<クマ出没>餌豊作、繁殖進み人里へ
東北地方でツキノワグマの目撃数が増えている。鹿角市十和田大湯の山林では5月下旬、クマに襲われた男性3人が死亡する事故が相次ぎ、10日もクマの襲撃を受けたとみられる女性の遺体が見つかった。岩手、秋田、山形各県ではけが人も出ている。専門家によると、目撃数増加の要因に、ブナやドングリといった餌となる木の実が2013年と15年秋に豊作でクマの個体数が増加したことがある。
東北6県のクマの目撃件数と各県で確認されたけが人の数は表の通り。目撃件数は各県とも前年同期を大きく上回っている。
森林総合研究所(茨城県つくば市)鳥獣生態研究室の岡輝樹室長(52)は「目撃数が多いのは繁殖数が多いためでブナやドングリなどの作柄と関係がある」と指摘する。
12月から翌年4月ごろにかけて冬眠するクマは体脂肪を蓄積させるため、秋にブナやドングリなどを大量に摂取する。冬眠中の2月に出産する雌の場合、脂肪を十分に蓄えると妊娠しやすいとされる。
「13年と15年の秋は全国的にドングリ類が豊作だったため、14年と今年は繁殖数が増えた」。あきた森づくり活動サポートセンター(秋田市)所長の菅原徳蔵さん(64)はそうみる。14年に生まれたクマが成獣となって出没し、今年生まれた子グマを連れたクマも目撃されているという。
菅原さんはクマが多い理由として、狩猟者数の減少と、過疎化による土地の荒廃を挙げる。駆除される機会が減ったクマは人間の手が入らなくなった山里を浸食し、生息域を広げているという。
仙台、秋田、山形、福島の各市では市街地でも目撃されている。これは、5月下旬〜7月上旬にタケノコ(ネマガリダケ)などの餌を求めての行動だ。
菅原さんは「今年は暖冬で雪解けが早く、ネマガリダケなどが不作だった。クマの繁殖も進んだことから、山林のネマガリダケを食い尽くし、人里に降りてきているのではないか」と話す。
菅原さんによると、ブナやドングリなどは豊作と不作の年が交互に訪れる。昨秋は豊作だったものの、今秋は不作が予想される。菅原さんは「そのため、秋も餌を求めて人里に降りてくる可能性がある」と述べ、警戒を呼び掛けている。
2016年06月11日土曜日