ナノ粒子の世界の理論は複雑怪奇!同じ素材でもナノ粒子化することで全く違った性質を示す。そんな一例が発表されました!
二酸化ケイ素
天然に豊富に存在し、その精製法も確立されていることから、日常的に安価に使用できる二酸化ケイ素。
シリカとも呼ばれ、工業製品としては、ガラスを始めとし、シリカゲル(乾燥剤)、消臭剤などに使用されている他、化粧品のアイシャドーやファンデーション、クリームや乳液の湿気防止剤、医薬品では錠剤のコーティング剤にも使われている。
さらにはシリカの吸着性を利用し、ビールやみりん、油、醤油、ソースなどのろ過工程にも使われており、現代社会にとって重要な物質であると言える。
シリカのナノ粒子
ジョージア工科大学の研究チームは、シリカのナノ粒子をあるポリマーと組み合わせると、熱を効率よく散逸させることができることを明らかとした。
実はシリカ自体にはこのように熱を散逸させる性質はない。
だがナノ粒子にすることで、性質はガラッと変わり、良い熱伝導体となるのだ。
そこには複雑な理論物理学があり、ナノスケールの物質はその表面に特殊な効果が生まれるのだという。
Surface phonon polariton
数年前にシリカのような物質がナノ粒子にすると熱伝導性を増すという理論の論文が発表されている。
そこに欠かせないのが分極という性質だ。
物質にある特定の周波数を当てると、原子レベルで振動し、その原子の中では電気的にプラスとマイナスを帯びた箇所ができる。
この性質はほんのわずかなものなので、通常のサイズの物質では性質として現れないが、ナノレベルの微細な物質では、この性質が強く現れ、通常とは異なった性質を示すのだという。
だが、あまりにもわずかな性質なので、これまで実験的にこの性質を示した例はなかった。
これまではナノ粒子に光を当てて、その熱伝導性を測定しようとしていたが、研究チームは単にナノ粒子を熱し、その熱から生み出される光によって、ナノ粒子で現れる特異な性質を測定したのだ。
エチレングリコール
それでも実験の初期には、測定はうまく行かなかった。
研究チームは最初、シリカのナノ粒子を水で覆い、熱伝導体を作製し、測定を行ったが、水ではしっかりとナノ粒子をコーティングできず失敗している。
そこで通常、凍結保護剤として用いられるエチレングリコールをコーティング剤として用いたところ、約20倍もの熱伝導性が上がったと報告している。
エチレングリコールもシリカも安価な材料であり、大量に普及させることができる。
そこで研究チームは、熱を発し、熱で壊れてしまう電子機器にこの熱伝導体を用いることで、熱を逃がし、電子機器を保護することができると期待している。
もう全世界に普及しているものの組み合わせで、これまでと全く違った性質が得られる。それがナノの世界だったりします。まだまだナノ粒子の世界は謎がいっぱいなので、これからも新しい性質がどんどん発表されることでしょう!そしてナノ粒子が世界を変えるその日を楽しみに待っていましょう!
元記事はこちら(Engineered “Sand” May Help Cool Electronic Devices)