連続テレビ小説 とと姉ちゃん(102)「常子、花山と断絶する」 2016.07.30


(花山)そうか…。
小麦粉を使った新しい料理だ。
(美子)新しい料理?次号の特集だよ!ハハハハハ!えっ…えっ?
(谷)編集長としては理想の雑誌を追求する花山さんの気持ちも分かる。
そのためにもう一度直線裁ちのような発明をと内心焦りはあるかもな。
(常子)あの人がですか?そんなそぶり全然…。
編集長ってもんは往々にして気難しくて誇り高いもんなんだよ。
(相田)そうなんですか?じゃあ今度の編集長も?ああ。
俺と違って短気だから覚悟しとけよ!え〜。
(富樫)五反田さんが羨ましいですよ。
(五反田)えっ?これからは悠々自適な作家生活じゃないですか。
ハハッそんないいもんじゃないよ。
独り立ちして仕事が来るかも分からないしまあ…しばらくはすいとんばかりすすって暮らす事になるだろうな。
五反田さんなら大丈夫ですよ。
これはこれは出版社の社長様にそう言われて光栄です。
からかわないで下さい。
さっきの話だけど花山さんだってわからず屋じゃない。
君自身の口で誠意をもって伝えれば分かってくれると思うよ。
はい。
・「普段から」・「メイクしない君が」・「薄化粧した朝」・「始まりと終わりの狭間で」・「忘れぬ約束した」・「花束を君に贈ろう」・「愛しい人愛しい人」・「どんな言葉並べても」・「真実にはならないから」・「今日は贈ろう」・「涙色の花束を君に」・「涙色の花束を君に」
そして迎えた第5号の発売日
(水田)美子さん上機嫌ですね。
分かります?実は昨日ようやく「これは」っていうものを見つけたんです。
ほら。
鉛筆?はい。
以前花山さんと買いに行ったんですけどその時は買えなくて。
きっと喜んで下さるはずです。
…だといいんですが。
今日伝えるんですよね?広告載せた事。
えっ。
大丈夫ですかね…。
私の口からきちんとお話しします。
私どうなっても知らないからね。
(鞠子)ひどい言い方しないの。
花山さんが出社してらしたらすぐに話すわ。
もういらしてたんですか?もういらしたというより「まだ」いらしたんだ。
徹夜ですか?心躍る企画が浮かんだがそれに対する答えがまだ見つからなくてね。
その前にお話があります。
静かにしてくれ。
頭がいっぱいなんだ。
花山さん折り入ってお話が。
後にできないのか?はい。
最新号なんですが…。
原稿に間違いでもあったか?裏表紙をご覧下さい。
何だこれは!なぜ料理学校の広告が載っている!やはりどうしても資金が足りなかったんです。
広告はこの誌面だけです。
言い訳など結構!ですが…。
なぜ今まで黙っていた?それは申し訳ありません。
すみませんあの僕が…。
いやこうでもしないと認めて頂けないと思ったんです。
こうすれば私が認めると思ったのか?認めるも何も出来上がってしまっていては反対もできないじゃないか!汚いやり口だな。
なぜ理解してくれない!広告を載せてしまうと読者のための記事に制約が生まれるかもしれないんだぞ!ですから雑誌の内容には口を出さないように約束を取り付けました。
甘いよ常子さん。
残念だがもう君と雑誌は作れない。
どういう意味ですか?編集長は辞めさせてもらう!花山さん!とと姉ちゃん!本気でお辞めになるつもりなんですか?私はいつでも本気だ。
待って下さい。
辞表は要らんだろう。
花山さん。
広告はそれほど大事な事だったんだ。
進退を懸けるほどにね。
君にそれが伝わっていなかったのは残念だ。
同じ思いで雑誌を作っていると思っていたんだが。
それは同じだと思います。
毎日の暮らしを守るために…。
口では何とでも言える!私そんなにいけない事したでしょうか?雑誌の内容自体は何も変わってないんですよ。
その1ページが命取りになる!ですけどお金がなければ雑誌を出す事すらできません。
それじゃみんなや花山さんのお給金だって払えません。
じゃあ君は金のために魂を売るのか!そういう訳では…。
私はそんな雑誌ならば出すべきではないと考える。
君は生きるために雑誌を出すべきだと考えた。
相いれないのかもしれないな。
お願いします。
残って下さい。
「あなたの暮し」は私たちが生み出した雑誌じゃないですか。
見捨てないで下さい!そうさせたのは君たちだ!世話になったね。
花山さん…。
本当に辞めちゃったの?恐らく…。
ねえ今からでも遅くないよ。
とと姉ちゃん謝って!謝る必要ないわ!こうするしかなかったんだから。
でも…。
(水田)あの様子では聞く耳を持ってくれないでしょう。
我々でなんとかするしか…。
何個?1つ。
1つね。
すいとんとうどんばっかじゃ元気出ないもんな。
パン食べて元気出して。
焼きたてですよ!
(緑)どうぞ。
ありがとうございます。
すみません心配かけて。
(緑)いえ。
ひどいよ。
花山さんがいなくなったばかりなのに。
だからそれは…。
このまま何もしなくたって締め切りは迫ってくるの。
よっちゃんも一緒に考えて。
私は花山さん抜きで企画を決めるのは無理だと思うよ。
あっ!何をするおつもり?あっいや花山さんのメモを見れば花山さんがおっしゃっていた心躍る企画というのが分かると思いまして。
それが分かれば次号の…。
それはいけません。
それじゃあ花山さんの企画を盗む事になります。
…ですよね。
すみません。
だったら今すぐ広告やめて花山さんに許可とってきたら?それができたら苦労しないでしょ。
美子さん?企画を考えるのはここじゃなくてもいいと思うので。
もう…あの子は…。
(三枝子)本当によろしいんですか?ああ。
すぐに次の出版社をあたってみる。
余計な心配はいらないよ。
(三枝子)収入の事ではなくあなたは本当によろしいんですか?あれだけの決意をもって立ち上がったのに…。
だからこそこうするしかなかったんだ。
(茜)お父さん今日は早いんだね。
うん。
しばらく家にいられるかもしれないな。
そうなの?わ〜い!ハハッ。
よし行こう。
(戸が開く音)ただいま帰りました。
(君子)お帰りなさい。
あら一人?早いわね。
辞めちゃったんです。
えっ?花山さん。
えっ?どうしてまた…。
広告の事でとと姉ちゃんとぶつかって…。
私花山さんの気持ちが分かるから納得できなくて。
なんとかならないの?謝るよう言ったんですけど自分たちでなんとかするらしいですから。
あの子も頑固なところあるからねえ。
何か話し合うきっかけでもあればいいんだけど。
きっかけ?よし…。

(水田)小麦粉を使った新しい料理?はい。
以前は餓死の危険もありましたがこの1年で食糧事情も好転してきた。
それは小麦粉の配給のおかげででそれは…あの…アメリカからの…あれのおかげなのよ。
あれって?いやいやあれよあの…アメリカが日本にくれた…。
(水田鞠子)あ〜。
まあとにかくそれでそのおかげで家庭に小麦粉がたくさんあるようになった。
でもどうやって使ったらいいか分からないからうどんかすいとんにするしかない。
でもそれじゃ飽きてくるじゃない?だから小麦粉を使った新しい料理を提案したら喜ばれるんじゃないかしら。
信じられない…。
ん?よっちゃんこれ本当に自分で考えたの?そうよ。
当たり前じゃない。
よっちゃんすごいわ!すごい。
すごいじゃない!そう?僕もそう思います。
ねえ。
私も。
悔しいけど…うん。
じゃあ次号の企画は小麦粉料理で決まりね。
行ってらっしゃいませ。
行ってらっしゃいませ。
そんな顔をするな。
すぐに仕事先を見つけてくるから。
行ってくる。

常子と花山は別々の道を歩き始める事になってしまったのです

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