トップ > 一面 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

一面

興正寺が土地売却益6億6000万円申告漏れ 国税も「一部不明瞭」

 高野山真言宗の別格本山、八事山興正寺(名古屋市昭和区)が、名古屋国税局の税務調査を受け、二〇一五年三月期までの三年間で約六億六千万円の申告漏れを指摘されたことが分かった。過少申告加算税などを含め法人税約八千万円を追徴課税され、高野山側が修正申告に応じた。国税局の調査では中京大に対する土地売却益の百三十八億八千万円の使途も解明され、一部を「実態が不明瞭」な支出と認定したという。

 同寺は梅村正昭(せいしょう)前住職(68)が在任中の一二年三月、隣接する中京大に貸していた六万六千平方メートルを売却。だが、総本山の高野山金剛峯寺(和歌山県高野町)は「無断で売却され、宗規に定めた3%の約四億円を納めていない」として、前住職を罷免し、対立が続いている。

 関係者によると、売却益の四割にあたる約六十億円は、NPO法人の男性役員(73)が代表を務める東京都港区のコンサルタント会社や、前住職が51%を出資し設立した英国の法人などに渡っていたことが判明。土地、資産の取得や銀行の借入金返済などにも使われ、預金口座に残っていたのは十一億円余だった。

 高野山側の説明では、コンサル会社に渡った約四十二億円のうち「八事再開発事業」の業務委託料名目で支払われた二億五千二百万円について、国税局が「業務の成果がなく、実態が不明瞭」と認定。営利目的の収益事業の経費とは認められず、申告漏れと指摘された。

 この会社に対する二十四億七千万円、前住職出資の英国法人への二十五億円、東京都渋谷区の芸能プロダクション運営会社への一億三千万円については、国税局が貸付金と認定。利息を計上していないとして、申告漏れとされたという。

 高野山側は前住職の罷免後、添田隆昭(りゅうしょう)宗務総長(69)を同寺の特任住職に任命。国税局は、登記上の代表である特任住職に申告漏れを通知した。

 添田氏は「会計資料が前住職側から引き渡されず、国税当局の指摘をそのまま受け入れた」とし「前住職は責任追及の対象になると考える。損害賠償のみならず、背任容疑での刑事告訴も視野に検討している」とコメントした。

 梅村前住職と代理人弁護士は本紙の取材に「お話しすることはない」、コンサル会社の代理人弁護士も「何も言えない」としている。

 宗教法人は宗教活動や公益事業には課税されないが、営利目的の収益事業で生じた所得には法人税が課される。

 <八事山興正寺> 弘法大師・空海を開基とする高野山真言宗の別格本山で「尾張高野」とも呼ばれる。1688年建立。尾張徳川家の祈願所とされ、僧の修行とともに大衆信仰の寺としても栄えた。境内の五重塔は国の重要文化財に指定されている。梅村正昭前住職が罷免後も寺にとどまっており、高野山側は寺の真向かいにプレハブの本堂を設けている。

 

この記事を印刷する

中日新聞・北陸中日新聞・日刊県民福井 読者の方は中日新聞プラスで豊富な記事を読めます。

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索