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そんなあたしの大逆襲
あの夜、牧瀬さんが言っていた。
「興味が無くても、関心だけは持っていた方がいいわ」
その後、柏木アシスタントマネージャーも言っていた
「心底、信じるとかしなくてもいい。相手を尊敬しようとする謙虚さとかね?あればそれだけで良いと思うの」
これは、同じ物流業界で働くオトナのオンナたちの訓示。
打ち上げは、ホント…仕事と人生の荒波を越えてきた大人たちが醸す独特の余裕に溢れてて、本当に楽しかった。
柏木アシスタントマネージャーが言ってた。
「ある程度までは、若さと気合いで頑張れるんだけど、いつかは息詰まるのよね。
物流は特に男社会じゃない? でも、自分は女性で、男の人たちと同じような働き方は出来ない…そこを受け入れたら、少し事が簡単に進むようになったわ」
あたしね、すごい…その言葉にストンと納得できたの。
ほんの数ヶ月前まで、アタシは正直腐ってたと思う。男社会の中で 思うようにならなくて… パワーだけを持て余してた。
でも、そこから あたしは変われたと思う。色んな人に出会って、いろんな事を目の当たりにして、変われた。
男と同じようなことは出来ないけど、
あたしには、あたしにしか 出来ないことがある。
もう、それでいいじゃん?
あの頃のあたしと違って、今ならあたしは一人じゃないと思えるし、自分の未来も信じられる。
ならもう一つ、もう一つだけ。追加で自分の未来を信じてみようかな
みんなが帰った後の駅のホーム、加藤さ…タクさんが言った。
「藍ちゃん、今 何考えてる?」
「今日会った人たち、皆ステキだったなあって」
「藍ちゃんも、十分引けを取らないよ?」
「ありがとう、嬉しいデス」
「自信持ちなよ?」
「うん…」
加藤さんに言って貰っただけじゃ、自信なんて湧かないけど、せめて これからは、自分の中にある「オンナ」な一面を許して認めてあげようかな、そんなことを思ってたの。
男みたいに、体力無いとか
ウジウジ悩むとか
支度に時間掛かるとか
身繕いの維持とかの荷物が多いとか
お菓子に買収されやすい とか
もう、女に生まれちゃったんだもん。諦めて「オンナ」として物流業界で生きていこう。
それは、オトコに媚びるために、オンナっぽくなるんじゃないの。
自分の中の「女らしさ」を大事に信じようと思うの。
その方が、ずっとのびのび出来る。ずっと自然体で人に優しく出来る。
そして、最後には、いろんな人を受け入れられる器が出来てくると思う。
一日二日で出来るようになれるとは思わないけど…
「あたし、これから もっとステキになるから、見ててね」
ブサイクと評されたあたしだった。
でも、いつまでもブサイクのままだと思わないでね。あたしは、もう ブサイクじゃなくなる。みてろよ、過去のあたし。
これこそが、本当のブサイクの逆襲
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