2016-07-30
■誰も見たことがない、一番見たかったゴジラ。そしてこれは、人間、庵野秀明の集大成である。 
ゴジラは日本が産んだ世界的コンテンツである。
だが・・・
誤解を恐れずに言えば、ゴジラは常に「期待はずれ」だった。
謎の巨大生物の襲来
だがゴジラは第一作のインパクトがデカすぎるが故に、迷走した。
正直言って僕が過去28作のゴジラの中で、好きなゴジラ映画は三作しかなかった。
昭和29年、元祖「ゴジラ」と、平成元年の「ゴジラ」、そして「ゴジラvsビオランテ」である。
この他のゴジラは、迷走の軌跡でしかない。
シェーのポーズをするなど、もはや怪獣でもなんでもないところまで堕落し、馬鹿にされ、飽きられた。
そして2000年代に入っても作られ続ける「ヌルい」ゴジラ作品の数々。
もはや誰をターゲットにしているのかもわからない。
バカバカし過ぎて子供にさえ馬鹿にされ、それでも一部の特撮マニアのノスタルジーのためだけに作られ続けるゴジラ。
世界的コンテンツであったはずのゴジラは、長い時を経て僕から見れば、場末のバーでシャンソンを歌うレベルまで堕落していた。
誰もがゴジラをゴジラとして、巨大生物として描くことを怠り、様式美に逃げた。荒唐無稽なストーリーと、地底人や未来人、宇宙人といったものが脈絡なくやってきて、呼吸するように日本語を喋ることに違和感を持たない世界観で、まあハッキリ行って、手抜きをしていたと思う。
むかしからの友人が、深夜上映を見に行く、という連絡がLINEで入った。
彼は8つ上だが、普段はゴジラとかを絶対にみない人だ。
それが、深夜にシン・ゴジラを見に行く。
彼なりになにか感じることがあったのだろう。
そして二時間後、「良かった。ビオランテ以来の傑作だった」という一方が入った。
そのとき僕の背筋にビビッと衝撃が走った。
「ビオランテ以来」
それはある種のゴジラファン、いや、ここは敢えて「シンのゴジラファン」と呼ぼうか。
ゴジラの話をするとき、どのゴジラが好きだったかで意見が別れる。
エリックは2000年以降のゴジラが好きだという。
だがオレは怪獣プロレスになど興味はない。
巨大生物の襲来ということに対して、人類がどう立ち向かうか。
それが見たいのだ。
つまりゴジラとはパニックムービーである。
そこにへんな小さい双子の美女や、地点人や宇宙人が出てくれば、せっかくのシリアスな設定が台無しになってしまう。
元祖ゴジラの産んだ感動とは、原爆が生み出してしまった悲劇の巨大生物を、さらに原水爆を上回る究極兵器オキシジェン・デストロイヤーを開発し、これが軍事利用されることを嫌って、ゴジラもろとも自爆を図った一ノ谷博士のヒロイズムではなかったか。
そのヒロイズムを継承したのは、残念ながら平成ゴジラと、「ゴジラvsビオランテ」までではなかったか。
若くして死んでしまった自分の娘の遺伝子と、ゴジラ細胞の融合、禁断の研究に手を出してまで、娘を生かしたかった白神博士の苦悩。
そして生まれて待ったゴジラと同じ細胞を持つ巨大食獣植物、ビオランテ。
みんな真剣だった。
「ゴジラとビオランテ、どちらが勝つのでしょうか」
「関係ない。勝ったほうが人類の敵になるだけだ」
このニヒリズム。
痺れる。
スーパーX2は頂けないが、全体を流れるトーンと緊張感は素晴らしい。
僕はゴジラVSビオランテのワイヤーフレームを見て、リアルタイム3Dの世界に入った。
子供だった僕は、世界の何処かにはあれをリアルタイムで処理する機械があると信じて疑わなかった。
再放送されるたびに目を皿のようにして見たビオランテ。
ところがそれに続いたゴジラVSキングギドラは衝撃的な駄作だった。駄作にまた戻ってしまった。
その後のゴジラは「ファミリー路線」の錦旗を掲げて荒唐無稽さを増していき、どこにもいない子供を適当にたぶらかす観客不在の子供だましが横行した。なにしろ僕はその当時子供だったのだから、毎回、ろくでもない脚本と設定にガッカリし、それでも「次こそはビオランテ」と諦めずに映画館に通い、そして通う度に落胆するということを繰り返していた。
興行成績そのものは上がっていったらしいが、テレビでゴジラVSビオランテを再放送した影響もあったのではないかと思う。それくらい、ゴジラVSビオランテのインパクトは大きかった。僕の世代には。
そこで旧知の友人の「ビオランテ以来の傑作」という報告の重みがわかるだろうか。
オレたちはずっと待っていたのだ。
ビオランテ以来の作品を。シンのゴジラを。人類とゴジラの真正面からの戦いを。
そう思うと、居ても立ってもいられない。
どうしても見たくて、予定を繰り上げて飛行機に飛び乗って、ロサンゼルスから日本に帰ってきた。
そしてシン・ゴジラを見た。
感動した。
これだ、これがずっとオレが見たかったゴジラなんだ。
元祖「ゴジラ」、そして平成「ゴジラ」と「ゴジラvsビオランテ」、この三作品が好きな人は確実にハマる映画だろう。
そして、「トップをねらえ」以来の庵野秀明ファンは、「そうか、これがやりたかったのか」と膝を打つこと請け合いの出来である。
これでもう「アニメ監督は実写では駄作を作る」といは言われないだろう。
これが、こういうゴジラが、見たかったのだ、オレたちは。
ずっとずっと、見たかった。
この作品は、単に賞賛するというレベルには値しない。
ビオランテ以来の傑作、いや、全てのゴジラ作品の中で最高傑作であることは間違いない。少なくともオレの中で。異論は認めん。
だが、全ての日本映画の中の最高傑作かといえば、そこは疑問が残る。海外で一般受けするかといえば、まだ厳しいだろう。
正直言えば、不満も少なくない。もっと演出をがんばれたのではないか、という疑問もある。けれども、けれども、どうしても、これだけは言いたい。
よくぞ、作ってくれた。
トップ、ナディア、エヴァ、のぼう、進撃・・・・全ては、この作品のためにあった。
庵野秀明という人間の人生の集大成とも言える映画だと思う。
まさか、旧劇場版エヴァンゲリオンよりも「集大成」という言葉が相応しい作品が出現するとは思わなかった。
今回に限っては、樋口真嗣は"監督"に徹し、庵野秀明の描く世界観を忠実に描ききることだけに専念した。だから画面作りは樋口真嗣であっても、物語はあくまで庵野秀明である。そしてそれは、想像を絶するほど素晴らしいものだった。
ある若い庵野秀明ファンは、劇場で涙したらしい。
泣くようなシーンは一切ない。
けれども、長年のファンならば、感極まって涙腺が緩むこともあるだろう。
全ての庵野秀明ファンが見るべき映画であることは間違いない。
もういちど、言う。
よくぞ作ってくれた。
ありがとうございます。
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