マーケットに参加していると、「アメリカの雇用統計」という指標が非常に重要視されていることがわかると思います。アメリカ市場だけではなく、世界のマーケットにおいてもっとも重要視されている指標のひとつです。
特に、為替市場(FX)に身を置いている人にとっては、毎月この指標によって大きく市場が動くことを実感しているのではないでしょうか。
毎月第一金曜日の朝8:30(日本時間22:30、サマータイムは21:30)に発表されるこの指標が、なぜここまで市場において重要視されているのか、わかりやすく解説してみたいと思います。
「雇用統計」とは何か?
アメリカの中央銀行に当たるFRBは、金融政策を決めるときに「物価」と「雇用」という2つの状況を考慮して判断しています。
そのうちの「雇用」については、毎月発表される「雇用統計」が大きな判断材料となります。
今のアメリカは利上げ方向に舵を切っていますが、利上げするかどうかの判断に雇用統計は非常に重要視されています。
それでは「雇用統計」とはいったい何を指すのでしょうか。「雇用統計」というのはいくつもの項目に分かれており、その中でもマーケットが一番重要視しているのが「非農業部門雇用者数」です。簡単に言うと、「農業以外の分野で給料をもらっている人がどれだけいるか」という数字です。
この雇用者数が前月よりどれだけ増えたか、というのが注目されます。
なぜ「非農業部門雇用者数」は増えなければいけないのか?
米国は移民の国です。各国から毎日多くの移民がアメリカにやってきています。
アメリカのGDPの約7割は個人消費であり、個人がどれだけ安定的に収入を得て消費できるか、ということが大切です。
アメリカ経済が現在の状態を維持するには、毎月10万人の非農業部門雇用者数の増加が必要だと言われています。
そして、アメリカ経済が成長するためには毎月20万人の増加が必要だと言われています。
つまり、20万人を下回ると「あんまり景気良くないね」となり、10万人を下回ると「アメリカどうした」といってマーケットが動揺するわけです。
「非農業部門雇用者数」はアメリカ経済をリアルタイムに映す数字
アメリカは日本のように正規雇用が主流ではなく、企業の業績が悪くなればスパっとリストラします。雇用の柔軟性がとても高いのです。
それがいいのか悪いのかは置いておいて、そういった背景を考えると、雇用者数というのが企業の業績や先行きを表しやすいということがわかりますね。
だから、アメリカの雇用統計のうち「非農業部門雇用者数」は「アメリカ経済をリアルタイムに映す指標」として重宝されています。
「雇用統計」の中で「非農業部門雇用者数」と同じくらい重要視されているのが「失業率」です。これは日本でも有名な指標ですが、「失業率」はその国の経済の実態から少し遅れて反映される(大体半年ぐらい)、とみられています。
「非農業部門雇用者数」が良ければ円安ドル高方向へ
それでは「非農業部門雇用者数」が良い数字を叩き出すと、どのような影響が生まれるのか。
「非農業部門雇用者数」が予想より多ければ、アメリカの経済が堅調に推移している、と見られます。簡単に言うと、景気が良いってことです。景気が良ければ、企業の業績が上がり、給料も上がり、物価も上がります。市場経済がインフレ方向に傾けば、アメリカの中央銀行であるFRBは「利上げ」というかたちでインフレにブレーキをかけようとします。
利上げをすれば、ドルの価値は上がるので、みんなドルを買おうとするわけです。だから、円安ドル高方向へ進むわけですね。
「非農業部門雇用者数」の数字が悪ければ、逆方向へ進む可能性が高くなります。
ここ最近の「非農業部門雇用者数」の推移
2016年5月の「非農業部門雇用者数」は3.8万人という衝撃の数字でした(その後下方修正され1.1万人)。
これはマーケットに衝撃を与え、利上げ方向に舵を切っていたFRBが「利下げするのではないか」とまで言われました。
しかし、先日発表された6月の「非農業部門雇用者数」は28.7万人と大幅に増加しました。この数字を見て、多くの市場関係者が「アメリカ経済は堅調だ」と胸をなでおろしたことでしょう。EU離脱のショックもあったため、この雇用者数増加のニュースは久々にポジティブなニュースとして好意的に受け取られました。
まとめと今後のアメリカ経済
アメリカは、今年中に何度か利上げをすると見られています。その判断材料として雇用統計の「非農業部門雇用者数」を重視しているのは間違いありません。
6月の良い数字を受けて、市場関係者の利上げ観測はさらに高まりました。
FRBの動向、世界経済の行く末を予測するためにも、アメリカの雇用統計はしっかりとチェックしていきたい指標です。
関連記事・リンク
米・非農業部門雇用者数 / 米・失業率(雇用統計)|FX経済指標|みんなの外為
私はいつもこのリンク先ページで雇用統計の数字をチェックしています。