不可解なタイミングではある。民進党の岡田代表がきのう夕、任期満了に伴う9月の党代表選には立候補しない意向を表明した。

 東京都知事選の投票日の前日。しかも、野党共闘で党が推す鳥越俊太郎候補への最後の応援演説に立つ直前のことだ。追い込みに水を差したと批判されても仕方がない。

 岡田氏は都知事選で参院選に続き野党共闘の枠組みをつくった。ただ、鳥越氏の苦戦が伝えられると、参院選直後には小さかった岡田氏の責任論が党内で徐々に大きくなっていった。

 岡田氏はこの時点での表明について「知事選とは基本的に関係ない問題だ」と説明したが、共闘をリードした野党第1党の党首としては無責任のそしりは免れまい。

 もっとも、2014年の衆院選での海江田前代表の落選を受けて選ばれた岡田氏が、これまで党の立て直しに一定の役割を果たしたのは事実だ。

 岡田氏は3月、党内の異論を押し切って維新の党と合流、党名を民主党から民進党に改めた。参院選では32の1人区すべてで野党統一候補の擁立に成功し、11選挙区で勝利した。3年前には野党系は2勝にとどまったのに比べれば、成果をあげたといえる。

 一方、安倍首相が掲げた自民、公明の与党による改選過半数の確保を許した。与党におおさか維新の会や非改選議員らも加えた「改憲勢力」が、「3分の2」になることも阻止できなかった。

 野党共闘は行き場を失いかけた政権批判票の受け皿にはなった。ただ、それは参院1人区の選挙対策としての意義にとどまり、自公の与党体制を脅かすだけの力にはなり得なかった。

 与党の大勝を見れば、首相の経済対策「アベノミクス」への批判や「3分の2阻止」だけでは、有権者からは与党に代わり得る選択肢とは見なされなかったということだ。

 岡田氏もそうした限界を認識しているようだ。きのうは「一区切りつけ、新しい人になった方が望ましいと判断した」と語った。

 次の衆院選に向けて野党共闘を進めるのかどうかは、9月15日に予定される代表選で大きな争点になるだろう。

 衆院選は政権選択を問う選挙である以上、共闘のハードルがさらに高くなるのは確かだ。

 それでも、共闘の効果をあっさりと捨て去るのはもったいない。代表選では、次につながる建設的な論争を求めたい。