小池百合子さんに東京都知事選の当選確実が出ました。
そうなるであろうことは、ぼくがfacebookでやっている「仕事部屋」というグループに、7月1日時点(リンク:facebookへ飛びます)で書いておきましたので、そんなに驚きはありません。
問題は、この先どうなるか、でしょう。しかし小池さんが勝てば都議会が崩壊する、なんてことはあり得ません。このあたりは前回の記事(リンク)も伏線になりますが、また別のケースで考えてみましょう。
それは、田中康夫政権下の長野県政です。
田中康夫氏は当初、有権者からの圧倒的な支持を得ます。そして当初からの県議会との対立が深まり、2002年7月に不信任決議が可決されます。その際、議会の解散ではなく知事失職を選んだ末の選挙で、圧倒的な得票差で再任されます。
しかし、県議会との関係はその後も改善しません。その間、有権者は状況を見守っていましたが、埒が明かない中で失政が目立ちはじめ、支持率は低下。結果として3選を目指した2006年の知事選では敗北を喫しています。
田中康夫と県議会のどちらが正しかったのか、というような話は、ここでするには紙幅が足りなすぎますので、割愛します。問題は、知事(首長)と議会の二重権力という構造です。
両者が蜜月の間は、とても強力な権力が発生します。しかし両者が仲違いをした時から、どちらも機能不全に陥ります。その一因は、それぞれの権力が別のプロセス(別の選挙)で選ばれることにあります。
すなわち、そもそもが論理的に整合していない二者によって、権力構造が作られるのです。だから、権力として揃うことの方が珍しく、大体は揃わないのを妥協でなんとなくやり過ごすことになる。
よく言えば、対立という緊張関係による、権力の健全化が促せます。おそらくこの制度を設計した人は、そういうことを期待していたのでしょう。しかし、現実はそうはいかない。そしてそれは、大いなるムダを招きます
いや、ムダなだけなら、まだいい方でしょうね。実際は、そのムダの解消を口実に、二者の「癒着」が生じかねない。さらにいえば、事実上権力が不在であるがゆえに、第三の権力(しかもそれは民意の裏付けがない)も発生させてしかねません。
そんなわけで、小池さんの前途は多難です。それは小池さんの資質の問題以前に、地方自治の構造の問題でもあるわけです。
では彼女はそれを突破するつもりはあるのか。
もちろんそのつもりはあるでしょう。でなければ、都知事選に立候補なんてしないはずです。
しかし、東京都政の2016年における個別の問題として、都議会を中心とした権力が機能不全に陥っているという事実があります。そしてそれを解きほぐすには、少なくとも次の都議会議員選挙を待たなければならない。
ルーティン通りなら、それは来年です。ということは、来年まで都政は停滞しかねない、ということです。ここに何か爆弾を仕掛けて突破できるかどうかが、小池さんの成否を決めることになります。
反対に、もしじっくりと時間をかけて、丁寧に都政を正常化させるというのであれば、その際に最適な候補は小池さんではなく、増田さんだったはずです。それ自体は、ご本人も再三丁寧に説明されていますし、マスメディアだってそれを報じています。
だから、小池さんが選ばれてから「長期安定政権を望む」と言う人は、自分が都政に何を求めているのか、分かっていなかったのではないでしょうか。長期安定政権こそ本当に欲しいものであるならば、そういう人は選挙戦の最中は増田さんの当選に尽力すべきでした。
そして、そういう「小池さんに長期政権を」という方が多くて、仮に小池さんがそういう有権者から支持されているのだとすると、残念ながら小池さんもまた短命に終わるのではないかと、そんなことを思っています。
ただ、あくまで個人の考えですが、ぼくは小池さんは短期政権でいいと思います。少なくとも任期満了なんてとんでもない。2020年7月、つまりオリンピック開幕直前に選挙とか、本当にバカすぎます。国際社会を愚弄するにもほどがある。
そしてこれも勝手な想像ですが、小池さんも長期政権は考えてないように思えます。おそらく彼女の政治的野心は、我々が考えるよりもずっと大きく、一方で彼女の年齢を考えると、東京都政などという「超高級砂場遊び」みたいなところで拘泥しているヒマはないはずです。
もちろんその野心が果実を得るかは分かりませんが、分からないけれどアタックして果実を得たのが、今回の小池さんなわけです。たぶん今はもう、次のことだけでなく、次の次のことを、真剣に考えているんじゃないかと思いますね。