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セーリングの水質心配 「巨大なトイレ」指摘も

セーリングの拠点となるグロリアマリーナと会場となるグワナバラ湾。奥にはポン・ジ・アスーカルが見える=リオデジャネイロで2016年7月18日、本社チャーターヘリから梅村直承撮影

 【リオデジャネイロ田原和宏】8月5日に開幕するリオデジャネイロ五輪の深刻な課題の一つがセーリング競技が行われるグワナバラ湾の水質だ。国際オリンピック委員会(IOC)は「水質のレベルは改善されている」と評価するが、リオ市在住の生物学者で環境保護運動に取り組むマリオ・モスカテリ氏(52)は「『巨大なトイレ』と呼ばれる状況は何一つ変わっていない」と指摘する。

 リオ市では下水処理施設の整備の遅れから今もなお直接下水がグワナバラ湾に流れ込み、場所によっては水面から異臭が漂う。水質の指標となる水中に溶け込む酸素の量が極めて低いという。五輪招致で政府は汚水の80%以上を浄化処理するとしたが、20年以上も湾の観察を続けてきたモスカテリ氏によれば、湾に流れ込む55の河川のうち49が「死んでいる状態」だという。

 リオ州などは招致段階で11%だった処理率が昨年までに51%まで向上した点を強調した。しかし、リオ州環境局は今月20日、地元メディアに「グワナバラ湾の水質を改善するには25年以上かかる。80%という数字はほど遠い目標だ」と目標に到達できないことを認めた。それでも、州環境局は競技海域が沿岸から離れているため、影響はないとしている。

 モスカテリ氏が懸念するのが雨だ。降雨により河川から大量のゴミなどが流入すると、一気に汚染が進む。ボート競技などの会場となるラゴア競技場の湖も、これまで魚の大量死が度々見つかっているが、これも降雨の影響と見られる。五輪が開催される8月は雨の少ない乾期だが、多くの競技施設が集まる五輪公園の付近の湖では2013年8月に10トンもの魚の死骸が見つかった。

 モスカテリ氏は6月に地元で環境保護を訴えるデモを行ったが、参加者よりも報道陣の方が多かった。市民の環境意識は高いとは言えず、州によれば回収ゴミのうち3割は企業や家庭などから正規に集められたものではなく、路上などに捨てられたものだという。10年バンクーバー冬季五輪など最近の五輪は環境への配慮を掲げていただけに、モスカテリ氏は「開幕が近づくにつれて大きなチャンスを逃したと感じる」と話した。

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