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ゲームに取りつかれる子どもたち 中毒のメカニズムを探る

CNN.co.jp 7月30日(土)20時0分配信

(CNN) ビデオゲームに中毒性はあるのか。米国のある専門家はビデオゲームの中毒性を確信している。

アイオワ州立大学の心理学者ダグラス・ジェンティール氏は、長年このテーマを研究している。

「私が1999年に始めた最初の研究は、基本的にビデオゲームに中毒性などないことを証明するのが目的だった。しかし研究の結果、私が間違っていた」とジェンティール氏は語る。

ジェンティール氏の研究によると、米国でビデオゲームをしている子どもの約8.5%は中毒になっており、米国以外の国々でも同様の結果が出ているという。

「世界の研究者たちが、この問題について異なる定義付けを行っている可能性はある。また国によって調査対象の子どもの年齢や質問内容が異なっている可能性もあるが、全世界でほぼ同じ結果が出ている」とジェンティール氏は指摘する。

「推定値にややばらつきはあるだろうが、どの調査でも全体の4~10%という結果が出ているようだ。私はこの4~10%の子どもたちを中毒と分類している」(同氏)

手が届きやすいことが主な原因

ジェンティール氏は、ビデオゲーム中毒を生む主な原因として、ハイテク製品の入手・利用が容易になったこと、ブロードバンドインターネットの普及の2点を挙げる。

ジェンティール氏は「入手・利用が容易であることが中毒を招く要因」とし、「麻薬も入手できなければ中毒にはならない」と付け加えた。

「インターネットゲーム障害の問題が深刻化しているのはそのためだ。今や、ほぼ全ての人がパソコンを持ち、自宅にビデオゲーム機を所有する。それだけではない。今や誰もが携帯電話を所有し、その中に多くのゲームを入れているため、ほぼどこででもゲームをすることが可能だ」(ジェンティール氏)

米国精神医学会が出版した、精神障害の分類のための基準を示したマニュアル「精神障害の診断と統計マニュアル第5版(DSM-5)」では、インターネットゲーム障害は「同マニュアルに正式な障害として盛り込む前に、さらなる臨床研究・経験が必要な精神疾患」とされている。

中毒を招くABCとは

ジェンティール氏は、人がビデオゲーム中毒に陥るのは、ビデオゲームが人間の持つ3つの欲求「ABC」を満たしてくれるからだと指摘する。

「まずA(Autonomy)は自律への欲求、B(Beloging)は他の人々とつながっていたいという欲求、そしてC(Competence)はうまくなりたいという欲求だ」(ジェンティール氏)

ビデオゲームをすれば、これらすべての欲求を満たせるというわけだ。少なくとも、プレーヤーが上手にプレーをしたり、身の回りのオンラインコミュニティに参加している間はこれらの欲求を満たすことができる。

公認の心理学者で、ノッティンガム・トレント大学国際ゲーム研究ユニット(IGRU)の責任者を務めるマーク・グリフィス氏は、ビデオゲームの中毒性はつまるところ、プレーヤーがゲームをしている間、常に「報われている」ことが原因と考えている。それは、自己最高得点を更新した時の肉体的興奮の場合もあれば、自分の戦略的プレーが功を奏したと感じた時の精神的報酬の場合もある。

「これらの報酬の大半は、(少なくともある程度は)予測不可能なものだ」とグリフィス氏は指摘する。

「いつ次の報酬が得られるか分からないからこそゲームにのめり込んでしまう。つまり、彼らはたとえすぐに報酬を得られなくてもゲームを続けてしまうのだ。彼らはもう少しプレーすれば報酬が得られると信じてプレーを続ける」(同氏)

またグリフィス氏は、この10年間でゲームの主流が1台のゲーム機で完結するスタンドアロンのタイプから、終りがなく、中断もできない巨大な多人数参加型のオンラインゲームにシフトしてきたと指摘する。

グリフィス氏は、「多くのゲーム中毒者は、パソコンをログオフしてオンラインゲームから離れることを嫌う」とし、さらに「常にオンラインでないとゲーム内で今何が起こっているか分からないため、彼らはパソコンから離れたがらない」と付け加えた。

ゲームが娯楽の範囲を超えてしまったら

しかし、ゲームを健全に楽しんでいるだけなのか、あるいは病みつきになっているのかをどのように見分ければいいのか。中毒の一般的定義は存在しないが、ジェンティール氏は、中毒者の主な特徴として「日常生活に支障を来している」点を挙げる。

「初期の研究で、学校の成績が落ちたり、友達や家族との関係に支障を来す子どもがいることが分かってきた。彼らは、ゲームのことが頭から離れず、ゲーム以外のことはしたがらなかった」(ジェンティール氏)

カリフォルニア州南部に住むグリフィン・マシュー君は、16歳ながら、すでにインターネットゲーム障害の治療を受けている。グリフィン君の母ノエルさんによると、グリフィン君は不安やうつに悩まされているという。

グリフィン君がビデオゲームと出会ったのは10歳の時だ。グリフィン君の両親は、時間の経過とともに、グリフィン君の行動が変化し始めたことに気付いた。ノエルさんの一番の心配はグリフィン君が孤立していることだ。

「(グリフィン君が)ゲームをする時間が次第に増えていき、それに伴って家族との時間や友達と付き合う時間が減っていった」とノエルさんは語る。

「中学に入るとその傾向はさらに強まり、8年生(中学2年)の頃、グリフィンは別人になってしまった」とノエルさんは振り返る。

昨年夏、両親はグリフィン君をユタ州のアウトバック・セラピューティック・エクスペディションと呼ばれる治療プログラムに参加させた。そこでグリフィン君は屋外で過ごし、ゲームのない生活をした。

グリフィン君は6週間の治療を受けた後、自宅に戻った。ノエルさんによると、グリフィン君は今でもハイテク製品の使用やうつに悩んでいるという。

グリフィン君は、これはゲームだけの問題ではないと指摘する。

「今、自分が直面している問題は、身の回りで起きていることだけが原因ではなく、自宅に引きこもり、他の人に自分のことを話そうとしないことにも原因があるということを他の子どもたちにも認識してもらいたい。自宅でパソコンの前に座って画面を見ているだけでは問題は解決しない」(グリフィン君)

最終更新:7月30日(土)20時0分

CNN.co.jp

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