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美しく、あでやかな吉野太夫を演じた中島亜梨沙さん。
思いがけない展開に、中島さんも驚いたそうです!

 

才色兼備の吉野太夫

吉野太夫は初代から10代まで実在した、遊郭における最高名跡だと聞いています。大河ドラマ『武蔵 MUSASHI』(2003年)で小泉今日子さんが演じられるなど、これまでにも数多くのドラマや映画で取り上げられている役です。

打ち掛けは舞台用と違っていたので、踊る中での裾さばきが難しかったです。1月からお稽古をしていたのですが、慣れるまで時間がかかり、所作指導の橘先生には振り付けから所作まで、本当によく見ていただきました。
衣裳は豪華でかわいらしくて華やか。「嬉しい!」と思いながら身につけていました。演じるときに一番気を付けたのは、衣裳や踊り、所作などから醸し出す雰囲気です。男性が見るとハッとさせられ、女性が見ても素敵だと思う立ち居振る舞い、相手が誰であろうと変わらない公平さ、信繁に頼みごとをされて「わかりました」と引き受けるような度量の深さなど、そういったところ全てに気を使って演じました。

二代目が有名ですが、私が演じたのは初代の吉野太夫。史実として伝えられている事柄は少なく、そのほとんどは二代目のもののようでしたが、いろいろと引用させていただきました。
美貌だけではなく、芸事から経済のことまで全てに通じた、才色兼備の完璧な女性だったそうです。女性が職業に就く機会が限られていた時代に、太夫という最高位までいった人ですから、今で言えばキャリアウーマンといいますか、職業婦人のような存在です。なので、仕事をする女性の強さも出していけるよう意識しました。

打ち掛けは舞台用と違っていたので、踊る中での裾さばきが難しかったです。1月からお稽古をしていたのですが、慣れるまで時間がかかり、所作指導の橘先生には振り付けから所作まで、本当によく見ていただきました。
衣裳は豪華でかわいらしくて華やか。「嬉しい!」と思いながら身につけていました。演じるときに一番気を付けたのは、衣裳や踊り、所作などから醸し出す雰囲気です。男性が見るとハッとさせられ、女性が見ても素敵だと思う立ち居振る舞い、相手が誰であろうと変わらない公平さ、信繁に頼みごとをされて「わかりました」と引き受けるような度量の深さなど、そういったところ全てに気を使って演じました。

色気を最大限に出して

参考にさせていただこうと思い、吉野太夫が登場する作品をいろいろと見ました。中でも、三船敏郎さんが主演された映画『続 宮本武蔵 一乗寺の決闘』(1955年)で吉野太夫を演じられていた木暮実千代さんがとても印象的でした。とても妖艶で美しく、「この人に会ったら男性は皆、恋しちゃうだろうな」という雰囲気がすばらしかったです。私はそういうタイプではないので、多分そこまで到達できないだろうな、と思ってしまいました。自分の中にある持ち味は生かしつつ、あまり備わっていない色気は、歯磨き粉のチューブを最後にギューッと絞り出すような気持ちで出しました(笑)。

吉野太夫は男性だけではなく、女性も憧れる完璧な女性なので、「大丈夫かな?」と不安でした。本来の自分の頭の中は、ゲーム、日本酒、肉、睡眠という要素ばかりなので(笑)、そこは完全に隠して演じなければ、と頑張りました。お座敷という近い距離で、秀吉や昌幸に色気を届けるのが吉野太夫です。

視線を全て自分にひきつけるといいますか、踊って目線を外している時でも見られているような気持ちになってもらえるように演じました。第28回「受難」からは、昌幸を丸め込もうと手練手管を尽くしている役柄です。「草刈さんの色気に負けないぞ」という強い気持ちで挑んだつもりです。

視線を全て自分にひきつけるといいますか、踊って目線を外している時でも見られているような気持ちになってもらえるように演じました。第28回「受難」からは、昌幸を丸め込もうと手練手管を尽くしている役柄です。「草刈さんの色気に負けないぞ」という強い気持ちで挑んだつもりです。

主役級の共演者の方々と対峙(たいじ)していましたが、自分とかけ離れた役であるせいか、かえって吉野太夫として、どっしりとそこにいることができ、楽しく演じられた気がします。「自分と通じる部分がある役です」と言えないのが、とても残念なのですけれども(笑)。

意外な成り行きに驚きつつ

出演した第15回「秀吉」、第18回「上洛(じょうらく)」から少し間をおいて、第28回「受難」からの再登場となりました。吉野太夫としてまた出ることができると聞いていたので、脚本を読んだ時は「ん? あれ? あれ? あれっ…殺される……死ぬのか、私って……」と、びっくりしました。

第18回までは完全に吉野太夫で演じていて、先のことは全く見えていなかったので、この展開には驚きました。第28回からの吉野太夫は、まったくの別人。スタッフの皆さんもかなり混乱されていたようで、メイクをどうしようかとか、そういった話も出ていたのですが、いままでの吉野太夫と同じメイクでいこう、ということになりました。監督からも、「あまり別人だとわからないように演じてほしい」というお話がありました。

第28回からの吉野太夫は、徳川家から送り込まれた忍びなので、本物の吉野太夫とは目の奥に宿しているものが違います。昌幸をなんとか調略したい、そして、任務に失敗すれば命はないと、常に緊張感を持っています。だけど、表面的にはそれがわからないように。笑っているけれども、目の奥は笑っていなかったり、切羽詰まった必死さや、“吉野太夫を演じている忍び”の無駄に色っぽい雰囲気の違いなど、そのあたりをもう一度見直していただいた時にわかっていただけたら、とても嬉しいです。

第28回からまた出ることができて、心から嬉しかったです。しかも、二面性のある役。役者として本当に面白く演じさせていただきました。

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