遂に。遂にできたんですね!
ハカセ!
完成したんですね!
「待たせたな。依頼されていたロボットだ!」
さっそく見せてください!
「おう!こっちだ!ついてこい!」
・・・
彼は通称、ハカセ。
年は40半ばだろうか。
彼は怪人から化学兵器、建物から家具まで何でも作る。
この間は、アジトの駐車場の線を描いてた。
蜂の巣の駆除、お茶室のコンロの修理。
わずかな工具、主にノコギリで何でもできます。
アレ?なんの人なんだこの人?
ロボット頼んで大丈夫かな?
よく見るとハカセは、ニッカボッカと作業着の上に白衣を着ています。
真っ黒に日焼けした笑顔、服の上からでも分かるマッチョな男、それがハカセです。
・・・
「コイツがあればこないだのようなでけぇ宇宙人にも対抗できるぞ!」
おおー思ったよりまともにロボットだ…。
「アジトをぶっ壊されて材料がたくさん出たからな!予算内でいいもんが作れたぞ!」
すごいじゃないですか!ハカセ!
これ、どうやって動くんですか?
さっそく動かしてみましょうよ!
コクピットあるんですか?
「ワハハ!コイツはコレで動かすんだ!」
ハカセが取り出したのはレトロなデザインの…。
リモコン?遠隔操作なのか?
ボタンもレバーも少なくね?
○ンダムやヒーローの合体ロボットみたいに乗り込むんじゃないんだ。
「バカヤロー!ロボットなんてもんは乗るもんじゃねー。昔からリモコンスタイルと決まってるだろうが!常識だぞ!」
は、はぁ。
じゃあ、リモコンでいいですけど、さっそく動かしてみましょうよ!
あー楽しみだなー
誰をロボット担当にしようかなー
現場のみんなこぞってロボット担当を希望するだろーなー
「あ?何言ってるんだオメー?オメーが担当に決まってるだろうが!オメー用作ったんだからな!オメーの操作にしか反応しないぞ!」
え?そうなの?
選ばれし者しかって奴?
まいったなー
薄々は気付いてたけどニュータイプって奴?
選ばれちゃったなら仕方ないなー
「ちなみに1回出撃すると燃料とメンテナンスでこれぐらいかかる。」
…。
き、切り札にしか使えないワケですね…。
「この金額に稟議を通せるのはオメーくらいしかおらん!他の奴だと稟議書が作れん!」
選ばれし者…。
ん?
ハカセ…。
リモコンから線が出てるんですけど…。
「気付いたか!電波法はうるさいし、Wi-Fiに干渉するから有線にした!操作も安定するからな!」
いやこれ、危ないでしょう!
線絡まりますよ!
切れたらどうするんですか!
「安心しろ!絡まる程、線は長くない!そして絶対に切れん強度を技術で実現した!」
線、短い!5メートルくらい?
どっから操作するんだ!
「お腹の部分に操縦士が乗れる部分を作っておいた!むき出しだがな!」
コクピット作って下さいよ!
せめてシートベルト!
「バカヤロー!だいたいお前は現場に出なさすぎなんだよ!現場に出ろ!現場に!」
昔気質気取りやがって…。
現場最前線になるじゃねーか。
間接部門舐めんなよ!
あんた間接部門じゃねーか!
で、武器とかあるんでしょうね?
「武器?んなもんコイツにはいらねぇよ。だいたい喧嘩に武器なんざかっこ悪いんだよ!」
いやこれロボット自体が武器…。
「やかましい!んなもんなくてもなぁ!コイツにはすごい機能がある!いいから乗れ!」
私はいやいやロボットのお腹に収まり、簡易シートベルトで固定します。
「右のボタンを押してレバーを押し込め!」
するとロボットが
シャドーボクシングを始めます。
滑らかかつ、複雑な動きを再現しています。
あの、シンプルなリモコンでどういう理屈なんだ…。
「いろいろ試してみろ!適当にレバーとボタンを押せ!」
説明書とかないのかよ!
ガチャガチャやってみると、ロボットの動きはさらに激しくなります。
頭突き?ヒザ?浴びせ蹴り?
全く、操作の法則が分かりません…。
き、気持ち悪い…。
腹部の私はジェットコースターなんて目じゃない揺れに襲われます。
オロロロ
吐いてしまった…。
「きたねーな!掃除はテメーでやれよ!コイツの維持に毎月、○万かかる!稟議通しとけよ!」
二度と乗らない…。
・・・
ちなみに、稟議書作成に必要な見積を集めたところ、会議費、交際費がやたら高く計上されており、稟議は通りませんでした。
ハカセ…キャバクラから見積もり取るなよ…。
ロボットはアジトのオブジェとして飾ってあります。
子供達に人気です。
おしまい。