小学校にはプールがないのに韓国で義務化された水泳教育

プールがある小学校はわずか1%

 ソウル市冠岳区のある小学校の場合、教頭の説明によると、バスを借りて児童たちをプールに連れていき、1時間授業をしてから戻ってくるまで2-3時間はかかるという。しかもプールは希望する日時に思い通り借りられないことから、時には1カ月に1回しか授業ができないこともある。教頭は「水泳は短期間で集中的に指導しないと効果が上がらない」と現状を嘆く。

 またソウル市松坡区のある小学校の教諭によると、毎年2月になれば8月の予約を取るため周辺のプールに電話をかけまくるが、希望する日時に予約を取れることはほとんどないという。この小学校は結局1日もプールの予約ができなかったため、4年生は水泳の授業が1回もできなかった。

■民間がプールを建設するよう政府が誘導を

 欧州や日本などの先進国では、昔から小学校での水泳授業を義務づけている。水に溺れるようなことがあった場合、救助を受けるまでの対応や、他の人が溺れた場合の救助法などを必ず学習するわけだ。日本では1955年に起こった紫雲丸事故の際、修学旅行中の小学校児童を中心に168人もの犠牲者が出たことから、全国の全ての小学校で水泳の授業を義務づけるようになった。現在、日本の小学校は屋内外を合わせて全体の90%が自前のプールを持つという。

 韓国でも旅客船セウォル号沈没事故などをきっかけに水泳授業、とりわけ水難事故防止のための水泳授業に力を入れることになった。しかしプールの建設には最低でも30億ウォン(約2億8000万円)はかかるため、政府は全ての小学校にプールを設置するのは現実的に不可能と考えている。それでも教育部は2018年度までにプールが一つもない全国18の地域を対象に、プール施設付きの体育館を優先的に建設する計画を進めている。

 しかし教育部のある関係者は「18カ所にプールを建設したところで、問題の根本的な解決にはならない」とした上で、運動場に簡易プールを設置することも検討していることを明らかにした。また専門家も「すでにある公共施設や民間のプールを積極的に活用し、新しいプール建設も民間が行うよう誘導すべきだ」と指摘する。

 韓国体育大学のユク・ヒョンチョル教授は「自前のプールを持つ大学やホテル、デパートなどに対し、小学生の教育目的の利用にはプールの開放を義務づけ、また大手や中小に関係なく企業が社会貢献目的でプールを建設する場合は税控除を行うなど、政策面でプール建設を後押しすべきだ」と主張している。

チョン・ギョンファ記者 , キム・ジヨン記者
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