンしました。
(男性)東側アッパーデッキで転倒により作業員2名負傷。
繰り返す。
桜木さん。
何が起こったんですか?
(男性)南側メーンデッキで火災発生。
火災…。
桜木さん。
(開錠音)・桜木さん。
桜木さん。
ハァハァ。
・
(警告音)
(アナウンス)「Aftertheemergencyfirebarriershutsdown…」
(警告音)えっ…。
(夏)走って!桜木さん!下がって!桜木さん時間がありません。
(夏)あっ。
何で閉まんだよ?
(夏)こっち。
(久米夫)はい。
早く。
んっ!
(桜木)あっ。
・早く!桜木さん。
(服部)大丈夫ですか?ハァ。
桜木さん!
(桜木)大丈夫。
んっ。
(久米夫)ああいた!いた!まだいたんですか?ヘリデッキへのルートは?あっち!急ぎましょう。
・
(衝突音)
(夏・久米夫)あっ。
・
(衝突音)・
(衝突音)
(夏)キャーッ!
(桜木)何だよ…。
(久米夫)ハァハァ…。
・
(衝突音)
(夏)キャッ!危ない!
(夏)キャーッ!うっ!桜木さん早く。
早く!危ない!次のヘリで戻るぞ。
(石田)オーライ!爆発?
(青木)ええっ?何があったか報告させろ。
(オペレーター)はい。
(環菜)着いたよ大洋。
フフッ。
よいしょ。
ほっ。
おっフゥ〜。
んー。
こんにちは。
(女性たち)こんにちは。
カワイイ。
(環菜)こんにちは。
(女性たち)カワイイ〜。
(環菜)バイバ〜イ。
(環菜)お母さん?今帰った。
大洋?あっ今起きてるよ。
高速入ってねずっと寝てた。
ハァ…ただいま。
大輔君いるんでしょ?あれ?大輔君どこにいるの?「ダーッ」て…。
はいはい分かりました。
引けばいいんでしょ。
行くよ。
1・2・3ダーッ!
(クラッカーの音)
(環菜)おっ!フッ…。
(大洋のぐずり声)あっあっびっくりしたねびっくりしたね。
ごめんね。
ねえ大洋。
ちょっと大輔君。
(環菜)ねえもういいから出てきてよ。
大輔君?どこ?
(青木)レガリアに残っている人の名前が確認できました。
木嶋久米夫さん22歳男性作業員。
西沢夏さん27歳女性。
職業は医師。
桜木浩一郎さん45歳男性。
東アジア海洋石油開発社員。
レガリアの設計主任です。
(加藤)桜木さん…。
やっぱり残ってます。
予定ではすぐに戻るはず…。
(青木)それから七管機動救難隊の服部拓也と十管の仙崎大輔です。
(柏原)服部は24か。
(青木)潜水士になってまだ2年目です。
仙崎は?
(下川)6年目の隊員だ。
ご存じなんですか?巡視船「ながれ」に乗ってたとき俺の部下だった。
・
(オペレーター)救難課長。
内閣参事官の吉森さんからお電話です。
下川です。
(吉森)状況を教えてください。
現在巡視船4隻がレガリアの南南東1,200mの位置で監視してます。
その船は近づけないんですか?波が高くてレガリアには接舷できません。
下川さん。
930hPaの大型台風が近づいてきてるんですよ。
嵐が過ぎたらレガリアはめちゃめちゃになってましたじゃ済まないんです。
今すぐ隊員をレガリアに向かわせて台風に備えさせてください。
二次災害の可能性がある以上無謀な活動で隊員たちの命を危険にさらすわけにはいきません。
はぁ〜。
何のための海上保安庁なんだ。
・
(通話の切れる音)
(通信士)こちら巡視船「やまくに」風浪激しく保針困難。
これより現場離脱する。
(北尾)つり上げ救助しましょう。
ヘリはデッキの上に着けて。
(松井)風が強過ぎます。
(松井)風速60ノットを超えてるんです。
これからもっと強くなるんですよ。
チャンスは今しかありません。
無理です。
(北尾)自分たちをレガリアに降ろすだけでも構いません。
お願いします。
(内藤)レガリアには12万立方mもの天然ガスが満載されてるんですよ。
本当に何が起こるか分からない。
だからこそ応援に行かせてください。
(内藤)どんな状況かも分からない所に作戦も装備もなしに皆さんを送り込むことなどできませんよ。
(松井)隊長。
気持ちは分かりますがもうヘリの飛行は不可能です。
(通信士)開口部水密扉閉鎖。
各科台風に備え準備。
ヘリの格納を急げ。
仙崎さん。
こちら吉岡。
仙崎さん。
こちら吉岡です。
大輔さん。
応答願います。
聞こえてるよ吉岡。
出たよもう。
焦らせないでくださいよ。
そちらの状況を伝えてください。
今は食堂に集まってる。
全員ケガはないし取りあえず今は落ち着いてるよ。
これからどうなるんだ?俺たちは。
通常はレガリアの稼働データがリアルタイムで送られてくるそうなんですがそれが受信できなくなってます。
通信手段はわれわれのこの無線だけです。
そうか。
この天候じゃ救助には来られねえな。
はい。
台風が過ぎてからじゃないと。
台風はどこまで来てんだ?レガリアから南に50マイルの海上です。
たぶんあと4時間後ぐらいに一番近づくみたいっすね。
4時間後か…。
おう。
まあ波のわりに大して揺れねえしのんびりやり過ごすよ。
じゃあのんびり待っててください。
そのうちさくっと助けに行きますから。
分かった。
待ってるよ。
あと吉岡。
分かってます。
頼む。
だそうだ。
はい。
あっあの…。
何でそんな落ち着いてられるんですか?俺たち取り残されたんですよね?そういえば俺たち自己紹介がまだだったよな。
十管の仙崎大輔だ。
七管の服部拓也です。
お前彼女とかいんの?えっ…。
そそるなお前。
冗談だよ。
ノーマルだから俺は。
はあ…。
俺たちが顔ひきつってたらさあの人たちはもっと不安になるだろ。
いいか?服部。
ここにいる間は俺たちはバディだ。
バディ…。
よろしくな。
はい。
よし戻るぞ。
はい。
(環菜)はい。
はいどうもすいません。
ありがとうございました。
(環菜)どうも。
まったく…。
あれ?これって…。
「再生ボタン」?1・2・3…。
ダーッ!・
(音楽)わっ!・「チュルルル…」何?・「チュルルルチュチュ…」・「チュルルルチュチュ…」何これ?
(大輔・吉岡)・「チュルルルチュチュチュチューイエー」「環菜。
お前にチェックイーン!」フッ…こっから来てたんだ。
・
(大洋の泣き声)あっはいはいはい。
ああごめんね大洋。
起きちゃったねえ。
はいよいっしょ。
うーんびっくりしたね。
ねえ。
パパの歌下手っぴだね。
う〜んはいはいはい。
・
(環菜)はいあっはいはい。
よーしよし。
はいもしもし仙崎です。
・環菜さん。
吉岡です。
ああ吉岡君?大輔君はまだ帰ってこないんだけど。
・
(大洋の泣き声)えっ?
(久米夫)救助は来ない?台風が通り過ぎるまではヘリも巡視船も近づくことができません。
まあでも大丈夫です。
(久米夫)いやちょっと待って。
えっずっとここにいんの?じゃあもし…もし沈んだりしたらどうすんの?・
(桜木)沈まないよ。
レガリアが沈むわけないだろ。
君。
今までここで働いていて危ないと思ったことあった?
(久米夫)な…何で沈まねえって断言できんだよ?僕が造ったからだよ。
(夏)造った?東アジア海洋石油開発の設計主任さんなんです桜木さんは。
バラスト排水も完了してるんだ。
20m級の高波が来てもびくともしないよ。
でもドリルシップがぶつかったまんまじゃん。
・
(雷鳴)そもそも何でドリルシップがぶつかるんだ。
火災も爆発も全部それが原因じゃないか。
いや俺がやったんじゃねえし。
(桜木)あのときシャッターを閉めていなけりゃホント大変なことになってましたよ。
待って桜木さん。
シャッター閉めたのあなたなの?
(桜木)当然の判断でしょ。
(桜木)あのまま火災を放置して全員が逃げていたらいずれガスタンクに引火してレガリアは吹っ飛んでたよ。
おい!お前のせいで俺ら閉じ込められたんじゃねえか。
中に人がいんのに閉めるか?普通。
この野郎。
まず避難が先でしょう。
夏先生!このレガリアはね国家プロジェクトなんだよ。
韓国やロシアも金を出して1,500億も掛けて造られたんだ。
だから?
(桜木)「だから?」ハッ。
だから守らなきゃならないんだよ。
ここで産出される天然ガスは将来の日本の経済を支えるんだよ。
国の最重要施設なんだよレガリアは!どうしてそんなことも分からないのかな医者のくせに。
つまり人の命よりレガリアの方が大事?
(久米夫)俺らは死んでもいいのかよおい!そんなこと言ってないだろ。
やめましょう。
分かった分かった。
もうやめようなっ。
フッ…。
頭悪過ぎるよ。
(久米夫)あ?
(夏)どういう意味よ?インテリぶりやがってこの野郎。
(夏)あんた引っ込んでて。
痛っ…。
(服部)久米夫さん。
人の命が大事っていうのは間違ってんの?
(桜木)人はねそう簡単に死にゃしないんだよ。
死ぬわよ。
ストップ。
もう終わりです。
ここでケンカしても仕方ないでしょう。
ここにいるのは一緒に台風を乗り切る仲間なんです。
ごめんね久米夫君。
(久米夫)あの何で僕が…。
だから謝ってんでしょ。
・
(物音)
(物音)これ何の音だ?吉岡。
さっきからずーっと聞こえてんだよ。
いやこっちからは何も見えないんすけど。
ヤバい感じなんすか?ていうかよく分かんないんだよもう。
服部君はどうですか?潜水士になってまだ2年目だって聞きましたけど。
服部?お前の2年目のときに比べたら月とスッポンだよ。
えっ?俺がスッポン?大丈夫か?そいつ。
バーカ。
スッポンは駄目な方だろ。
いやいやいや何でですか。
スッポン鍋は超高級料理ですよ。
ああそっか。
じゃあお前が月であいつがスッポン?はっ?まあいいやそんなの。
とにかく服部は若いわりにはお前よりしっかりしてるよ。
勘弁してくださいよもう…。
あっそうだ。
さっき環菜さんに電話しときましたよ。
悪いことしちゃったなあ結婚記念日に。
そんなことは全然気にしてませんよ環菜さんは。
あしたパーッと5割増しぐらいでお祝いすりゃいいじゃないっすか。
今夜一晩乗り切ればいいんですからねっ?そうだよな。
あしたには帰れるんだもんな。
ドリルシップの乗組員で。
(鷲頭)ドリルシップの方ですね。
機械室にいたんでもう無我夢中で…。
(鷲頭)よかったですね助かって。
(乗組員)あっはい。
ただ…。
(鷲頭)「ただ」?
(オペレーター)気象庁より最新の台風進路予報入電。
メーンモニターに。
(オペレーター)切り替えます。
(どよめき)
(柏原)えっ…。
レガリアを直撃しますよ。
・
(青木)救難課長。
気になる報告が。
(下川)遠藤さん。
これどういうことでしょう。
「警告音」?「ドリルシップのキックコントロール」ってウェルコントロールのことだよな。
(松浦)ええ。
(近野)変ですねえ。
(青木)何が変なんですか?救難課長。
内閣参事官の吉森さんからお電話です。
下川です。
韓国政府とロシア政府が状況説明を求めてる。
外務省と国交省で文案詰めるから君も来てくれ。
今ですか?嵐が過ぎるまで何もできないんだろ君たち海保は。
(ため息)官邸に行ってくる。
何かあったらすぐ知らせてくれ。
(柏原)はい。
・
(物音)ずっと気になってたんですけど何で女医さんがいるんですか?
(桜木)レガリアに女性が乗ってるなんて僕聞いてないんだけどなあ。
女は設計者の許可がないと乗れないの?夏先生…。
(桜木)女性の居住を想定して設計してないんですよ僕は。
ああ全然問題ありません。
トイレもシャワーも普通に使ってますから。
(久米夫)誰ものぞいたりしねえよ。
仲良くやりましょうよ仲良く。
その乗組員が見間違えたんじゃないですか?
(近野)坑底圧が上がったままだってことですよ。
(遠藤)そんなわけがない。
(加藤)もしかしてまだドリルシップが掘削坑とつながったままなんじゃないか?何?
(村上)そんなバカな。
もしそれで防噴装置が作動していないとしたら。
・
(物音)あっでもでもここヤバくないっすか?先生以外はみんな男でしょ?ああ…。
お尻とか触ってくる人はいましたよ初めは。
でも一発蹴り入れればもう近寄ってこないから。
蹴り?
(久米夫)キックボクシングやってるんですこの人。
キック…。
(桜木)それで…。
やれやれ。
また上から目線かよ。
(夏)「やれやれ」って何よ?ちょっと…もうどうしてそうなるんですか?皆さん大人なんだから…。
・
(物音)
(久米夫)だってこの人がさ…。
しっ!・
(物音)何の音?えええ…。
ななな…何?何?
(夏)キャーッ!下がって!何だ?ああっ!
(夏)キャーッ!
(久米夫)うわっ!
(服部)うわっ!伏せて!キャッ!危ない。
(せき)・
(衝撃音)
(夏たちの悲鳴)大丈夫ですか?はい。
桜木さん。
ああっ。
服部。
服部!はい。
ハァ…。
何?今の。
ブローアウトだ。
「ブローアウト」?ドリルシップの掘削口から海底のオイルが噴き出したんだ。
(久米夫)ドリルシップから…。
(服部)海底のオイルが?また来るぞ!止める方法はないんですか?ブローアウトはいったん始まったらもう止まらない。
今はドリルシップの自動制御が働いて一時的に止めてるだけだ。
だが次のブローアウトの勢いはこんなもんじゃない。
レガリアも一緒に吹き飛ばされてしまうだろう。
(久米夫)おい!止めてくれよ。
あんたが造ったんだろうが。
(夏)止めて!
(桜木)僕が設計したのはレガリアだ。
あんな事故を起こしたドリルシップの構造なんか分かるわけないだろ!考えてください桜木さん。
分かるわけないんだよ。
止める方法は?桜木さん!
(桜木)んっ!桜木さん。
あった。
これだ。
ドリルシップドリルシップドリルシップ…。
これだ。
ここのバルブを直接閉めるしかない。
直接って…。
(夏)あのドリルシップの中に入って?
(久米夫)行けるわけねえだろあんなとこ。
ドリルシップに移ったら船首側の開口部から船内に進入する。
はい。
万が一海に落ちたらすぐに構造物から離れろ。
波にのまれて打ち付けられたら終わりだぞ。
大丈夫か?
(服部)大丈夫です。
よし行くぞ!
(服部)はい。
ハッ。
あっ…。
うあっ!服部!動くな。
つかまれ!服部。
(服部)あっああ…。
ああ!服部!つかまれ!
(服部)んっ!大丈夫か?今ドカンと来たら…。
(夏)やめてよ。
早く。
んあっ。
ハァハァハァ…。
大丈夫か?うえっ…。
行くぞ。
(せき)あれだ。
行くぞ。
あっ…。
うあっ!服部。
(せき)ハッ…んん!いいか?右回りだぞ。
はい。
せーの!ふん!ううう…。
もう1回。
はい。
せーの!ふん。
服部。
はい。
回せ!はい。
んあっ!集中しろ!服部。
はい!
(服部・大輔)んあああー!回せ!
(久米夫)うわ来た。
来た来た…。
ヤバいヤバい…来た。
何やってんだ?あいつら。
(夏)早く。
(警告音)服部!駄目です…。
もう駄目です。
服部!ふん!んああ!
(警告音)うあああっ。
(警告音)うあああっ!あっ!ああ…。
服部。
服部!うわっ!あっ…。
止まった。
ケガはないか?
(服部)俺には…。
もう無理です。
俺だって人間です。
救助ロボットなんかじゃないんですよ!
(泣き声)服部…。
俺は…。
憧れて海上保安官になったんじゃないんです。
高校出て会社に就職してでもすぐ嫌になって辞めてその後何やっても続かなくて。
ずっと逃げ続けてきたんです。
海保に来たのは…。
公務員なら親も文句言わないだろうって。
それだけの理由なんです。
ホントだったら今ごろアパートで彼女が作った夕飯食ってたんですよ。
なのにこんなことになるなんて。
自分が死ぬかもしれないなんて。
そんなの聞いてないですよ!
(泣き声)服部。
も…もういいです。
んっ。
服部!服部!どんな理由で海保に入ろうがお前はあの厳しい訓練に耐えて潜水士になったんだろ。
逃げ出さなかったんだろ!でも…。
俺もう怖いんです。
俺だって怖いよ。
え?さっきも言っただろ。
俺たちはバディなんだよ。
お前は1人じゃないんだよ。
みんなの所へ戻るぞ。
(リポーター)大型で強い台風13号は依然勢力を強めたまま北北東に進んでおりこのはるか先のレガリアでは完全に救助活動は止まったまま取り残された5名に台風が直撃する見込みです。
(女性キャスター)ありがとうございます。
久保さん。
レガリアには12万立方mもの天然ガスが貯蔵されていますよね。
(久保)非常に危険ですね。
1988年のノルウェー沖のプラント事故ではガスタンクに引火して394名もの死者を出す大惨事になりましたから。
これは最悪の事態も考えられます。
・
(大洋の泣き声)どうした?大洋。
うん?よしよし…。
(泣き声)大洋?・
(エリカ)はい阪本医院です。
(環菜)エリカ?・
(エリカ)環菜さん?大洋が熱出しちゃって。
どこにも…。
どこにも小児科の先生がいないの。
環菜さんどうしたの?
(男性キャスター)桜木浩一郎さん。
レガリア作業員の木嶋久米夫さん。
医師の西沢夏さん。
そして海上保安官2名が取り残されており台風が過ぎるまでは救助活動も行えず完全に孤立した…。
ハァハァ…。
あーっ!・
(足音)
(久米夫)仙崎さん。
やったよかった。
ありがとうございます!ホントありがとうございます。
大丈夫ですか?あっ服部さん服部さん。
ありがとうございます。
お疲れさま。
よかったよかった。
ホントにありがとうございました。
服部さん服部さん。
ありがとうございます。
ハァハァ…。
止まってよかったです。
あ…。
ハァ…。
肩ケガしてる。
あ…。
(夏)大丈夫ですか?
(夏)取りあえず消毒してばんそうこう貼っておきますね。
あ…ありがとうございます。
仙崎さんご結婚してらっしゃるんですね。
えっ?ああはい。
うっ。
(夏)お子さんは?います。
まだ10カ月ですけど。
(夏)男の子?ええ大洋です。
大きいに太平洋の洋で。
(夏)大洋君か。
カワイイでしょ。
はっきり言ってむっちゃくちゃカワイイっすよ。
(夏)仙崎さんのお子さんなら骨とか太そう。
いえ。
未熟児で生まれてきたんで。
えっ?やっと6カ月ぐらいの赤ちゃんと同じ大きさです今。
早産だったんですか?切迫早産です。
生まれたときは1,000gもなくて生きてるのが不思議なぐらいで。
さすがにあのときはきつかったですよ。
妻も一時は危険な状態までいきましたから。
奥さんも?お医者さんからは2人ともどうなるか分からないから覚悟してくれって言われました。
(夏)今は?今はもう元気です。
妻は母乳が出なくて苦労してますけど。
よかった。
はい終わり。
あっありがとうございます。
でも…あのとき初めて迷いました。
えっ?もし僕が大ケガしたり死んじゃったりしたらこの子と妻はどうなるんだろうって。
初めてこの仕事をやってることが怖くなっちゃって。
(夏)でも…仙崎さんは続けてる。
ええ。
保育器の中の大洋を見ながら思ったんです俺。
この子が無事に育ってくれて大きくなったとき「パパはお前のために海上保安官を辞めたんだ」…なんて言われてもうれしくないだろうなって。
自分のために親父が逃げたなんてそんなの嫌だろうなって。
それで吹っ切れたんです。
俺はこの仕事をずっと続けていこうって。
(夏)仙崎さんは家族を愛してらっしゃるんですね。
はい。
実は今日結婚記念日なんですよ。
3回目の。
えっ?3人でお祝いする予定だったんですけど。
(大洋の泣き声)
(阪本)ああ。
はいはい。
ああ怖かったねえ。
怖かった。
はいおしまい。
特に問題はないでしょう。
えっでも…。
ご心配なさるのは当然です。
今までご苦労なさったことを彼女から聞きましたから。
じゃあどうして熱が…。
あっお母さんの不安がうつっちゃったのかなあ。
えっ?
(阪本)ハハハ…。
・
(ドアの開閉音)
(エリカ)環菜さん。
びっくりしちゃった。
すっごく大きくなりましたね大洋君。
退院したばっかのころは手に乗りそうなぐらいちっちゃかったのに。
大洋君頑張ったんですね。
尊敬しちゃうな環菜さん。
(環菜)えっ?だって海上保安官の大輔さんと結婚してあんな大変なことまであったのにあそこまで大洋君育ててホントにすごいと思う。
大丈夫ですよ。
大輔さんは絶対大丈夫。
今までだってそうだったじゃないですか。
いつもどおりにしてればいいんだって。
あんまり心配し過ぎると大洋君また熱出しちゃいますよ。
分かってる。
海上保安官の奥さんだもん。
彼にもしものことがあっても…。
あの子は私が守る。
私がちゃんと育てて何があっても1人で生きていけるような子にしてみせる。
(エリカ)環菜さん…。
でもね…。
私のことは誰が守ってくれるの?もし大輔君がいなくなっちゃったら私どうしたらいい?結婚記念日が来るたびに部屋に変な仕掛け作って…。
クラッカーとか鳴らしてくれるような人は…。
大輔君しかいないもん。
大輔君がいなきゃ駄目なの。
(泣き声)さっき大洋が生まれたときのこと思い出してさ。
現場でそんなこと考えたの初めてだよ。
いいじゃないっすか。
ずっと気張り詰めてんだからそんぐらいいいじゃないっすか。
会いたいなあ。
環菜心配してるんだろうな。
ハァ〜。
何だか俺すげえ遠い世界にいる気がするよ。
何言ってんすか。
あしたになったら帰れますから。
環菜さんと結婚記念のお祝いやりましょ。
俺も行きますから。
フッ。
何でお前が来んだよ。
関係ないだろ。
水くせえなあ。
大洋君だって俺にすっかり懐いてんだからいいじゃないっすか。
分かった。
分かったよ。
じゃ来いよ。
よっしゃあ!約束ですからね。
大輔さん…。
もう波が限界に来ました。
僕らはいったんここから離れます。
次に無線がつながるのはたぶん夜が明けてからです。
大輔さん…。
絶対無事でいてくださいよ。
当ったり前だ。
絶対に全員無事に帰すよ。
大輔さんもですよ。
絶対ですからね。
分かってるよ。
じゃあな吉岡。
(ノイズ音)
(アナウンス)本船はこれより右回頭し現場離脱する。
(通信士)こちら巡視船「ちくぜん」10ノットで現場離脱中。
これより全巡視船が台風を避け対馬東方海域へ移動。
今後の指示を待ち各船荒天待機とする。
なお今後レガリアとの通信は不可。
僕たちは何もできないんですか?今のうちに休んでおけ。
(久米夫)子供のころはわくわくしたのになあ台風。
いやもう外はすごい風で。
でそう停電とかしちゃって。
でろうそく立ててその周りに家族みんなが集まって。
何か何か意外とそういうときに色々話したりして。
分かります。
うちもそうでした。
(夏)私も。
中学のころお父さんと口利かなかったけどそういうときは話ししたなあ。
どうぞ。
すいません。
桜木さんは?うちは停電したことないから。
親父と話したのは2年前が最後だった。
(夏)えっ?肺がんで入院してたんだ親父。
ちょうどこのレガリアを完成させたときでね。
俺の仕事のことは何にも言わなかった親父が初めて褒めてくれた。
「お前いい仕事した」「お前は人のためになる仕事をしてくれた」「俺の誇りだ」それが最後の会話だった。
桜木さんにとっては特別な仕事なんですね。
(桜木)だからしょっちゅう見てるよ空からこのレガリアを。
(夏)えっ?
(久米夫)空から?GoogleEarthでね。
(久米夫)GoogleEarth?何すか?GoogleEarthって。
あっあの衛星写真のサイトですインターネットの。
ああ。
何かオタクっぽい。
いやオタクなんです。
オタク…たぶん。
オタクで何が悪いんだ?にやにやしてそれを見てるんですか?にやにやして見てちゃいけないんですか?
(笑い声)
(夏)私ここに逃げてきたの。
実は…。
他の女に彼氏取られたの。
「彼女は1人じゃいられないんだ」「俺がいなきゃ駄目なんだ」って。
駄目なわけないじゃん。
自分のことカスミソウとか言う女よ。
全人類が滅びたってあいつだけは死にゃしないわよ。
なのに「お前はキックボクシングやってるから1人で生きていけるだろ」って。
意味分かんない。
(夏)だってつらかったんだもん。
つらくてつらくてここに逃げてきたの。
(久米夫)先生!僕は先生があの…1人で生きていけるなんてあの全然思ってません。
(夏)えっ?今の夏先生はめちゃめちゃカワイイっす。
久米夫君そういう話じゃないから。
(久米夫)いや違う…。
ホントに僕は本気で…。
(夏)やめて。
いやいや。
もうホントにもう胸がズッキューンって。
蹴られたいの?すっげえ風だな。
(笑い声)えっ?何がおかしいんですか?久米夫さん…。
無理だと思いますよ。
無理無理。
ねっ?君には無理だから。
あー僕ですか?あっ僕ですか?えーびっくり。
久米夫君。
(久米夫)えっ何?何が面白いんですか?何言ってるか全然分かんない。
黒煙です。
レガリアが燃えてます!
(北尾)「ちくぜん」よりレガリア方向に黒煙を確認。
レガリアが燃えてるのか?
(北尾)はい。
(オペレーター)映像入りました。
メーンモニターに切り替えます。
(どよめき)レガリアが…。
仙崎たちに連絡は取れないのか?大輔さん。
大輔さん!まだ無線の通信圏内に入りません。
こっちです。
早く。
(服部)早く。
フッ!早く。
急いで!戻れ服部!
(服部)はい。
早く!
(服部)はい!服部。
くぐれ!火を消さなきゃ!早く。
走れ!
(久米夫)先生。
(桜木)逃げたって火を消さなきゃ無駄だろう。
あの火はどうにもなりません。
(夏)キャーッ!早く!
(服部)仙崎さん!服部。
こっちだ。
(桜木)ガスタンクに引火したら終わりだぞ。
大輔さん。
聞こえますか?吉岡聞こえます。
どうぞ!大輔さん!つながった。
(通信士)はい。
こちら巡視船「ちくぜん」…。
大輔さん。
無事なんですね?全員無事だ。
でも炎が迫ってる。
救援頼む。
すぐ行きます!現在の風速ではまだヘリを飛ばすのは無理です。
暴風域を抜けるまで少なくともあと1時間はかかります。
隊長。
仙崎。
あとどのぐらい耐えられそうだ?分かりません。
でも火がもうガスタンクの下まで迫ってます。
(通信士)こちら巡視船「ちくぜん」レガリアの南南東1,600mに到着。
炎が北側ガスタンク下まで迫ってるもよう。
下川さん!
(下川)仙崎に俺の声をつなげろ。
お願いします。
仙崎。
下川だ。
下川さん。
全員無事なんだな?はい。
全員動けます。
俺たちには状況が分からない。
何をすればいいのかお前が指示を出せ。
判断を下すのはお前だ仙崎。
桜木さん。
ガスタンクへの引火を防ぐためにはどうすればいいですか?桜木さん!レガリアを沈めるんですね。
えっ…。
それしかない。
下川さん。
レガリアを沈めてわれわれはドリルシップに移ります。
えっ?沈める?ドリルシップに進入したとき離脱するまでの間船内の水位は上がっていませんでした。
あの船の浮力はまだじゅうぶんあります。
待て仙崎。
レガリアを沈めるのか?何言ってんだ!そんなことできるわけないだろ!それをやらなければガスタンクに引火しドリルシップも爆発に巻き込まれます!
(遠藤)他に手段があるだろ!ありません!他に手段はありません!桜木…。
それしか手段はないだろう。
ここにいる全員が助かるには。
考えてください遠藤さん。
現場にいる保安官2名だけでレガリアを沈める方法です。
(オペレーター)各巡視船。
ガスタンクへの引火による爆発に備えレガリアとの距離1,600m地点で待機せよ。
(通信士)了解。
なお現場海域いまだヘリの離船は困難。
(吉森)下川さん。
レガリアを沈めるなんて何言ってるんだ?あんた。
時間がありません吉森さん。
今すぐ決断を。
バカなことを言うな。
レガリアは国が1,500億も掛けて造ったプラントだぞ。
韓国もロシアも出資してるんだ。
それは人の命よりも重いんですか?
(ため息)命が大事なのは重々承知してるよ。
しかしなあれは日本の将来を担う重要施設なんだ。
人の命が懸かってました。
だから沈めましたじゃ済まないんだ。
われわれは決断しなければならないんです。
現場にいる保安官がそれしか助かる手段はないと判断したんです。
お願いします吉森さん。
今から総理とロシアと韓国の大統領を説得して了解を得ろと?
(下川)そうです。
(吉森)下川さん。
(下川)お願いします!
(吉森)あそこに残ってる5人は1,500億を沈めてまで助ける価値のある人間なんですか?私にはその質問の意味がまったく分かりません。
総理に伝えてくる。
「沈めるしか手段はありません」と。
「しかも事後報告です」と。
・
(遠藤)考えよう。
俺たちが造ったレガリアだ。
沈める方法を見つけられるのは俺たちだけだ。
(松浦)分かりました。
(村上)方法を考えよう。
(加藤)時間がないぞ。
(近野)はい。
(加藤)各ブロックの制御システムのデータを。
(柏原)暴風域を抜けたらつり上げ救助に掛かるぞ。
(保安官たち)はい。
(久米夫)これに乗り移んの?大丈夫です。
われわれがしっかりサポートしますから。
これを着けてください。
お願いします。
服部。
全員分の負荷を確保するんだぞ。
(服部)はい。
・
(加藤)これだ!見つけました。
おお近野。
(近野)はい。
(加藤)この方法ならレガリアはバランスを崩し短時間に沈めることができます。
シミュレーションCGです。
(遠藤)ロアーハル。
キングストンのバルブ…。
なるほど。
でも加藤…。
(松浦)これって…。
(下川)それは2人でできる作業ですか?できますが…。
(遠藤)下川さん。
確かにその方法なら沈められますけど…。
詳しく教えてください。
下川さん。
ドリルシップへの移動準備が整いました。
南側生産エリアの火災による崩落がすでに始まっています。
ガスタンクに引火するまでもう時間がありません!仙崎。
今からレガリアを沈める方法を説明する。
よく聞け。
お願いします。
お前たちはレガリア北側のロアーハルに行き北東の水密扉を閉鎖しろ。
そしてロアーハル内にあるキングストンのバルブを開放するんだ。
そうすれば北側のロアーハルだけに海水が流れ込みレガリアはバランスを崩す。
そのまま傾いてローデッキまで浸水すればその後は急激に沈む。
はい。
つまり…バルブを開放した途端お前たちのいる場所に一気に大量の海水が流れ込むことになる。
お前たちはその中を脱出して要救助者の元に戻るんだ。
分かりました。
(下川)脱出が遅れたらレガリアと一緒に海底に沈むことになる。
やれるか?仙崎。
やれます。
仙崎。
俺たちはつながってるんだ。
戻ってこい。
何が何でも絶対戻ってこい!はい!行くぞ!服部。
ロアーハルだ。
服部。
退路を確保するぞ。
(服部)はい。
行くぞ。
やれるじゃないか。
(服部)え?怖いって言いながらちゃんと俺についてきたじゃないか。
それは…。
自分が助かりたいからです。
それでいいんだよ。
怖がるやつほど潜水士に向いてるんだ。
服部。
お前は逃げたんじゃない。
探してたんだ。
だから潜水士になったんだ。
仙崎さん。
行くぞ!
(服部)はい。
せーの!んっ!あっ。
うわっ。
うう…。
服部!ああ…。
ああ。
うわっ!服部!服部!ああ…。
諦めるな!服部。
俺たちには待っていてくれる人たちがいるんだ。
ああ…。
ああ…。
先に行け服部。
桜木さんたちのとこに戻るんだ。
仙崎さんは?足が折れた。
足が折れてるんだ。
一緒には上がれない。
仙崎さん!早く行け!もうこのレガリアは沈み始めてるんだ。
お前が3人をドリルシップに移すんだ。
仙崎さんを置いては行けません。
俺は自力で上がる。
仙崎さんも一緒に。
服部!あの人たちを助けるんだ。
それがお前の仕事だろ!早く行け!早く行け!服部。
早く行け。
走れ!ああ…。
(スイッチが入る音)「えーテステステスト」「いやいやいや本番本番。
回ってますから」「いいですか?行きますよ。
3・2・1どうぞ!」「えー聞いてますか?あー環菜?」「硬え」「うるせえよお前」「奥さんへのメッセージなんだからちゃんと語り掛けてください」「分かってるよ」「行きますよ。
3・2・1キュー」「えー環菜。
今日は結婚3周年記念日です」「おめでとうございます」
(拍手)「えー今回は子供ができて初めての結婚記念日です」「将来大洋が大きくなったとき…」「うん」「俺たち夫婦は最初からこんなにもラブラブだったんだぞ…」「だったんだぞと!」「ここにメッセージを残そうと思う次第であります」「イェーイ!」「特別な記念日っていうことで何を贈ろうかなって色々考えてたんだけどそういや俺は環菜からいろんなものをもらってたんだなっていうことに気が付いた」「出会ったときのことを覚えてるか?」「俺も環菜も好きなこと仕事にしたくてでも追い詰められて挫折しそうになってそっから絶対に諦めないことを教えられてお前と初めて出会った夏に俺は潜水士になったんだ」「潜水士になった後も俺は環菜を怒らせたり泣かせたりホント心配掛けたけどでも環菜はそれ以上にいっぱい笑ってくれた」「そして大洋を産んでくれた」「覚えてるか?」「大洋が初めて哺乳瓶くわえたとき自分の力でコクッコクッてミルク飲んでたよな」「ハッ…拳をギュッて握って」「俺にはそれがガッツポーズに見えたよ」「『僕は頑張るよ』って『ママが命懸けで産んでくれたんだから絶対に大きくなるよ』ってそんなガッツポーズに見えたんだ」「俺から環菜にしてあげられることなんてたかが知れてるけどさ」「これからたっぷり返していくから」「来年はもっとすごいぞ。
再来年はさらにすごいぞ」「ありがとな環菜」「俺は環菜に出会えて本当によかった」「ずっと一緒にいような」うん。
「これから50回も60回ももっともっと結婚記念日を祝おうな」うん。
「…ってお前何泣いてんだよ」「ほっといてくださいよちょっと2人がうらやましいだけ…」「もういいよお前どっか行け」「ちょちょちょ…最後まで聞かせてくださいよ…」フフ…。
(せきばらい)「環菜」「これからも一生…」「お前にチェックイーン!」フフ…。
(スイッチが切れる音)ホント…。
ホント…。
バカ。
(泣き声)
(夏)仙崎さん!仙崎さん!
(服部の泣き声)服部!場所を教えろ!大輔さんはどこにいるんだ?服部。
仙崎さんは北側のコラム内です。
足を折っていて自力では上がれません。
早く助けに行かないと。
助けないと!
(オペレーター)取り残された機動救難士は水没したレガリアの北側コラム内にて負傷しているもよう。
自力での浮上は困難。
完全浸水したら一気に海の底へ沈みます。
もう無理だ。
行くぞ!服部!大輔さんは俺たちを信じてるんだ。
俺たちは絶対にバディを死なせちゃいけないんだ。
後方よし!ボンベ背負う!水面よし!仙崎さん。
俺怖いです。
(通信士)七管機動救難士が潜水救助に向かったもよう。
(松井)こちらMH617。
離船準備完了!離船許可を願う。
(通信士)こちらMH794。
離船異常なし。
(山路)こちら二隊隊長。
潜水準備完了!これより救助に向かう。
現場にいる全保安官に告ぐ。
何としても絶対全員助け出せ!
(北尾)俺たちも行くぞ!
(隊員たち)はい!OK!こいつら…。
(久米夫)みんな…。
つながってる。
OK!・
(物音)・
(物音)
(服部・吉岡)OK!
(オペレーター)救助成功!全員無事です。
(歓声)高過ぎる代償だ。
さあ帰りましょう。
(桜木・夏・久米夫)はい!
(保安官)左足けい骨骨折のもよう。
これより…。
(服部)仙崎さん!よくやった服部。
よくやった。
俺もう逃げません。
俺は海上保安官です。
1・2・3!あ…。
(保安官)頭下げてください。
医務室まで搬送します。
リハビリ入れて2カ月は現場復帰できませんね。
俺付き合いますから。
ありがとな吉岡。
何すか?急に。
お前は意外と癒やし系だよ。
遅っ!今ごろ気付いたんすか?ハハ…。
でも一番の癒やし系は…。
(警察官)もう少し下がってください。
下がってください。
環菜。
ここは邪魔しねえ方がいいな。
(環菜)おかえり。
ただいま。
遅くなってごめんな。
ほら大洋。
パパ帰ってきたよ。
おい大洋。
パパだよ。
ほら大洋。
パパ帰ってきた。
大洋。
(久米夫)あんな小さな子がいたんだ仙崎さん。
そう。
仙崎さんにはすてきな家族がいるの。
残念だったな。
また失恋だ。
(久米夫)えっ?でも今回はつらくない。
むしろ頑張ろうって思っちゃった。
そうか。
そりゃよかった。
え?何の話ですか?ねえちょっと…えっ。
何の話ですか?ねえ。
(桜木)大人の話だ。
(久米夫)いやあ僕だって大人ですよ立派な。
(桜木)子供だ。
(久米夫)いやちょっと何で怒ってんすか?
(桜木)怒ってねえよ。
(吉森)ええ分かってます。
いやレガリアを沈めたのは様々な条件が重なってしまって…。
(吉森)いやレガリアを沈めたのは私の責任です。
・
(扉の開く音)・
(吉森)下川さん。
今週中に報告書をまとめなければなりません。
(吉森)しかしただ人命救助のためだけにレガリアを沈めましたというんじゃ韓国もロシアも納得しないでしょう。
「彼らが救助に値する人間でした」と強調して書かなければ…。
結婚記念日ちゃんと祝えなくてごめんね。
ねえ全部見ちゃった?
(環菜)うん…。
見ちゃった。
え?もしかしてあれも聞いちゃった?チェックイン?やだもうあれ笑っちゃった。
そうじゃなくてさ。
あの…あれだよ。
あれ。
「あれ」?うん。
あ…。
いいよ別に。
うん。
何でもない。
ハハ…。
…っていうかさ俺の思いっていうか環菜への気持ちを吹き込んだんだけどでもいまさらサプライズになんないし恥ずかしいから全部忘れて。
(救急隊員)持ちますね。
すいません。
大丈夫ですか?大丈夫です。
(環菜)大丈夫?大丈夫。
よし。
よしおいで。
(環菜)よいしょ。
よいしょ!来年はさもっと激しくて熱いチェックインを…。
(大洋の泣き声)
(環菜)いいから。
へへ…。
ごめんな。
すっごく伝わったから。
もう十分。
ハッ…。
(大洋の泣き声)
(環菜)フフ…。
おい邪魔すんなよ大洋。
(救急隊員)閉めます。
「全員で生きて帰るんです!」夏だ!
(一同)『ワンピース』!
早くも本年度の…
そして3年ぶりとなる劇場版を彩るのは豪華ゲスト声優陣
さらに世界公開も決まっている今作がプレミア上映を行ったのが…
中東でも大人気の『ワンピース』に…
映画の舞台のようなホテルで行われたゴールデンプレミアには多くの地元ファンが駆け付けた
「あいつらは絶対負けない」「支配してみろよ!」
最強決戦の幕が上がる
「ナミ〜!」「俺は神になったんだ!」「テゾーロ!」
(一同)お願いします。
2016/07/30(土) 21:00〜23:30
関西テレビ1
土曜プレミアム・映画「THE LAST MESSAGE 海猿」[字][多][デ]【2週連続】
2週連続海猿SP!2010年実写邦画No.1ヒット作放送!前代未聞の海上災害!巨大天然ガスプラントで国家レベルの大事故発生!愛する人に贈る最期のメッセージ…!!
詳細情報
番組内容
2010年9月、福岡沖は極限の緊張状態に包まれていた。大型台風が接近している中、巨大天然ガスプラント施設「レガリア」で事故が発生し、火災が起こっていたのだ。「レガリア」は日韓共同の施設で、ロシアからも技術提供を受け、1500億円もの予算がつぎ込まれた国家規模の重要プロジェクト。
仙崎大輔(伊藤英明)はバディの吉岡(佐藤隆太)、そして「レガリア」設計主任である桜木(加藤雅也)と共に同施設へ
番組内容2
向かっていた。要救助者の救出が行われる中、突然思いもよらない爆発が「レガリア」を襲う。
これによって、大輔、桜木、医師の西沢(吹石一恵)と作業員の木嶋(濱田岳)が「レガリア」内に残され、逃げ場を失ってしまう。その窮地を、第七管区機動救難隊の服部(三浦翔平)が救った。
しかし、すでにヘリも船も同施設に近づけず、安全な場所は無くなっていた。そんな時、自分を落ち着かせ、奮い立たせるべく大輔が
番組内容3
見つめるのは、妻となった環菜(加藤あい)と、生後10カ月の長男・大洋の写真だった。大輔は知り合ったばかりの服部とバディを組み、全員で無事帰還する道を探るのだが……。
出演者
伊藤英明
加藤あい
佐藤隆太
加藤雅也
吹石一恵
三浦翔平
濱田岳
香里奈
勝村政信
鶴見辰吾
石黒賢
時任三郎
他
スタッフ
【原作】
佐藤秀峰(mangaonweb.com)
【原案・取材】
小森陽一 「海猿」(小学館「ヤングサンデーコミックス」)
【脚本】
福田靖
【監督】
羽住英一郎
【音楽】
佐藤直紀
【主題歌】
EXILE 『もっと強く』
ジャンル :
映画 – 邦画
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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