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欧州主要51行、景気失速なら資本30兆円減少

2016/7/30 5:09 (2016/7/30 13:26更新)
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 【ロンドン=鳳山太成】欧州連合(EU)の銀行監督機関、欧州銀行監督機構(EBA)は29日、主要51行の健全性を点検する資産査定(ストレステスト)の結果を発表した。景気が失速した場合、3年間で普通株など中核的自己資本が計2690億ユーロ(約30兆7000億円)減る。査定結果が最も厳しく、資本不足に陥る恐れがあるイタリア3位のモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナは同日、増資を柱とする再建策を発表した。

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 査定では、2018年にかけて域内の景気が一時マイナス成長に陥る事態を想定。各銀行への影響を15年末の財務状況を基に試算した。51行全体の健全性を示す中核的自己資本比率は15年末の13.2%から18年末に9.4%に下がる。今後導入が予定される新たな規制を加味して厳しめに見積もると9.2%となる。

 巨額の不良債権を抱え、市場が注目する伊モンテパスキの同比率は12.01%からマイナス2.23%になるという最も厳しい結果が示された。同行は29日、最大50億ユーロの増資をめざすと発表した。

 このほか英ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド、投資銀行部門が不調のドイツ銀行なども同比率が5ポイント以上下がる。英国のEU離脱決定など世界経済の先行きが不透明になるなか、欧州の銀行が抱えるリスクが改めて浮き彫りになった。

 14年に欧州中央銀行(ECB)が実施した前回の査定では、自己資本比率の「合格ライン」を設け、25行を「不合格」と判定した。今回は金融危機をおおむね脱したとの理由で、個別の銀行の合否を判断しなかった。今後、ECBなど各国当局が必要に応じて経営の健全化を促すこととなる。

 今回の査定対象の銀行はEU内の銀行部門の資産の7割を占める。査定では英のEU離脱や、マイナス金利については直接考慮に入れていないが、EBAは「英国がEUを離脱した場合よりもはるかに厳しい前提で試算した」と説明している。

 ▼資産査定(ストレステスト) 経済状況が悪化したり、金融市場が混乱したりしても業務が続けられるか、銀行の抵抗力の強さをみる点検手法のこと。2008年の金融危機でそれまで健全とされてきた銀行が相次ぎ経営不振に陥った反省を受け、先進国では定期的に実施している。監督当局が銀行の保有する国債や株式、融資などの状況をくまなく調べる。

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