日差しの強い日が続き、若者から年配の女性まで愛用している日傘。だが、大阪ミナミで、アジア、欧米など9カ国の訪日外国人女性に聞くと、「使わない」と答え、ほとんどが一度も使用経験がなかった。大手空調メーカーの外国人へのアンケートでも、驚いたり感心したりした日本の暑さ対策は「日傘をさす」が最多。世界で日本の日傘文化は“特異”なのだろうか。(張英壽)
「日傘は真夏でもしないですね。どんなにカンカン照りでも…。おばさんが使うもの」
韓国・ソウルから訪れた女子大学生、閔智援(ミンジウォン)さん(21)はこう答えた。
訪日外国人でにぎわう道頓堀周辺(大阪市中央区)で、各国の女性たちに日傘をさすかどうか質問した。
道頓堀のベンチに座っていた中国・上海市の女性(26)も一度も使ったことがなかった。「傘は雨のときだけ」
ドラッグストアで働いていた中国・四川省出身の陳子●さん(24)も日傘経験はなく、中国での日傘事情について、「日傘をさすのは30代以上」と流暢(りゅうちょう)な日本語で教えてくれた。
オーストラリアの女性医師(24)は、使ったことがあるかと問うと「ネバー(一度もない)」と答え、日傘をさす習慣について「おかしい」と話した。米国の45歳と50歳の女性も使用経験がなかった。ただ日焼け止めクリームを塗るという回答は多かった。
タイ・チェンマイから来たホテルオーナーの女性(33)も日傘経験がなく、「白い肌になりたいのはタイでも同じだけど、日本の日傘習慣はちょっと変」と感想を述べた。
イタリアからハネムーンで来日し、夫と道頓堀を散策していたジャーナリストのモニカ・タリコーネさん(27)は「イタリアでは使わない。みなバケーション(休暇)に行き、白い肌は健康的ではない」。
日本でも、バブル時代やその前は日焼けが流行。「20代前半の頃、日焼けするのが格好よかった」と振り返った堺市南区の会社員の女性(47)。だが「今はシミがたくさんできて後悔している。10年ほど前から日傘を持つようになった」と打ち明けた。
空調メーカーのダイキン工業は一昨年、東京在住の外国人100人を対象に「東京の夏の暑さ」をテーマにしたアンケートを実施。「東京の夏の暑さ対策で、感心した・驚いた対策はあるか」と聞いたところ、1位は「日傘をさす」(46%)だった。
日傘をさす習慣は日本だけなのだろうか。
洋傘・日傘メーカー大手の「ムーンバット」(本社・京都市)で、長年製品を開発してきた大原孝二さん(70)は「ヨーロッパでは紫外線を遮ることにそれほど関心がない。また紫外線が強いオーストラリアでは帽子が主体。中国や東南アジアでは、日傘という概念自体がなく、日差しが強いときは、雨傘を日傘として使うことがある」と話す。ただし中国の大都市では最近、日傘が販売されるようになったという。
大原さんによると、日傘はもともと19世紀のフランスで文化として花開いた。フランスの印象派の画家、クロード・モネも、日傘の女性を描いている。現代のヨーロッパではなぜかその習慣が廃れ、日本で定着している。
日本では和服とともに日傘は愛用されたが、若い女性に人気がなかった。変化が起きたのは、二十数年前にUV(紫外線)用の加工がされた日傘が市場に出てからだ。それまでUVカット率は50%程度だったが、UV加工の日傘は80~90%台のカットが可能になった。若い女性もさすようになり、若者から年配まで日傘をさす習慣が広がった。
大原さんの説明では、日傘をさす習慣は日本独特ということになる。大原さんは「日傘文化は日本しかない」と断言した。
●=木へんに貞
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