暑いのに台所……その理不尽を解消したい!
暑い盛りの食事どき、「何を食べたい?」と妻から尋ねられ、「簡単なものにしたら? そうめんでいいよ」と夫がうっかり答えて大喧嘩になった、という話を聞きませんか?
狭くて暑く、クーラーの風も届きにくい。現代日本の夏の台所は、私のような料理好きでも心萎える場所。その中で束の間とはいえ、大鍋に湯を沸かし、火の前につきっきりで麺を茹でるのです。
ひと夏台所で料理をしてみたことのある人なら「そうめんでいいよ」はいろんな意味でちょっとないかな、という気もしますが、その議論はまたの機会に。
夏の料理でもっともつらいのは、やはり長い時間、火を使うこと。朝はまだ涼しいとはいえ、さすがに煮込み系のスープだとへこたれそうなときもあります。
前回のトマトスープでも書きましたが、シンプル・スープの基本は、「素材の味をスープに移すこと」。なにも煮込むだけが、スープの調理法ではありません。今回は火を使わない夏にぴったりの方法を紹介します。
それは、「漬ける」こと。
夏野菜の代表、きゅうりを思う存分!
今日のメニューは、冷や汁です。
日本の各地に似た料理があります。最も有名なのは「宮崎の冷や汁」。いりこでだしをとり、アジやかますなど焼き魚をすり、味噌を焼いて作るという、案外手間がかかる料理です。
でも、今日は火を使う工程はすべてカット、だし汁を取る工程すら省いた簡単レシピにしました。でも、ばっちりおいしいですよ。
さあ、それではレシピをどうぞ!
きゅうりと豆腐の冷や汁
材料(4人分)
きゅうり 2本
豆腐 1/2丁
青じそ 5枚
みょうが 1個
味噌 約大さじ3 ※味噌の塩分による
白ごま 大さじ2
かつおぶし 5~7g ※小分けのパック1つ程度
塩 適量
ごはん 適量
1.下ごしらえ
きゅうりは5mmほどの薄切りにする。塩小さじ1の塩を振って混ぜ15~20分置き、キッチンペーパーで水気を絞る★1。豆腐も大きめに手でくずしてざるに入れ、水を切っておく。
2.即席みそ汁をつくる
白ごまをすり★2、味噌とかつおぶしと一緒にボウルに入れて練り、水300mLでのばして即席味噌汁を作る。
3.一晩漬ける
下ごしらえしたきゅうりと豆腐を加え、薄切りのみょうがと手でちぎった青じそも加える。冷蔵庫に入れ”一晩“冷やす★3。
ごはんに汁をかけて食べる。
たったこれだけのレシピですが、上で★をつけた、3つのポイントを解説しますね。
・なぜ野菜の水分を抜くのか
・白ゴマをするには?
・一晩漬けること
★ポイント1 なぜ野菜の水分を抜くのか
きゅうりに塩を振るのは、余分な水分を出すことが目的です。また、独特のえぐみが抜けます。
後からまた水を足して漬けるのに、水を抜く必要あるの?と思われるかもしれませんが、きゅうりや豆腐は水分が多い食材ですから、ここで水気をある程度抜いておかないと、味噌汁が薄まって味がぼやけてしまいますし、味もちゃんと染みこんでいきません。 きゅうりから出た水を捨てた後、キッチンペーパーなどでしっかり水気をとります。
このひと手間が、今回のレシピの最大のポイントです。
※塩の分量が少し多めですが、きゅうりの水分を抜くためなので、スープに全部は入りません。
塩で水分が抜けたきゅうり
★ポイント2 白ゴマをするには?
冷や汁のコクの大きなカギとなるのが、白ごまです。出汁はとらなくても、ごまを抜いてはいけません。
まず、白ごまをすります。すり鉢がなければ、キッチンペーパーに包んで、マグカップの底などでゴリゴリ押し付けるようにすると、少し粒の残ったいい感じのすりごまが作れます。もちろん、市販のすりごまを使ってもOK。
テーブルが傷つかないよう、まな板か古雑誌の上に置くと吉
ちなみに、スープにはすったごまと味噌に鰹節を混ぜます。
かつおぶしを放り込んでおくだけで、自然と水出しのお出汁になるんですね。
★ポイント3 一晩漬けること~味噌汁で作る、お漬物感覚
この料理のイメージは「汁とともに食べる野菜の漬物」。ここから冷蔵庫で冷やす時間がぐっと野菜をおいしくしてくれます。下味から2段階で漬けることで、きゅうりは水分がさらに抜けてカリカリした、浅漬けのような食感になるのです。
ごはんは、熱々でも、冷めたのでも、水で洗って冷やしても、それぞれにおいしいものです。青じそやみょうが、ごまは好みで追加するとより香りが楽しめます。
サラサラといくらでも入って、一人でも二人分ぐらいいけちゃうかもしれません。
お好みにアレンジ
同じ作り方で、ほかの野菜でもおいしいものがたくさんありますよ! 下ごしらえの基本は同じです。なすやかぶ、キャベツ、オクラなど、浅漬け、ぬか漬けにするような野菜が向きます。豆腐はお好みで入れてください。
こちらなすの冷や汁。豆腐は使わず、具は、薬味のしそ、みょうが以外にはなすだけです。
トマトとバジルの冷や汁。かつおぶしのかわりに昆布かつおなどの顆粒だしを使い、しそとみょうがのかわりにバジルの葉を使いました。トマトは軽く塩をして汁は捨てず、そのまま漬け込みます。
味噌とバジルの意外な組み合わせが楽しめると思いますよ。
夏野菜でさっぱり、涼やか。冷たいスープで気持ちよくお過ごしください。
スープのレシピや研究成果を発表している有賀さんのnoteはこちら!