ちょ、ダンジョンつながってそうな遺跡発見!トルコ「ネムルット・ダー」
wondertripでは世界の絶景を紹介していますが、歴史地区や古代都市などの絶景スポットは、その歴史を少しでも知ることでより観光が楽しめます。今にも残る世界遺産のストーリーは、知識欲も刺激されますね。本日はトルコ「ネムルット・ダー」をご紹介します。
世界八番目の不思議と称されるネムルット・ダー
トルコ東部の標高2134mのネムルト山の山頂にある遺跡。オスマン帝国軍が、山頂付近に行軍した時にこの遺跡が奇跡的に発見されました。1881年にドイツ出身の道路技師のカール・ゼシュターによって、本格的な発掘が行われたのです。山頂に神々の巨頭が鎮座する珍しい景色は世界八番目の不思議といわれ、1987年に世界遺産に登録されました。
東と西にそれぞれ5体の神像と鷲とライオンの像が並んでいましたが、地震によって首が転げ落ちた滑稽な風景はココでしか見られません。アポロン、ゼウス、ヘラクレスなどの神々と共に、ここにあった王朝の王アンティオコス1世(在位紀元前64~前38年)自身の像も並んでおり、当時強大な権力を持っていたということが伺えます。
滑稽な風景が広がる世界遺産ネムルット・ダーのはじまり
この地に繁栄をもたらしたコンマゲネ王国は、マケドニア王国のアレキサンダー大王(在位紀元前356~前323年)の死後に、マケドニア王国の支配力が衰えた時に興った王国の一つといわれています。当初サモス1世が王を名乗りました。その後、ミトリダテス1世がシリアのアンティオコス8世(在位紀元前121~前96年)の王女を妃に迎え王位を継いだのがこの遺跡の主、アンティオコス1世でした。
コンマゲネ王国は、紀元前2世紀~前1世紀にかけてネムルット・ダー山の麓に栄えた王国です。この奇怪な10体の神像はこの繁栄期を築いたアンティオコス1世の墳墓を飾る像でした。この王の墓は当時にしては芸術的な偉業を遂げたといえ、コンマゲネ王国の文明独特の証明といえるのではないでしょうか?
小さな王国コンマゲネ王国に繁栄をもたらした理由
こんなに小さなコンマゲネ王国が、このような独特な文明を築けたのはアンティオコス1世の活躍があったからだといわれています。これまでは隣国は強国揃いで臣従することを常としていたのです。アンティオコス1世の両親も小さいコンマゲネ王国が生き残るための政略結婚でした。母はシリア出身でこの結婚によりシリアとの争いを終結させたといわれています。
アンティオコス1世はローマ帝国との盟約で、周辺諸国からの侵略を退けることに成功しました。独立を維持したこの地で鉱物資源の活用と通商によって富を得ました。この時に蓄えられた財力でこの王国が栄えたといわれています。この王の強大な力を見せつけるかのように聳える彼の石像、テラスの北側にある石板には3神と握手をするアンティオコス1世の姿がレリーフとして残されています。レリーフには彼が、マケドニア人とペルシア人双方に起源を持つことも記されています。
信仰深い王アンティオコス1世
アンティオコス1世は、とても信仰深い王だったことでも知られています。ペルシア人のほとんどが信仰する「ゾロアスター教」を信奉していたようです。このゾロアスター教はジェレニズム化されたもので、自らの祖先をペルシアとセレウコス朝の両方とみなしていました。コンマゲネ王は双方の神々が混交した、ゼウスとアフラ・マズダが同一視されています。
西のテラスと東のテラスの間には、石の破片を積み上げたこんもりと丸みを帯びた墳墓があり、直径150m、高さ50m、の巨大な円錐形となっています。この人工の墳墓が山の美しい形を形成しているのです。この墳墓の頂上はナント!標高2000m。紀元前にこんな山の上に墳墓を造った人々を思うとかなり神秘的ですね!この遺跡のサンセットを楽しむツアーがあり、石像たちが夕日に照らされ赤く染まっていく姿はとても幻想的です。
墳墓に込められた王の想いと不思議な石像たち
荒涼とした山並みを背景にした山の頂に、アンティオコス1世はどのような思いをもって自分の墓を建てたのでしょう。なぜ墓の東西に神々と共に自分の姿をした巨石を造らせたのか?神々に感謝の気持ちを込めて造った遺跡とか、自分が天上に行った黄泉の世界で神々と同等でいられるようにとの願いだったのか、今となっては分かりませんが壮大なロマンがまだまだ隠されているような気がします。
アポロン、王国の守護神女神テュケ、ゼウス、アンティオコス1世、ヘラクレスと並んでおり、その両側に鷲とライオンの像が一体ずつ並んでいます。この神秘的な遺跡たちの謎に満ちた不思議を解き明かしてみたいものですね。
壮大な歴史を感じて旅をしよう
いかがでしたか。ただ息を呑む絶景に心焦がすだけではなく、その背景にある歴史を簡単にでも理解することで、世界遺産巡りはより楽しくなります。トルコ「ネムルット・ダー」への渡航をぜひご検討ください。
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