高コレステロール:クレストールは筋肉が溶ける、リピトールで床ずれにほか
コレステロールの値をコントロールし、高脂血症患者の心筋梗塞や脳血管障害の発症リスクを下げる薬の代表格はスタチン(クレストール、リピトールなど)だ。
これはもともと日本で発見された酵素を元に開発された薬である。
「スタチンの副作用として有名なのは、横紋筋融解症です。これは横紋筋と呼ばれる筋肉の細胞が溶けてしまい、筋細胞の成分が血の中に流れ出てしまう症状です。
最初は筋肉痛で始まることが多く、筋肉量の多い太ももに出やすい。薬を飲み始めて、運動をしたわけでもないのに筋肉に痛みを感じたり、手足に力が入らなかったり、尿が赤褐色になったりしたら副作用を疑ったほうがいいでしょう」(ナビタスクリニック・佐藤智彦医師)
筋肉が溶け出すとミオグロビンやクレアチンキナーゼといった物質が血中に流れ出す。そしてそれらの物質は腎臓の尿細管に沈着し、急性の腎不全を起こす。その場合、尿が出ない、むくみ、呼吸困難などの症状が伴う。ひどい場合は発熱、吐き気、腹痛に悩まされることもあり、さらに重症化すれば命にかかわる。
横紋筋融解症は他の抗高脂血症薬との併用で副作用が出る確率が高まるので、コレステロールの薬を複数飲んでいる人は特に気をつけたい。またシクロスポリンという免疫抑制剤との併用も同様の副作用がある。
「他にもスタチン系の薬を長期間服用すると糖尿病の発症リスクが上昇するという研究もあり、ヨーロッパでは当局による注意喚起が行われています。また、アメリカの食品医薬品局は認知機能に障害をもたらす可能性を指摘しています」(大学病院循環器系内科医)
スタチンが心筋梗塞のリスクとなる悪玉コレステロールだけを減少させてくれるなら問題はない。だが、この薬は人体にとって有用な成分も低下させてしまう。
たとえばコエンザイムQ10と呼ばれる物質。最近ではアンチエイジングのサプリメントなどにもなっているが、抗酸化作用があると言われている。スタチンはこのような物質も減少させてしまう。
「スタチンは善玉のコレステロールも減少させるので、高齢者などは床ずれが治りにくいなどの症状も見られる」(かもめメディカルケアセンター施設長・藤井昭夫氏)
コレステロールといえば悪玉というイメージが付きまとうが、この物質は高齢者に限らず、皮膚や筋肉を作るのに重要な役割を果たしている。とくに日本人女性はコレステロールが原因で心筋梗塞になる可能性がほとんどない。無理して薬を飲んでも、何の意味もないのだ。
横紋筋融解症以外の重い副作用として指摘されているのは、ミオパチー(手足のしびれ・けいれん、歩行困難、力が入らないなど)、肝炎・肝障害による食欲不振、吐き気、発熱、発疹、黄疸。さらには重い過敏症(発疹、じんましん、咳)、間質性肺炎、腹痛、便秘、下痢などと副作用のオンパレードだ。
自分のコレステロール値が本当にこれだけの副作用のリスクを取ってまで下げるべきものなのか、一度考え直してみる必要がある。
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