小池東京都知事 変化への期待に応えよ
東京都知事選は元防衛相の小池百合子氏(64)が大差で制した。人口約1350万人の都政のかじ取りを初めて女性知事が担う。
政党の支援を得ない小池氏が勝利を収めたのは、知名度や国政での経験への評価に加え、都政に変化を求める有権者の期待感の表れだろう。都議会と健全な緊張関係を築き、首都の課題解決に取り組んでほしい。
小池氏と自民、公明両党が推す増田寛也元総務相、民進、共産などが推すジャーナリストの鳥越俊太郎氏の事実上三つどもえの戦いだった。
組織票で不利だった小池氏が圧勝したのは自民支持層が分裂したうえ、無党派層も含めた幅広い支持を得たためとみられる。政党の推薦が決め手とならない都知事選の特徴は今回も変わらなかった。
小池氏を押し上げたのは政治とカネの問題で混乱する都政の閉塞(へいそく)感を打破する期待だろう。初の女性都知事という点だけではない。舛添要一前知事の辞任に伴う急な選挙で模様眺めをする政党をよそに、小池氏は自民党の了承を得ず出馬に踏み切り「やる気」をアピールした。
2020年東京五輪の負担などをめぐり都政の透明化を訴えた。さらに自民、公明が与党だった都議会の冒頭解散を掲げ、対決姿勢を強調した。自民党都連は議員本人だけでなく、親族が小池氏を応援した場合も除名処分とする通知を出すなど露骨に締め付けた。だが、逆に反発を広げ、小池氏には追い風となった。
新知事として「これまでにない都政」をどう実現するのか。都議会を敵と決めつけ、劇場型の対立をあおるような手法で成果は得られない。舛添都政を点検し、政策を軸に議会と議論を戦わせる覚悟がいる。
急速な超高齢化に対応した医療・介護体制の確立や、改善しない保育所の待機児童問題、防火対策が遅れている首都防災など東京が抱える課題はいずれも重く、緊急性が高い。
小池氏が都政をどう変えようとしているか、公約からは必ずしも明らかでなかった。必要に応じて国にものを言う強さと、生活に密着した課題へのきめ細かさの双方が必要だ。
政党は結果を厳しく受け止めるべきだ。政策より締め付けで小池氏に対抗した自民は、舛添都政を与党として支えていた反省が乏しすぎる。
民進、共産など野党は保守分裂の好機を生かせなかった。参院選と同様に共闘したが、政策などで鳥越氏陣営の準備不足は明らかだった。
民進党の岡田克也代表は都知事選投票の前夜、次期代表選への不出馬を表明した。批判逃れを図ったとしか言いようがないタイミングだ。党全体で野党共闘のあり方を議論し、選挙結果を真剣に検証すべきだ。