西村宏治 岩沢志気、新田哲史
2016年7月30日18時29分
スマホゲーム、「ポケモンGO」は、日本でのサービス開始から1週間を過ぎた。国内の利用者はすでに1千万人を超えたとみられる。公園などに人が集まる社会現象を巻き起こしているが、駅や裁判所などでポケモンを出現させないように求める動きもある。
調査会社ヴァリューズ(東京)の推計では、日本で配信が始まった22日からの3日間でゲームのアプリをダウンロードしたのは約1147万人。いまも増えているとみられるが、運営側は利用者数は公表していない。
任天堂(京都)と関連会社の「ポケモン」(東京)、米国のゲーム会社「ナイアンティック」が共同で企画した。ゲームの開発や運営はナイアンティック社が担う。
いま問題となっているのは、思わぬ所にポケモンが出現することと、公共施設などにゲーム上の「拠点」が設定されていることだ。
ポケモンはいろいろな場所に現れていて、原子力発電所の敷地内でピカチュウが見つかることもあった。全国のJRや私鉄など32の鉄道事業者は26日、線路や駅に出現させないよう同社などに要請した。
だが特定の場所にピンポイントで出現させないようにできるかどうか、はっきりしない。位置情報機能(GPS)の精度の限界もあり、「駅の中はすべて避けて駅前の広場にだけ出現させる」といったことは、技術的に難しいとの指摘もある。
ナイアンティック社などは「技術的に削除できるかどうかなどは現時点でコメントできない。要請は真摯(しんし)に受け止めている」としている。歯切れが悪い理由には、出現のメカニズムについて詳しく公表するとゲームの楽しみが成立しにくくなる恐れもありそうだ。
これに対しゲーム上の「拠点」については、削除できる仕組みになっている。国会議事堂内には道具が手に入る「ポケストップ」が12カ所確認されていて、衆院議院運営委員会は「削除要請を考える」との意見が出た。祇園祭などで知られる京都・八坂神社は「神聖な場所にゲームはそぐわない」として、境内のポケストップを削除するよう求めたという。
同社は拠点の削除要請をホームページで受け付けている。件数は公表していないが「不適切なものには対応している」という。
こうした拠点は、ナイアンティック社が12年に発表した位置情報ゲーム「Ingress(イングレス)」のデータを活用している。イングレスは各地に登録された拠点を2陣営に分かれたプレーヤーが奪い合う。拠点はランドマークをもとに、世界中のプレーヤーが同社に申請して登録してきた。ポケモンGOはこれらのうち、混雑する駅などを除いた安全性の高いところを利用しているという。ただ登録はほとんどの場合、施設の管理者らに許可はとっていない。安全性の判断基準も不明確だ。
新しいゲームだけに問題点はあるが、それを理解した上で楽しむことも求められる。エコノミストでニッセイ基礎研究所の櫨(はじ)浩一・専務理事は「技術の進歩で新しいものが出てきた際に、あれもダメこれもダメと全部否定しては何もできなくなってしまう。ルールをつくりながら適切な使い方を考えていくことが大事だ」という。
立命館大学の中村彰憲教授(ゲ…
残り:809文字/全文:2098文字
有料会員に登録すると全ての記事が読み放題です。
お得なシンプルコース980円が登場しました。詳しい内容はこちら
新着ニュース
おすすめコンテンツ