2016-07-29 僕は、永井香激ちゃん!
激マンキューティーハニー編の衝撃に朝からテンションがおかしい者です。
ミナミの帝王、まさかビットコインの説明が2週で終わらないなんて…
ていうかハッカーに論文脅し取られたのに変わらず仲良くしてくれるメガネ君…
ゴジラも庵野秀明も好き好き大好きなので28日の深夜に見てきたシン・ゴジラの感想文。一言でまとめると、「巨大な欠陥にさえ目をつぶれればジャンル映画としては最高に面白い。苦手分野でマイナス100点だが、得意分野で180点取ってるので80点という感じ」。以下、<あまり感心しなかったところ>と<よかったところ>とに大別してザーッと箇条書きします。あとで書き足すことはあるかもだが、書き直しはできるだけしない。
<あまり感心しなかったところ>
とくに序盤、ただの会議室みたいなシーンを全カット凝ったアングルからキメキメに撮ろうとした結果、単に見づらい、繋がってない画が頻出。ドアップの何かをナメて端っこ奥に人間とか、ほぼ真下アオリとか、たまにやるからシャレてるんであって、全カットオシャレにしようとした結果ただダサいものになる、というサンプルとしてけっこうスゴい。ただ、これは話が進むにつれていい具合に力が抜けていき、見易くなるので、しばらく我慢すれば問題ないところ。
同じく序盤、総理執務室での長い報告の場面で一瞬画面暗転して「以下、中略」とかも本当にダサい。普通にカット割れば分かるからそれ。ていうか「中略」に「以下」ってつくのか? 状況により単に「中略」か「後略」の二択だろう。こういう、無理して難しい言葉使うくせに国語的にヘンな箇所が頻出するのは、エヴァなんかでも見られる庵野脚本の大きな特徴であるので、ファンならいいかげん慣れろという話なのだろうが、俺はいつまで経っても本当に見てて冷めるし恥ずかしい。どうして誰も校正しないんだろう。絵がバツグンに上手い人でも国語の勉強は出来ないってことはあるんだ。周りがフォローしろよ。面倒なのは分かるが。
と来ればお察しのとおり当然重症なのは台詞全般で、とくに前半の閣僚級会議などの場面において、早口だとかなんとかいう問題じゃなく、あらゆる意味でリアリティーの欠如が凄まじい。背広の人と制服の人、本人の言葉とカンペ読みとで、使う言葉もリズムもまったく差別化されてなく、本当に、必要な状況説明をその場にいるキャラに割り振って順番に喋らせているだけ。緊急時にそんなテンポで会話するかよとか、そんな難しい言い回し使うかよとか、一見リアルを志向したように見えるところほどアンリアルさが際立つ。全く出来てない『日本のいちばん長い日』…という例えが適切かどうか知らんが。樋口インタビューを読むと、「登場人物は皆、頭が良くて早口な人たちなんだと役者に説明した」とか言っているが、結果として全員バカか、インプットされたお喋り人形にしか見えないという悲劇。ただ、これは単純に貶したものか難しいところで、そもそも庵野秀明とか樋口真嗣という人たちは、劇映画に本来求められる自然な会話の演出とかサラッとしたシーン運びというものに適性が(そして本質的には興味も)ない人種であることは明らかなわけで――つまり本作品の会議シーンの、会話劇として見るにはあまりにもお寒い質感というのは、「実写作品の人間ドラマという苦手分野を、特殊な方法論によるハッタリで塗り固めてなんとか押し切ろう」と明確に意図した結果であり、要するに実態は「リアルを気取ってスベッている」のではなく、「アンリアルだがこうするより他なかった」であるわけです、おそらく。実際、しつこすぎるテロップ挿入や、招集された御用学者たちの名前に(仮名)とついてるのは、「これ、あくまで再現ドラマです」という暗示と取れるわけで、つまり本作の人間ドラマパートはハナっから、テレビでよくやる『○○事件から○年――議事録と当事者への取材で今明かされる現場の真実』レベルを目指したのだと思えば、優しい気持ちになれませんか。俺は家に帰って昼まで寝て起きたら、優しくなっていました。
大体以上が、冒頭で書いた「巨大な欠陥」です。虚心坦懐に見れば、ゴジラと軍隊が出てこないシーンは全編アウトサイダーアート寸前のヤバさなのは間違いないと思うのだが、この奇形性を世間の皆様は気にするのかスルーするのか、確信が持てない。少なくとも俺は、分かっていてもキツイところはけっこうキツかった。
対して、主に物語後半に現れる「まさに神の化身」とか「本当に怖いのは人間」とか、エモーショナルなキメ台詞の類は、いちいち手垢のついた言い回しだらけでキマらないものが目白押しだが、これはまあこういうの好きな人は永遠に好きなんだろうし、好みの問題だろう。天と地と万物を繋ぎ巨大な相補性のうねりの中で自らをエネルギーの凝集体と化していればいいんじゃないですかね、純粋に人の願いをかなえるただそれだけのために。(そろそろうろおぼえ)
まんまアスカと綾波みたいなヒロインとか、日系の女性が40代で大統領って…みたいな恥ずかしいアニメ趣味ファンタジーは、死んだ目でもう許した。ていうか石原さとみに関しては、アスカ以前にブルーシードの桜さんを思い出してしまい、OH!ヒトバシラGIRL!スターチャイルド!という感じではある。
最後の凍結作戦、わざわざ新幹線爆弾で寝た子を起こしてるように見えてしまい、ベタでも「ゴジラが動き出した!作戦開始!」には出来なかったものか、と思ってしまった。あと「100%注入→予定通り凍りました」という流れも、「こちらの損耗激しく80%が限界でしたけど凍るか?凍るか?なんとか凍りました…」ぐらいの緊張があっても良かったのではないかしら。官民一致協力の凄みをあえて淡々と見せたいってのは分かるんだけど、最後だけトラブル起きな過ぎでは?という違和感はあります。実際には事故った原発に凍土壁ひとつ作れない国なわけですし、ここは。
ゴジラ。いくらなんでも足と尻尾以外動かな過ぎ。後述する第二形態がぷるぷるで生命感溢れてるだけに、最終形態の上半身の置き物感はいかがなものか。
<よかったところ>
上で触れてないとこ大体全部良かったんですが、いくつか。
ゴジラの描き方が、「海から上がってきた超生物がただ歩いてるだけで超迷惑!」とも取れるし、「東京湾に身を投げた牧なんとかいう博士個人の魂が、巨大な怪物と、それを止めるためのパズルのピースとに分かれ、現代日本を試そうとしている!」とも取れるんだけど、何にしてもあんましつこく言及されてなくて趣味がいい。GMKみたいな嫌な臭みを警戒していた身としては、嬉しい裏切り。これからゴジラを冷却し続ける果てしない公共事業が続いていく…というラストも、原発問題のミもフタもないカリカチュアとして鮮やか。いいんじゃないでしょうか。
あと、とにかく第二形態が超かわいい。ゆるキャラみたいな顔して、肉がだぶだぶ揺れてたり、アップになるとエラからドバドバ出血してたり、とにかく不潔で、生理的に不快なディテール。臭いもキツそう。進化途中の不完全生物!という感じをこう出すかーと感心。あのアホ面を真正面からバーン!と見せるファースト全身カットの悪ふざけ感、最高です。年末年始ぐらいに大体の内容が漏れ聞こえてきた時は、「ぶよぶよの生き物が陸に上がりゴジラに変化していく」と言われてバルンガとかイフとか使徒ライクなのを想像してしまい、えーゴジラでもそっち?と正直不安だったのですが、こういうのなら全然アリよ!第二形態LOVE! (逆に凍結作戦に関しては、冷凍となればマヒロデザインのスーパーX-3が出るんだろうぜ!それかアブソリュートゼロ?ウッヒョー!ってなってたので、5月に「薬剤をクレーン車で地味に流しこんでましたよ」と聞かされた俺は死んだ目で微笑んだ)
ミリタリー描写周りはどうせみんな誉めてるんだろうから省略。この人がこの素材を撮るとなったら、そりゃこのくらいは出来てくれなきゃ困るわけで、100点取れなきゃおかしい奴が100点取ってるというだけの話だと思う。ちゃんと頭と足に集中砲火とか、小さい弾から順番に撃っていくとか、いちいち正しい。
平泉成と嶋田久作が出てくると和む。ていうか嶋田久作の置き所に『大誘拐』の匂いがして、ここだけは良い岡本喜八オマージュだと思いましたね(気のせい)。
というわけでとっても面白い映画でした。
国産ゴジラはこれが最後の一匹なら本当に有終の美で最高にいいと思いましたよ。
思いましたよ。
<よかったところ・追加>
エヴァの曲がくり返し流れるたびにだんだん音が足されていって、後半はもうギュインギュイン言ってワケわかんなくなってるところ、最高にバカ。ていうかこの映画、基本スタンスとしては大真面目なんだけど、要所要所で異常にツメが甘かったり小ボケがあったりで、憎めない味わいがある。際立った傑作でも駄作でもないけど独特の愛嬌がある初代のリメイク、という点で、なんだかんだで84ぽいと思います。米軍が東京でゴジラに核を使う、というプロットの共通性を抜きにしても。
放射熱線の、ゲロ→火炎→収束して本気ビーム→炎に戻って息切れ、というシークエンス、カッコよすぎて何度でも見たい。「口から吐く武器」に「ひと呼吸」としての起承転結を与えるという発想、控えめに言っても本作最大の発明なんじゃないか。