ISがトルコを狙う4つの理由

アタチュルク空港で罪なき41人が命を落とすこととなったテロ攻撃は、予想外の出来事ではなかった。

 

まず何よりも、ISがトルコで活動可能な状態であること、テロの実行と達成に関して多くの例を挙げることができるということを我々は知っていた。

2番目に、世界規模で台頭するISはグローバル化を象徴する場所を選択している。アタチュルク空港は国際的性格を持ち、さらにアジアとヨーロッパを結ぶ中心にある国の大動脈である。

標的となった場のイスタンブルは、国際空港、国際線の到着ターミナルであったことからトルコへ「やってきた人々」と同義である。

 

昨年、2015年7月20日のスルチでのテロ攻撃から今日まで、IS、PKK(クルド労働者党)、DHKP-C(革命的人民解放党・戦線)、それらの関連下部組織による複数の攻撃にさらされてきたトルコが、ISの敵国リストに加えられていることに驚きはない。

 

この件における転換点は、ISの攻撃に際しトルコが米軍のインジルリク空軍基地利用を容認した段階にあったと言って間違ない。

言い換えれば、トルコがISに対し、より積極的に明確な戦略を遂行しはじめるとともに、昨晩のテロ攻撃の発生にまで事態は発展した。

ISのトルコに対する攻撃欲は、北シリアとイラクを主として発生した事態を理由に次第に高まった。

 

結果的に、ISは苦境にたたされ、トルコ国内へ戦争を持ち込みつづけており、今後もそうし続けるだろう。そのうえ、頻度を増していくリスクが高い。シリアとイラクでISへの圧迫が強まり、同国でより一層中に閉じこもり、受動的に、守りの態勢にならざるをえなくなるとともに、この回答としてより「コストのかかる」方法で戦争を欧州、USA、トルコに持ち込んでくるだろう。

 

残念ながらトルコは、この点に関しほかの標的国よりも不利である。なぜなら、トルコは地理的に組織の本拠地により近く、組織の攻撃を可能にするネットワークが作られている状況で、300万人のシリア人も受け入れており、ISにとってみれば、文化がより身近で、簡単には素性がばれにくい国だからだ。

 

政府機関はISのテロ攻撃を最少限にとどめるために2つのことに取り組んでいる。

1つは、「どこに欠陥、間違いがあるのか、何をすれば攻撃を防げるか」という問いかけをすること。たとえば、空港の安全が、都市と国の安全に統合される問題であるということに基づいて行動をともなう対策をすること。テロ攻撃のあとで円滑に働いたとされる組織の能力を、予防と報復に関する情報伝達において最高レベルに引き上げること。

 

2つ目は、ISのテロとの戦いにおいて、国際的協調の強化に関する主張をあらゆる機会に行うこと、シリア・イラクでテロをはぐくむ土台が長期的に続くことを勘定に入れて行動すること。

 

これらが包括的に検討されたのち、昨晩のテロはアンカラ政府により「報復」と判断されたと言っておかなければならない。

テロに関して治安・諜報筋より得た情報と行われた分析は、次のように挙げられる。

 

■国家情報機構は3週間前に警告

 

まず、トルコがロシアとイスラエルとの良好なステップを踏み出した直後にテロ起こったことを理由により行われた解釈はあまり現実的でないといえる。情報筋によると このテロは、だいたい3カ月計画で実行可能な性質のものである。材料の運搬、武器の調達、戦闘員の輸送、調査などのプロセスが一日におさまると言うのは現実味がない。このため、最新の政治的展開と直接には関係しない。テロリストらがこのテロを長期にわたり計画していたと判断できる。

 

彼らが銃、ライフル、手榴弾、爆薬系のあらゆる武器を身に着けていたことも注目される。空港で遭遇しうるすべての障害を彼らが計算していたことがわかる。

トルコ国家情報機構は、3週間まえに、警察、軍警察、交通省にアタチュルク空港を筆頭に深刻なテロ攻撃の可能性について警告文を発行していた。これをうけてアタチュルク空港では警備が2倍に増やされ、高度な職務能力をもつ職員を配置し警備強化がなされた。

 

 

標的は250人だった

 

情報筋は、警告やその後の対策と、この枠組みによるテロ攻撃への抗戦によって、死者数が大きく減ったとしている。得た情報によると、現場では世間に知られているより一層大規模な衝突が起こったが、上記のようにして死者数は、テロリストたちが標的にしたより非常に少なくおさまった。

 

テロリストらは、当初何百人もの人が待つ、手続きカウンターエリアを標的にしたと考えられている。テロリストたちが、障害なくテロ行為を遂行していたならば、250人が亡くなっていると計算される。

 

昨日夕刻までに、3人のテロリストはトルコで登録がないとわかっていた。3人はその前日同じタクシーを使用し空港へ二回来ていたとみられる。テロリストらがカフカス出身であることに関する最初の情報は、タクシーの運転手の証言からである。

 

テロ行為のために空港へ到着したテロリスト達は、身分証を求めた警察官に発砲し、その後内部をライフルで乱射し、パニックが起こったところで旅行客や周辺の人々が逃げ回るなか自爆したということが判明している。空港の361台のカメラすべてが仔細に調査されているところだ。この調査で、瞬間瞬間に何が起 こったのかが明らかになるだろう。

 

テロリスト達がトルコで接触したとみられる複数の人物が拘束されている。これらの人物の事情聴取、関係に関する捜査が行われている。

 

 

攻撃の理由

 

ISのテロ行為は、トルコが最近行った大規模な攻撃に対する「報復」とみられており、次のような主要な理由に結び付けられている。

 

1)第一に、ISのトルコでのリーダー達のひとりでアンカラ駅とスルチでテロを行ったユヌス・ドゥルマズが逮捕されようというときに自爆し死亡したこと。組織はトルコ内にいるISの上層幹部に対しての軍事作戦へも応酬した。

 

2)国境のシリア側で、「ポイント・ショット」と形容される、特殊な、組織が苦しむ作戦にトルコが責任もっていること。

 

3)ジェラブルス国境線と、よってISの通過ルートの大部分が閉ざされ、マンビジでヨーロッパ、米国をはじめシリア国外でテロ行為の決定をし計画する 「外部作戦機関」が、民主シリア軍の始動した作戦ののち活動しづらい状態になっている。組織がこの作戦に責任を負うと考える国の一つがトルコである。

 

4)国内での組織に対する軍事作戦と、国境線に沿いにトルコ国軍によって行われるIS基地への空爆。

 

 

Milliyet紙(2016年06月30日付 )/ 翻訳:吉岡春菜

 

■本記事は「日本語で読む世界のメディア」からの転載です。

 

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