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石川

眠る思い出 色あせない アルバム写真をデジタル化

自身のアルバム写真をデジタル化する三浦唯さん=石川県かほく市で

写真

PFU「Omoidori」企画の三浦さん

 スキャナー大手のPFU(石川県かほく市)が六月に発売した、アルバムの写真を効率よくデジタル化できるスキャナー「Omoidori(おもいどり)」は、企画担当の三浦唯さん(28)=金沢市=の“思い”が詰まった製品だ。急速に進むデジタル化の時代、アナログで残った思い出の価値を問い直す。(曽布川剛)

 本体にiPhone(アイフォーン)を取り付けて扇状に開き、スキャンしたい写真の上にセット。ボタンを押すと二方向からフラッシュ撮影して反射を補正するので、アルバムのフィルムをはがす必要はない。「顔の向きを自動認識し必要なら回転してデータ保存できる。赤目補正、日付認識機能もあります」。ユーザー目線にこだわった。

 開発のきっかけは東日本大震災。変わり果てた自宅から写真アルバムを持ち帰る被災者の姿が報道され、開発陣が写真を整理・保存するニーズに着目した。

 商品化を引き継いだのは三年前。大学生のころからデジカメで写真を撮ってきた身としては、正直なところ「使ってみたい」とは思わなかったが、まずは市場ニーズを調査してみた。二十〜六十代の社員に対面アンケートすると「アルバムは手元に残したいけど、嫁いでいく娘に思い出写真を贈りたい」(五十代男性)、「親の金婚式に思い出ムービーを作りたい」(四十代男性)などと熱い思いが続出した。

 「年配の方が写真への思い入れが強いのかな」。ターゲットが見えだしたころ、写真の価値を再認識する出来事があった。親にねだって十五年前から飼っていた愛犬が亡くなった。

 ずっと実家暮らしなので一緒にいるのが当たり前だった。でもスマートフォンには最近の写真しか残っていない。自宅にある写真を家族で探し、一番かわいかった一歳前の一枚をスマホカバーにプリントした。写真が残っていたおかげで今もずっと一緒にいられる。

 デジタル化した写真データの活用も企画課題だった。厳選した写真をフォトブックにすることを提案。実際に自分が生まれてから二十歳ごろまでの写真二十枚でフォトブックを作り、離れて暮らす祖母(82)にプレゼントすると喜んでくれた。他にも、アルバム写真二百枚をスキャンして母(57)とスマホで共有した。懐かしそうに見てくれている。

 「小さいころの写真は残っているが中学生以降は少ない。残っていないからこそ何とか親孝行したくなるんです」。次に自分で使うのは高校の同窓会か自分の結婚式か。Omoidoriを使えばアルバムに眠る幸せな一瞬も色あせることはない。

 

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