沖縄ヘリ着陸帯 強引さが解決遅らせる
政府は、沖縄県の米軍北部訓練場(東村(ひがしそん)、国頭村(くにがみそん))の返還条件になっているヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の移設工事を今月下旬、約2年ぶりに再開した。
全国から機動隊を含む数百人の警察官を動員し、抵抗する住民を排除して工事を強行するやり方は、県民感情を逆なでする恐れがある。
北部訓練場は面積約7800ヘクタールを有する沖縄県最大の米軍施設だ。日米両政府は、1996年の日米特別行動委員会(SACO)の最終報告で、半分を超える約4000ヘクタールの返還で合意したが、条件として返還区域にあるヘリパッド6カ所を残る区域に移設することになっていた。
だが、新たなヘリパッドは東村の高江という人口約150人の集落を取り囲むようにして計画され、最も近いものは民家から約400メートルしか離れていない。高江には小中学校もある。
ヘリパッドの移設計画が作られた当時、米軍輸送機オスプレイの配備は明らかにされていなかった。すでに運用が始まっている2カ所のヘリパッドには、オスプレイが飛来し、騒音は激化しているといわれる。
沖縄防衛局の調べでは、6月に高江で観測されたヘリの騒音は、昼間600回、夜間383回。1日平均では昼間20回、夜間12・8回の計32・8回に上った。2014年度の月平均と比べると、6月の夜間の騒音は約24倍にもなった。
防衛局には「子供が怖がっている」「眠れない」「夜10時以降になぜオスプレイが飛んでいるのか」といった苦情が来ている。
政府は、オスプレイなどの米軍ヘリが集落上空を避けて飛ぶよう、高江に航空標識灯を設置する対策を検討しているが、どれほどの効果があるかはわからない。
北部訓練場の周辺は自然が豊かで、隣接地域は近く国立公園に指定される予定だ。将来的には世界自然遺産登録を目指すという。
SACOから約20年たち、米海兵隊の展開が変化する中、計画通り6カ所のヘリパッドが必要なのか柔軟に考えてみる必要もあるだろう。
北部訓練場の返還計画が実現すれば、沖縄の米軍専用施設・区域の約2割が返還されることになる。
だが、航空機騒音や事故に対する住民の不安の声を軽視し、工事を強行しては、県民に新たな負担を押し付けることになるのではないか。
普天間飛行場の辺野古移設の問題に加えて、北部訓練場のヘリパッドの移設工事でも国と沖縄の対立が深まれば、沖縄の基地負担を軽減し、日米安保体制を安定的に運用するという問題の解決はますます遠のくことになりかねない。