【寄稿】「平和ぼけ」韓国のTHAAD論争

 THAAD論争を通して学んだことも多い。THAADが何なのか、幼い子どもでも知るようになった。取りあえず、THAADは技術的に見て人体に有害ではないということが客観的に立証された。人体に有害だという点を反対の中心に据える手法は、経験的に、立証されない主張へと傾いていく。THAADが配備された地域の米国人や日本人は静かなのに、韓国人だけが特に検証を主張しているところには、市民社会や地域住民の声を無視できない韓国特有の政治力学も表れている。

 北朝鮮は韓国に対して低高度・中高度・高高度ミサイル攻撃を敢行でき、高高度ミサイルにはTHAADによってもう少ししっかり対応すべきだということも学んだ。ただし、レーダーで北朝鮮のミサイルを捕捉しても、200キロ以内のものしか落とせないことから、韓国全域をカバーすることはできないというのが実情だ。中国から米国に向けて発射される大陸間弾道ミサイルは、非常に高い高度を、別の方向へと飛んでいくので、直接的な標的にはなり得ない。このため中国の懸念は、過剰な主張だと言わざるを得ないだだろう。

 THAAD論争は、韓国人に、乗り越えるべき山は多いということも悟らせた。まずTHAAD論争は、韓国政治の後進的な一面をあらわにした。THAADは国家安全保障のために必要だと言いながら、国会議員が先頭に立って「うちの地域は駄目」という地域エゴを掲げた。星州の住民は、突然のTHAAD配備のニュースにデモで対応した。韓国政府の決定システムが透明ではなく、十分なコミュニケーションができていなかったという指摘は一理ある。何か起こりさえしたらデモに依存する姿は、韓国政界の利益代表システムに欠陥が多いことの証拠だ。

 韓国政府の秘密主義も、乗り越えていくべき課題だ。THAADに関して米国との協議はないと言っていたのに、いきなり配備決定を下し、住民に知らせることなく配備地域を発表した。典型的なコミュニケーションの失敗、説得の失敗だ。THAADの本質を、順を追って国民に伝え、忍耐力を持って国会・メディア・住民を説得していく民主的プロセスの回復が、THAAD問題を解決していく鍵だ。

パク・チョルヒ・ソウル大学日本研究所長兼国際大学院教授
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