風鈴
それは頂き物だった
箱を開けると幾重にも和紙にくるまっており
糸を摘んで持ち上げると夏の音がした
目を閉じたブランコのようになって不定期に揺れる
僕の家に縁側はないので
デッキの上に吊り下げてみる
幼い頃
両親は布団を敷くと
蚊が入らぬよう部屋に蚊帳を張り巡らせた
蚊帳をくぐるときには
うちわで扇ぎながら入り
蚊の侵入を防ぐのだ
僕にはその意味が分からなかったが
大人の真似をしてうちわを持った
そして湯上りにパジャマを着せられた僕は
風の調べを聞きながら眠りについた
夜と朝では音が違って聞こえた
夜風が似合う音なのだ
縁日に行くと
それは金魚すくいのそばで揺れていた
自然に足が止まる
いろんな大きさや色をした風鈴が並んでいた
なぜガラスとはあんなに繊細な鳴りをするのだろうか
涼しくなると
自分の役目を終えたような音になる
それは
春になると桜が咲き誇るように
夏に託された命
季節の音なのだ