取材に3万円のギャラを要求した吉田沙保里選手の記事に対するブコメが見るに堪えないので、マスコミと呼ばれる業界の隅っこにいる者として、みなさんの説得を試みたいと思う。
http://b.hatena.ne.jp/entry/news.livedoor.com/article/detail/11825985/
残念ながら、マスコミが取材対象に謝礼を払うという習慣はこの業界にない。そういう予算の枠もない。せいぜい喫茶店のコーヒー代とか、遠方から来てもらった場合に交通費を渡すくらいだろう。
理由は簡単。取材対象とメディアは常に対等な関係にあるからだ。記事を書くにあたって、取材対象にお金を払うことはないし、逆にお金を受け取ることもない。件の記事にある「記者倫理」というのは、このことを指している。
じゃあメディアがちょくちょくステマに手を出し、バレて叩かれてるのは何なのよと思うかもしれない。なぜステマは叩かれるのか? それは「メディアの記事を金で買うことはできない」という前提があるからだ。金で買われた記事はそう分かるように、「PR」や「広告」などと表示しなければならない。
もちろんプロに業務として仕事をしてもらった場合には、相応の対価が発生する。たとえばプロスポーツ選手で無理矢理たとえるなら、よその試合で事故かなにかが起きて、その道のプロであるスポーツ選手に解説を求めた場合、謝礼というか、ちゃんとしたギャラを払うことになるだろう。実際、評論家の先生からコメントを取った場合にはギャラを払っている。評論家はコメントするのが仕事だからだ。
別の観点では、マスコミは商売に使うネタを仕入れるのに、相手に謝礼を払わないのはおかしい、と怒る人がいるかもしれない。それはもう、そういうビジネスモデルだからとしか言い様がない。マスコミはそういう商売なのだ。そうやって金儲けをすることで、絶対に採算が取れないけど社会正義のために必要な取材(紛争地の取材とか)のコストをまかなっている。うん、そうなんだ。嘘くさいけどマスコミって社会正義を実現することが使命のひとつなんだよね。
話を下世話なほうに振ると、芸能人の密会写真なんかを週刊誌に持ち込めば、謝礼をもらえるかもしれない。でもそれは買い取りだ。プロスポーツ選手の話を買い取ることができるとは思えない。「そのエピソードはうちが買ったので、他のメディアでは二度としないでくれ」などという契約は現実的じゃないだろう。
では取材を受ける側は、取材で拘束された時間分だけ丸損なのか? もちろんそうではない。まず、取材を断ること自体はまったく構わない。特定のメディアや記者を選んで取材に応じるのでもいいし、とにかくメリットがありそうだなと思ったときだけ応じればいい。「取材に応じる代わりに自著のタイトルと表紙画像を必ず入れてくれ」といったバーターも交渉の余地がある。
とはいえ、取材を断りたいという目的で謝礼を要求するというのは、あまりにも常識外れで業界のことを分かってない素人的な対応といえる。3万円という金額も生々しい。馬鹿にされたと感じて怒り出す記者がいてもおかしくない。それをエンタメにして下品に取り上げたのが件の記事だろう。
みなさんのご指摘の通りマスコミの中にはおかしな特権意識を持っている者も多く(特にテレビ)、取材現場で他のメディアを恫喝したりするのは日常茶飯事だ(特にテレビ)。だから「マスコミは何様のつもりなのか」と反感をもたれるのもよく分かる(テレビ屋は何様のつもりなのか)。
ただ、取材対象とマスコミの間には、ビジネスとか金銭のやりとりを抜きにした対等な関係が前提としてあって、ほとんどの真っ当な取材記事はそうした関係性の中から日々作られているのだということは覚えておいてほしい。
対等の立場というけれど、そのルールの上であの心配したフリして恨み節の記事書かれて、取材で撮られたであろう写真を勝手に貼られて 何が対等なのかと感じるよ 対等だと言うなら記...
そういうことは、犯罪被害者をメディア・レイプするのを止めてから言ってくれ。